歯磨きしていない歯にフッ素を塗った時の効果について

20代女性

タイトル通り、歯を磨いていない時にチェックアップなどのフッ素を塗ってどれほどの効果がありますか?
歯を磨けるに越したことはないのはわかっていますが、歯を磨く時間や気力がない時、歯が汚れている上からフッ素を塗ったら塗らない時よりかはマシになりますか?

回答済み

歯科

ご質問ありがとうございます。 歯磨きしていない歯にフッ化物(フッ素)を塗ったときの効果についてですね。 結論から申し上げると、 分かりません。 少なくとも、私の知識では結論が出せません。 出せませんが、 「塗ったほうがむし歯予防にはマシな可能性はある」程度に私は思っています。 以下、結論が出せない理由と、マシだと思う理由をお伝えします。 歯みがきをしていない時、 問題になってくるのはプラーク(歯垢)と呼ばれるものです。 このプラークが歯周病やむし歯の原因の一つとなります。 歯みがきをしていない状態であると、このプラークが多く残った状態です。 まず、少なくとも歯周病対策としては、フッ素をプラークの上から塗ろうが塗らまいがリスクは変わらないと思います。 次に、むし歯予防の点においては、やや複雑です。 その手の話題でよく取り上げられる論文(※1)があるのですが、この論文は「フッ素がどれくらいの濃度と時間だと、どれくらいプラークの中に浸透するか?」を調べたものになります。 この論文では ・浸透はします。でもプラークの中でのフッ化物濃度は下がります という事が示唆されています。 この論文が 「プラークの中にフッ素が”よく”浸透する」という論拠と 「プラークの中にフッ素は浸透しづらい」という論拠の 両方に使われています。 フッ素濃度が下がるけど、その下がり幅を大きいと捉えるか、 小さいと捉えるかで、捉え方が変わるのだと思います。 「コップに水が半分”も”残っている」 「コップに水が半分”しか”残っていない」 というのと似てるかもしれませんね。 実際のデータをみてみると、1,000ppmFのフッ化物溶液にプラークを2分間浸した状態だと、プラーク中の濃度はざっくり70ppmFまで落ちてます。フッ化物が効果を発揮するには300ppmFの濃度が必要とする説(※2)もあるので、70ppmFまで落ちると効果があるのか疑問ですね。 30分フッ化物溶液に浸けていたら、300ppmFを超える事もあるそうですが…30分は無理ですよね(笑) また、このような実験は”液体”を使って実験してますが、ペーストやジェルになると、粘度があるので、より長くそこに高濃度に留まりやすいだろうともプラスに考えることもできれば、浸透しにくいだろうとマイナスに考えることも出来ます。 さらに、歯垢があれば、フッ化物を長く留めておく事が出来るから、歯垢はむし歯予防にプラスに働く可能性がある説(※3)もあり、 非常に複雑です。 ただ、その一方で、保健所や区市町村保健センターなどで実施されるフッ化物歯面塗布はむし歯予防効果がありますが(※4)、プラークの有無が問題にならないのは、使用する薬剤が高濃度(9,000ppmF)であるから、多少濃度が下がっても効果があるのだと考えられます。 以上のことから、結論はわかりませんが、 プラークの厚みも口の中でバラバラでしょうから、プラークが殆どついていない場所には有効でしょうし、厚みがある部分では分からない。そういう意味で「使ったほうがマシ」と考えています。 長々と説明いたしましたが、時々時間がなかったり、気力・体力がなくて磨けなくても、そこまでむし歯のリスクは上昇しないと思いますので、 それよりも、習慣的に口の中をキレイにすることや、間食の回数・時間などの食生活習慣に気を使って頂くことが重要だと思います。 すこしでも参考にして頂ければ幸いです。 ※1:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15840782/ ※2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/tdcpublication/48/3/48_3_119/_article/-char/ja/ ※3:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21701197/ ※4:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26075879/

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2023年02月08日 12時04分


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はじめまして。
普段の診療は、むし歯治療、歯周病治療、審美修復、入れ歯、インプラント、矯正治療、ホワイトニングなどを扱っています。
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