指名:おとらりんたろう, MD, PhD 先生

耳瘻孔の手術について

10歳未満男性

カメラ

※添付画像は投稿者ご本人と医師のみ参照可能です

はじめまして。
1歳の息子には先天性耳瘻孔が両耳にあります。
6月に左耳の耳瘻孔が2回も腫れてしまいました。1回目は腫れる→抗生物質→針で膿をとる。
2回目は前回通った耳鼻科が夏休みだったため、別の耳鼻科に通い薬を処方してもらいました。昨日膿と血が出てきてしまいました。夏休み明けに再度受診するよう言われています。
既に2回も腫れているのですが、手術は早めの方が良いでしょうか?2院目の耳鼻科の先生は大人になってからでいいのでは?といっていました。
抗生物質を使い続けておとなになるのを待つのか、それともすぐにしたほうがいいのか、教えていただけますか?
1歳だと全身麻酔なので入院になるかと思いますが、だいたい何日くらい入院になりますか?
また、右耳の耳瘻孔は腫れていないのですが、一緒に取ってしまったほうがいいですか?
色々とすみません、教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。

指名質問いただきありがとうございます。1歳のお子様の両耳に耳瘻孔があり、左は感染を繰り返しているため手術で摘出するかどうか迷っている、ということですね。これは正直耳鼻科医だれでも迷うところだと思います。結論として、メリット・デメリットを踏まえ、主治医の先生とよく相談して決めていただきたいです。


先天性耳瘻孔は人口の数%に生じると言われている、頻度の高い先天性異常です。症状がなくそのまま経過する場合が多いですが、感染を1度でも起こした場合は手術適応となります。これは、耳瘻孔の深くに細菌が住み着いてしまった場合、感染を繰り返してしまう場合があることが理由と考えていただければよいでしょう。


先天性耳瘻孔に感染を繰り返した場合でも、手術によって完治が期待できます。1時間程度で終わる、比較的簡単な手術ですので、1時間横になってじっとしていられる年齢であれば局所麻酔ので手術は可能です。私の経験では10歳のお子さんで局所麻酔手術をしたことがありますが、平均的には小学校5,6年くらいから行える可能性があり、お子様の性格に依存する部分が大きいです。じっとしているのが難しいようであればやはり全身麻酔が必要になります。


手術しないで経過観察した場合、繰り返す頻度や重症度によって方法を柔軟に変えていくことになります。今回は短い期間で繰り返していますので、2回とはいえ感染が治り切っていなかったのであろうと思います。今後も数ヶ月に1回のように短い期間で繰り返してしまうようであれば、やはり手術を積極的に考えていく必要があるでしょう。ただ、しっかり治って何年も再発しない場合も実際はあります


手術を受けるメリットは、耳瘻孔を全摘でき、膿が出たり痛みが出るようなことから解放される、という点ですね。処置を受ける必要もなくなりますし、抗菌薬を内服する必要もなくなりますので、耐性菌がついてしまうリスクも減らすことができます。デメリットは入院・全身麻酔が必要であるという点です。大きい病院であれば1歳という低年齢であっても比較的安全に全身麻酔を行うこと自体は可能でしょう。ただ、全身麻酔によってアレルギーが出てしまうリスクや、気管支炎・肺炎のリスクなどはあるでしょう。


手術を受けずに経過観察する場合は、メリットとして全身麻酔手術を回避できます。また、この後どの程度の頻度で繰り返すかはわかっておらず、長期間安定している可能性もあります。デメリットとしては、再発で重症に出てしまうこともあるということです。耳瘻孔の前方に膿瘍を作ってしまうと、より大きい切開排膿が必要になったり、皮膚が壊死してしまうことで傷跡が大きく残ってしまうこともあります。


相談者様の息子さんの場合は、確かに手術適応はありますが、1歳という年齢を考えると全身麻酔での手術が必要になります。そのため、迷われる気持ちはよくわかります。これに関して絶対的な基準といったものは存在しませんので、メリット・デメリットをよく理解していただき、選択していただきたいと思います。また、私自身は感染の状態を直接見たわけではありませんので、直接診察を受けた医師にも同じように相談していただくのが良いでしょう。2人目の医師は「まだ様子を見られる」と判断されているようですので、それも一つの手段なのかもしれません。


一点だけ確認していただきたい事項があります。相談者様のお子様の耳瘻孔は部位が少しめずらしい「耳輪脚型」になります。耳輪脚型では、耳の後ろ側が腫れてしまう場合があり、その場合は成人でも全身麻酔が望ましいと判断される場合がありますがいかがでしょうか?


また、対側の手術についてもご質問がありましたが、全身麻酔で両側取ってしまうこと自体は可能です。ただ、感染がなければ無理に手術する必要はないかもしれません。


以上回答いたします。小さいお子様の疾患、治療方針は迷う気持ちはよくわかります。この回答が判断に少しでもお役に立てば嬉しいです。

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2023年08月15日 19時05分


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耳鼻咽喉科専門医•指導医の音良林太郎@耳鼻咽喉科です。みみ、はな、のどの病気や、首の腫瘍など、気になることはなんでもご相談下さい。専門は耳科、聴覚ですが、めまい、鼻、頭頸部腫瘍、甲状腺なども扱います。
なるべく丁寧に、かつ医学的な根拠とともに解説することをモットーとしています。どうぞお気軽にご相談ください!

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