2022/05/15
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その肩こり、本当にただの肩こりですか?

その肩こり、本当にただの肩こりですか?

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肩こりは男性・女性と共に訴えることの多い症状であり、現代社会における重大な健康問題のひとつです[1]。肩がこった時にマッサージに行く人も多いでしょう。しかし、なかなか肩こりが治らないという人もいるのではないでしょうか。


その肩こりは本当に「ただの肩こり」でしょうか?病院に行ったら実は病気だったということがあります。今回は、どのような病気が肩こりになるのか学びましょう。


そもそも肩こりってなに?

肩が痛い、だるい、重いと感じる時、人はよく「肩がこっている」といいます。では「肩こり」とはどのような状態のことでしょうか。まずは世間一般でいう「肩こり」を解説します。


肩こりの定義とは?

肩こりの定義は「後頚部から肩、および肩甲背部にかけての筋肉の緊張感を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」です。首や背中の重だるさや違和感、痛みも「肩こり」に含まれます。


なぜ人は首や肩に痛みや違和感、重だるさなどを感じるのでしょうか。


肩こりとはどのような状態?

一般的にいわれる肩こりは、本態性(一次性)肩こりといわれます。


本態性肩こりは姿勢・疲れ・寒さ・ストレス・睡眠不足・加齢などのさまざまな要因で首や背中の筋肉が硬くなった状態です。筋肉が硬くなると血液が流れにくくなり、筋肉から「痛い」と感じる刺激が出ます[2]。


本態性肩こりは筋肉が硬くなっていることが原因です。マッサージやレーザー治療・超音波治療で筋肉をほぐすと楽になります[3]。


症候性(二次性)肩こりとは?

一方、筋肉が原因ではない首・肩の痛みが出ている場合、その肩こりは症候性(二次性)肩こりといわれます。


なにが原因なのか、みていきましょう。


肩こりの原因は「肩」の病気だった!?

肩関節を動かした時や夜寝ている時に肩周囲に痛みが出る場合は、肩関節の病気が疑われます。このような場合に考えられる病気を紹介します。


肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
肩周囲に炎症を起こし、骨や筋肉・靭帯(じんたい)に異常がなくても痛みが出る病気を肩関節周囲炎といいます。五十肩という言葉を聞いたことがありますよね。五十肩も肩関節周囲炎に含まれる病気です。


肩関節周囲炎は、炎症を抑えないと痛みが続きます。病院で炎症を抑える注射を打ったり、炎症を抑える薬を飲んだりすることで痛みが軽くなります。


肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)
肩腱板断裂は、肩の筋肉や腱(筋肉と骨をつなぐもの)が切れている病気です。
筋肉が切れていたら腕が動かないのでは?と思われるでしょう。肩の周りには多くの筋肉があるので、一部の筋肉が切れても腕は上がります。「肩がなんとなくずっと痛い、重い」と来院された患者を検査してみると、実は筋肉が切れていたという事態も少なくありません。肩の痛みが長く続く場合は、肩の検査をおすすめします。


肩こりの原因は「首」の病気だった!?

肩や背中、腕の神経は首から神経が出ています。この神経が首の骨の間から出る時に障害されると、神経痛として首・肩・背中・腕に痛みやだるさ、しびれが出ることがあります[5]。首をそらしたり、後ろを向いたりすると神経の出口は狭くなります。この動きで背中や腕に痛みが強くなる人は要注意です。


首の病気としてあげられる、代表的な2つの病気を紹介します。


頚椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)
椎間板とは、背骨と背骨の間にあるクッションのような役割をもつ軟骨とそれを包んでいる膜で構成されています。椎間板のおかげで人は腰や首を曲げたり、伸ばしたりできます。


この椎間板に圧がかかり、膜を破って軟骨が外に出た状態が椎間板ヘルニアです。首の椎間板ヘルニアでは、首の神経にヘルニアがあたり、肩や背中、腕の痛みが出ます。この痛みは神経に作用する痛み止めや神経への注射で軽くなることがあります。


頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)
年をとると椎間板は傷み、小さくなります。小さくなるとクッションとしての役割が弱くなり、首の骨の間隔が狭くなるのです。骨の間が狭くなると神経の出口も狭くなり、ヘルニアがなくても神経が圧迫され、神経痛が出る場合があります。この状態が頚椎症性神経根症という病気です。


ヘルニアは時間が経つと小さくなることがあり、自然に治ることもあります。しかし、頚椎症性神経根症は骨の問題です。自然に神経の出口が大きくなることはありません。よって時間が経っても治らないことが多くあります。痛み止めで痛みを感じにくくするか、手術で神経の通り道をひろげないと、痛みが取れないことがよくあります。上を向くと肩・腕・背中に痛みを感じるという状態が長い場合は、病院で検査しましょう。


女性の肩こりは「更年期障害」が原因?

肩こりが長引く女性は、更年期障害の可能性も考慮する必要があります。更年期とは閉経前後の10年間のことで、だいたい45〜55歳がこれに相当します。更年期障害とは、女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、さまざま症状が出る病気のことです。更年期障害は顔や体がほてるという症状がよく知られていますが、首や肩がこるという症状も多くみられます[6]。


更年期の女性は整形外科で異常がないといわれた場合、婦人科を受診しホルモンに異常がないか確認してみましょう。


まとめ

今回は肩こりの中でも、病気が関係している肩こりについて解説しました。
しつこい肩こりがすべて病気という訳ではありません。病気の可能性もあるので、肩こりがなかなか治らない方は、一度病院で精密検査してみてはいかがでしょうか。


[1] 厚生労働省:2019年度国民生活基礎調査の概況(参照 2022-3-31)
 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html
[2] 名古屋春満. 薬事. 2019. 61. 2865 - 2870
[3] 米津貴久. 臨床スポーツ医学. 2017. 34. 1258 - 1262
[4] 榎本光宏. 日本臨床. 2014. 72. 1745 - 1749
[5] Tanaka Y et al. Spine. 2006. 31. 568 - 573
[6] 西林有佳. 母性衛生. 2004. 45. 301 - 310


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