2023/03/11
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【出生前診断】NIPTを小児科医が解説〜病気や障害を持つ子どもと家族に接する僕が思うこと〜

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『妊娠したのは嬉しい.

でも, もし赤ちゃんが病気や障害を持っていたらどうしよう

『妊娠中からできる検査があるのは知っているけど,

 赤ちゃんの検査をしたほうがいいのか分からなくて不安.』

これは妊娠した多くの女性がもつ不安だと思います.


ネット上には出生前診断に関する記事が多いですが,

その多くは産科のクリニックが自らのクリニックで検査を受けてもらい収益を得ることを目的としていて,

中立的なものもありますが, 妊娠中のお母さんの不安を煽るような記事も散見されるのが現状です.


そこで,この記事では

出生前コンサルト小児科医であり,

生まれつきの病気をもつ赤ちゃんやお子さんに接する=Dr.NK=

中立的な立場から

  • 出生前診断とは何か?
  • 検査の種類
  • メリット・デメリット
  • 出生前診断の課題・小児科医として思うこと

について, お伝えしたいと思います.


出生前診断とは何か?

一般に,出生前診断は妊娠中にお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんに病気がないかを調べる検査のことを言います.

胎児診断, とも言います.


本来の検査の目的は, 生まれてくる赤ちゃんの病気を調べることによって,

  • 生まれてきた赤ちゃんがなるべく早く,正しい治療を,万全な状態で行えるようにすること
  • お母さんやお父さんが,赤ちゃんの病気を理解し, 治療について医療者から説明を受けるすることで ,少しでも不安を減らせるようにすること
  • 場合によっては, お腹の中にいるうち, つまり出産前から治療を受けられるようにすることです.


実際には,出生前診断には赤ちゃん(胎児)の病気を調べるだけでなく,

  • 赤ちゃんが順調に成長しているか(エコーによる計測)
  • 赤ちゃんの健康状態が保たれているか(胎児心拍モニタリング)
  • 出産に臨む上で赤ちゃんの向きや胎盤の位置が大丈夫かの確認

も含まれます.


ただ, 多くの方が【出生前診断】と言ったときには,赤ちゃんの病気を調べる検査のことをイメージすると思いましたので, 上記のように説明させていただきました.


出生前検査で行われる検査の種類

出生前検査には様々な分類がありますが, ここでは

  • 非侵襲的な検査(非確定的検査)
  • 侵襲的な検査 (確定的検査)

に分けて説明したいと思います.


ここでいう【侵襲】とはお母さんにも, お腹の中にいる赤ちゃんにもリスクがあることを意味します.

具体的には早産になってしまったり, 流産になってしまうこともあります.


非侵襲の検査は直接赤ちゃんの細胞を調べる検査ではないため, 基本的には非侵襲検査では確定的な結論を出すことはできません.

そのため非確定的検査とも呼ばれます.

非侵襲検査で病気が疑われる場合は, 直接赤ちゃんの細胞を調べて確定的な結論を出せる, 侵襲的検査に進みます.


非侵襲的な検査(非確定的検査)

非侵襲的検査には,

・超音波検査(胎児スクリーニング)

・NIPT(新型出生前診断)

・母体血清マーカー検査

が含まれます.


・超音波検査 (胎児スクリーニング)

妊娠が分かった後, 最初の受診から最後の妊婦健診でも行われるのが超音波(エコー)検査です.


超音波検査では

心臓, 大きな血管, 肺, 脳, 顔, 消化管, 手足の構造

などがわかります.


妊娠11〜13週頃, 赤ちゃんの首の後ろにある浮腫をNT(unchallenged Translucency)といい, NTを認める場合, ダウン症などの病気を疑う場合があります.


ただあくまでそれぞれの臓器の構造の異常を見つけることはできますが, それがどのような病気によるものかはわからないことも多いです.


・NIPT(新型出生前診断)

NIPTはnon-invasive prenatal genetic test(非侵襲性出生前遺伝学的検査)の略で, 日本では2013年から始まりました.

お母さんの血液の中に混ざっている赤ちゃんの細胞, DNAを調べる検査です.

NIPTでは

・21トリソミー(ダウン症)

・18トリソミー

・13トリソミー

がわかります.


お母さんが妊娠10週以降血液検査を受けることで調べられ,費用は施設によって変わりますが, 費用は20万円前後で受けられることが大きいようです.


NIPTは非侵襲の血液検査で, 1週間程度で結果が出るにも関わらず, 精度が99%近くと非常に高いことが知られていて, 実施件数は年々増えていて,

1998~2016年に行われた調査では,

生まれてきた赤ちゃんの7.2%

高齢妊娠のお母さんから生まれた赤ちゃんの25.1%が

受けていたと報告されています.

(佐々木愛子・左合治彦ら: 日本における出生前遺伝学的検査の動向 1998-2016, 日本周産期・新生児医学会雑誌 2018;54:101-107より)


母体血清マーカー検査(クアトロ検査)

クアトロは数字の「4」を意味する言葉で,お母さんの血液中に含まれるAFP, 非抱合型E3, hCG, インヒビンAという4つの成分を調べることによって,

21トリソミー(ダウン症)

・18トリソミー

・開放型神経管欠損症

の3つの病気がわかります.


ただ,

・実施期間が15週0日〜16週頃までと短いこと

・検査で陽性の場合, 羊水検査を行う必要があること

・精度が80~90%程度

・結果が出るのに2週間程度

とNIPTよりも劣るため, 現在は母体血清マーカー検査が行われることは少なくなっています.


侵襲的な検査 (確定的検査)

侵襲的な検査はお母さんのお腹から子宮に向けて針を刺して,

羊水や絨毛(将来の胎盤)の細胞を採取する検査です.


羊水検査は妊娠15〜16週以降,

絨毛検査は妊娠11〜14週頃, に行われます.


検査を行うことで, 赤ちゃんの細胞, 染色体, 遺伝子を調べることができます.


一方で子宮に針を刺す検査なので

感染や出血,場合によっては早産や流産のリスクがあります.

(羊水検査で300人に1人, 絨毛検査で100人に1人,流産や胎児死亡のリスクあり)


直接赤ちゃんの細胞を調べる検査なので,精度は99.9%と言われています.


メリット・デメリット, 出生前診断に小児科医として思うこと

単純に考えれば, 出生前診断を行うこと, 検査を行うのメリットは

・生まれてくる赤ちゃんに病気があるか確認できる

・生まれてくる赤ちゃんに病気がないと分かること

です.


実際,多くの方は,

『検査を受けて, 病気じゃないことを確認したい.』

そんな思い出検査を受けられるのではないかと思います.


しかし, 実際には検査を受けたとしても, 受けなかったとしても,

いずれの場合にもメリットとデメリットがあるのです.


多くのネット記事はネットを見ているユーザーに出生前診断を受けてもらうために書かれています.

そのため検査を受けるメリット・検査を受けないデメリットばかりが強調されている場合があります.


そして, 実際に

・出生前検査を行った方のカウンセリング

・病気や障害を持っているお子さんの診察

・病気や障害を持っているお子さんを育てている親御さんのサポート

この全てを行う小児科医として思うことがあります.


出生前診断のメリット・デメリットをできる限り中立の立場で, お伝えしたいと思います.

非常にデリケートな内容ですので, ここからは有料記事とさせていただきたいと思います.

記事の先を見るにはご購入が必要です。


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