指名:こどアレ@小児科&アレルギー 先生

熱性けいれんの頻度について

10歳未満男性

いつも参考にさせていただいてます。
熱性けいれんの既往のある1歳5ヶ月の男児の保育園での対応について相談です。
11ヶ月の頃に突発性発疹による熱性けいれんの既往があります。複雑性ということで、37.5度以上のときにはダイアップを使用することになりました。
入園の際にその旨を話して、ダイアップを預かって頂き、使用してもらえることになりました。
仕方がないことだと思いますが、37.2度を超えるとお迎えの電話をいただいてます。子どもの命ですし、保育士さん達が危機感を持って対応してくださってることには感謝の気持ちでいっぱいです。
しかし、37.2度前後でお迎えですと本当に月に何度も早退しているのが現状です。経済的にも仕事を辞められず、頭を抱えております。
熱性けいれんを起こしてから、38度以上の発熱を経験していますが(一般的な風邪からアデノウイルスなどを含む)、けいれんは起きていません。ダイアップを使用していることも大いにあると思いますが…。もちろん、インフルエンザなどけいれんを起こしやすいウイルスの場合は別だと承知しています。
ここで質問なのですが、
熱性けいれんを起こしたことのある児は、既往のない児に比べて再度起こしやすいものなのでしょうか。またその場合はダイアップを使用してても、けいれんしてしまうものなのでしょうか。
保育士さん達も心配して対応してくださっているのだと思いますし、私も心配な気持ちは山々です。何か双方が安心して37.5度前後まで保育園で様子をみることができる判断材料があれば教えていただきたいと思い質問させていただきました。

回答済み

小児科

熱性けいれんの頻度や園での対応について、ご指名でのご相談ありがとうございます。1歳のお子さん、「生後11ヶ月に突発性発疹の際に熱性けいれん、複雑型とのことで37.5℃以上になるとダイアップ座薬使用、入園の際に説明し園でダイアップを預かってもらっている、37.2℃を超えるとお迎えの連絡が来るため頻繁に早退、熱性けいれんを起こしたこともある児は再度起こしやすいのか?ダイアップ座薬で予防出来ないのか?園で37.5℃前後まで様子をみて良い判断基準はあるか?」というご質問でした。

お子さんのけいれんはいろいろご心配かと思います。日本での熱性けいれんの頻度は「7~11%」程度との報告が有り(疫学的に信頼出来る全数調査で3.4%との報告もある)、小さいお子さんによくある疾患ではあります。また、熱性けいれんの再発率は「24~40%」程度との報告があります。特に、「再発予測因子」があると、再発率が「約30%」、再発予測因子を持たないと「約15%」と考えられております。その再発予測因子とは、「①熱性けいれん家族歴(両親・同胞)」「②若年発症(生後12か月未満)」「③短時間の発熱-発作間隔(1時間以内)」「④発作時非高体温(39℃以下)」のいずれかを有する場合となります。上記の4因子以外に、 熱性けいれんの再発に関連する因子として、「頻回の発熱機会」「同一発熱機会の反復発作の既往」「焦点発作等の複雑型要素」「神経学的異常・発達遅滞」なども報告されております。頻繁に発熱すればもちろんリスクは上がりますので仕方ないかと思われます。まとめると、熱性けいれんのリスクは、過去にけいれんの無いお子さんのリスクが「4~11%」程、再発予測因子を持たないと「15%」程、「再発予測因子」があると「30%」程となろうかと思います(熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 「総論」

突発性発疹自体が複雑型の熱性けいれんを起こすことが多い感染症でもありますので、突発性発疹やインフルエンザの際の複雑型の熱性けいれんは別とみなす先生もいらっしゃいますし、やはり複雑型を起こしたお子さんの方が再発のリスクは上がりますので注意するよう話される先生もいらっしゃいます。

ダイアップ座薬によるけいれん予防の適応については、次の①または②を満たす場合とガイドラインに書かれております。「①遷延性発作(持続時間15分以上)」「②次のi~vi のうち2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上反復した場合:i.焦点性発作(部分発作)または 24 時間以内に反復する、ii.熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達遅滞、iii.熱性けいれんまたはてんかんの家族歴、iv.12か月未満、v.発熱後1時間未満での発作、vi.38℃未満での発作」

お子さんの熱性けいれんの複雑型とされた症状が「15分以上の遷延する発作」であれば、ダイアップ座薬により予防をされると良いかと思いますが、「24時間以内に繰り返す」あるいは「焦点性発作(部分発作)」であるのであれば、ガイドライン通りに、まずは「ダイアップ予防はしなくて良い、繰り返したら予防するように」とご判断される先生もいらっしゃいます(僕もその方針とするかと思います)。もちろん、ご家族のご心配や病院までの距離なども関係しますので、ご家族とよくご相談して決めることになります(熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 「各論 治療(1)発熱時のダイアップ坐剤」)。

ここまで熱性けいれんの再発のリスクについて書いてきました。お子さんの再発リスクがどうかはまたご検討頂き、「遷延するけいれん」ではなかったのであれば、再発のリスクは少し減るかと思われますので、園にも少し言いやすいかも知れません。37.2℃で早退すべきかは園の判断にはなりますが、熱性けいれんは比較的多い疾患で、お子さん以外の園児においても過去にけいれんを起こしたことが無くけいれんして発熱に気付くということもよくありますし、けいれん自体で亡くなったり手遅れになるという可能性は低いですので、過度に恐れることなく、園としてもけいれん時の対応方法をしっかり確認しておいて頂く、遷延する場合は早めに救急要請をして頂く、などをご相談頂くと良いかと思います。

主治医の先生からのアドバイスもお尋ね頂いて、園ともまたご相談ください。大変ですが、よろしくお願いいたします。

とても詳しく教えていただきありがとうございました。15分以上の遷延した痙攣でしたので、やはりリスクは高いのかなと思いました。なんとか仕事の折り合いをつけて、子どもが成長するのを待ちたいと思います。ありがとうございました。

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2023年10月12日 12時47分


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