2022/04/29
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最新研究でわかった耳鳴の原因と自宅でできる対処法を解説!

最新研究でわかった耳鳴の原因と自宅でできる対処法を解説!

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何もしていない時に「キーン」「ボー」というような耳鳴り(耳鳴)がふと聞こえてくること、ありませんか?今回は、耳鳴の原因や対処法について紹介します。


今日も耳鳴で困っている患者さんが……

会社員の女性、ここ数日「キーン」という音の耳鳴が止まらず、脳の病気を心配されて受診されました。


仕事中などふとした時に耳鳴を感じ、気づいてしまうと気になって作業に集中できなくなります。特に聞こえの悪さは感じていません。よくお話しを聞くと、最近仕事が多忙で、上司とトラブルがあり、1か月くらい慢性的な睡眠不足が続いているようです。


脳の病気を疑うような症状はありませんでした。聴力検査をおこない、聴力は正常。耳鳴のメカニズムについてお話ししたところ、とても安心したようです。不眠症とストレスに伴う無難聴性耳鳴と診断し、心がけて気分転換することと、音楽を聞いて耳鳴をカバーすることで様子を見る方針となりました。


実は脳から発生している!耳鳴が聞こえるメカニズムとは?

耳鳴とは「周囲の音ではなく、自分のなかで発生した音」が聞こえている状態のことを指します。専門的にいうと、大脳にある音の聞き取りをしている部位の近くで生じている、正常な神経細胞の興奮と考えられています[1]。


では、病的な耳鳴とはどういうことを指すのでしょうか?耳鳴のせいで困る症状が出現した場合に、治療の対象となる耳鳴=病的耳鳴と診断されます[2]。


難聴やストレスは病的耳鳴の原因

病的耳鳴の原因には、大きく難聴によるものと難聴によらないものの2種類があります。難聴である場合、脳までしっかり音の信号が届きません。すると脳のなかで耳鳴の信号を適切にコントロールできなくなり、耳鳴を感じやすい状態に脳が変化してしまいます[1]。このような難聴に伴う耳鳴を「難聴性耳鳴」とよびます。


一方、耳鳴の信号は疲労、睡眠不足による肉体の不調や、ストレス・不安といったネガティブな感情とも関連しているようです[3]。ネガティブな感情は、体のなかの不快な症状を強調してしまうことがあり、正常な耳鳴をうるさく感じてしまうことがあるようです。このような肉体的な不調や、心の不調による耳鳴を「無難聴性耳鳴」とよびます。


耳鳴の診療はこれらを区別しながら耳鳴の原因に対処していくのが基本方針です。


耳鳴に気づいたら?まずは自宅でできる対処法を紹介

もし耳鳴に気づいたらどうすればよいでしょうか?自宅でできる簡単な対処法について紹介します。


しっかり寝て体調の回復をはかる

睡眠不足や疲労がたまることによって、耳鳴を感じることは非常によくあることです。疲れたかな?と思ったら無理をせず、しっかり睡眠をとりましょう。寝て起きて治る耳鳴なら、受診は必要ないことが多く、あまり心配する必要はありません


ストレスの原因から距離を置き、気分転換する

職場や家庭のストレスを原因として、日常生活に支障をきたすほどの耳鳴を発症する方もいらっしゃいます。性格がまじめなほど、このような耳鳴を感じることが多いです。一日中ストレスの原因に神経を集中させることで、徐々に耳鳴に囚われてしまいます。耳鳴に集中せず好きなことを考え、意識して何も考えない時間をとるようにしてみてください


音楽を聞いて耳鳴の改善を促す

耳鳴が聞こえてきて気になる時間がある場合は、音楽を聞いてみるのはいかがでしょう。ただし、大きすぎない音量で聞くことを心がけてください。音で刺激して耳鳴の改善をはかる方法は「音響療法」といって、立派な治療法のひとつです[4]。特に音楽の種類に決まりはありませんので、好みの音楽を聞いてみましょう。


聞こえがおかしい場合や耳鳴で困る場合は受診を検討

耳鳴で耳鼻科を受診したほうがよい症状とは、どのようなものがあるのでしょうか?


耳鳴によって聞こえ方がおかしいかどうか、ということは非常に大きなポイントです。特に急に耳鳴がしてきてまわりの音が聞こえなくなった、といった症状は突発性難聴による症状の可能性があります。一瞬で消えるようなものであれば特に心配いりませんが、例えば一日しっかり休んでも治らない場合は、早めに耳鼻科を受診してください。


また、聞こえに問題がなかったとしても、耳鳴のせいで日常生活に支障がでている場合にも受診をおすすめします。ネガティブな感情が耳鳴を起こし、その耳鳴がネガティブな感情を悪化させるといった悪循環に陥ってしまうことが大きな問題です。不安を落ち着けるようなお薬や、弱い睡眠導入薬などで悪循環を断ち切るように手助けを受けながら治療していきましょう。


いずれのタイプの耳鳴り患者さんも、多くの方は耳鳴がどのようなメカニズムで発生しているかを理解することで安心し、耳鳴自体も改善するようです。


誰でも感じる耳鳴、だけど困っているなら耳鼻科へ相談を

耳鳴は、ほとんどの人が一度は感じたことのある症状です。困っている人は意外にいらっしゃいます。まずは、自宅でできる対処法を試してみてください。それでもつらいと感じるようなら、どうぞ迷わず耳鼻科を受診し、一緒に解決していきましょう。


参考文献

  1. Baguley D, McFerran D, Hall D. Tinnitus. Lancet. 2013;382: 1600–1607.
  2. 耳鳴診療ガイドライン 2019年版, 日本聴覚医学会. 金原出版;
  3. Pattyn T, Van Den Eede F, Vanneste S, Cassiers L, Veltman DJ, Van De Heyning P, et al. Tinnitus and anxiety disorders: A review. Hear Res. 2016;333: 255–265.
  4. Grapp M, Hutter E, Argstatter H, Plinkert PK, Bolay HV. Music therapy as an early intervention to prevent chronification of tinnitus. Int J Clin Exp Med. 2013;6: 589–593.

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耳鼻咽喉科専門医•指導医の音良林太郎@耳鼻咽喉科です。みみ、はな、のどの病気や、首の腫瘍など、気になることはなんでもご相談下さい。専門は耳科、聴覚ですが、めまい、鼻、頭頸部腫瘍、甲状腺なども扱います。
なるべく丁寧に、かつ医学的な根拠とともに解説することをモットーとしています。どうぞお気軽にご相談ください!