2023/04/19
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フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

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2023年に入り、日本の口腔衛生に関わる4学会からフッ化物(フッ素)配合の歯磨き剤(歯磨き粉)の推奨される使用方法が発表されました!(1)

そこでお子さんのお家での歯磨きで使うときのポイントを、今回のアップデートした内容も混ぜながら解説したいと思います。


①歯磨き剤は、歯が生えたら使い始める

フッ化物入りの歯磨き剤は歯が生えたら使いましょう!つまり、歯磨きも歯が生えたらスタートします。歯ブラシも今色んな種類が出てますが、シリコンなどではなく、普通の歯ブラシの毛がついている、仕上げ磨き用の歯ブラシを使ってもらって大丈夫です。


②年齢ごとに推奨する濃度と量を使う



  • 2歳までは900から1000ppmのものを米粒程度の量を歯ブラシにつけて歯磨きします。


  • 3歳になったら同じ濃度のものをグリーンピースぐらいの量まで増やします。


  • 6歳以降は1400から1500ppmのものを、歯ブラシ全体(1.5から2cm)につけて歯磨きします


こちらにTwitterアカウント@ドラッケン先生(https://twitter.com/okamayeah?s=21&t=U1N9pdB4KaxzuDMq7exCFA)が作成した、900から1000ppm以上の歯磨き剤の味別の一覧表がありますのでよろしければ参考にしてみてください



これは個人的な意見ですが、特に低年齢だと味の好みが目まぐるしく変わったりしやすいのと、歯磨き剤の1回量が少ないので、歯磨き剤1本消費するのに時間がかかります。なので同じ味の歯磨き剤を大量購入してしまうと、いざこの味が嫌となった時にもったいないことになる可能性があります。できれば1本ずつ購入するのが安心かと思います。買う時に一緒に味を選ぶのも歯磨きが楽しくなるかもしれません♪


Q1.低い濃度のものを多く使ってはいけないの?

A.おすすめしません。500ppm未満のフッ化物は1000ppmのものと比較するとむし歯予防効果が低く、じゃあたくさん使えばいいのかと量を多く使ってしまうと体に取り込まれるフッ化物が多くなってしまいます。永久歯が骨の中で作られている時期に、体に取り込まれるフッ化物が多すぎると、歯のフッ素症といってその時作られている永久歯の一部が弱ってできてしまうリスクがあります。そのリスクを下げるためにも、より効果的な濃度のものを適切な量使用することで、メリット(むし歯予防効果)を最大限にしてデメリット(フッ化物の副作用)を極力抑えて使うことができます。

薬や栄養素と同じで、摂りすぎては害がでるので適切な量を使おうということです。



③ジェルタイプ、フォームタイプ、ペーストタイプ

歯磨き剤には研磨剤が入っておらず、塗った歯にとどまりやすいジェルタイプ、同じく研磨剤が入っておらず、お口に広がりやすいフォームタイプ、研磨剤が入っており発泡剤により歯の隅々まで拡散、停滞しやすいペーストタイプのものがあります。ジェルタイプはフォームタイプより唾液に流れにくく、歯磨き中にお口の中が唾や歯磨き剤でいっぱいになりにくいこと、吐き出さなくても拭き取りで余分な歯磨き剤を除去しやすいことから唾の吐き出しやうがいのできない低年齢で使いやすいタイプとなります。フォームタイプはお口に広がりやすく、吐き出しができなくても使いやすいのが特徴ですが、同じフッ化物濃度でも他の二つのタイプと比較すると唾の中に流れやすく、お口の中でフッ化物の濃度が下がってしまいやすいという報告があります。ペーストタイプはジェルタイプと比較して発泡剤によってフッ化物が歯のすみずみまで行き届きやすいこと、粘度があり歯に停滞しやすいこと、研磨剤が入っているので歯の着色を落とせる効果があります。


使い分けに関してはベースとなる根拠が菲薄のなのが現状です。一つの目安として、唾の吐き出しやうがいができるまではジェルタイプ、うがいができるようになったらペーストタイプを使ってもらえるのが良いかと思います。吐き出しができずジェルタイプの受け入れが難しい場合は、フォームタイプを使ってもらうのも良いでしょう。


ただ唾の吐き出しやうがいができても、ペーストタイプが苦手で歯磨き剤を使わない、となってしまうよりはジェルタイプを使ってもらうのがよいのでそこはお子さんの好みで使い分けてもらっても良いでしょう。


Q2ペーストタイプで歯を磨いてから最後にジェルタイプを塗るのはよいですか

A.推奨しません。それぞれを1回分の量ずつつけて併用してしまうとフッ化物の総量が増えてしまいますので、Q1でもお話ししたデメリットが出てきてしまう心配があります。半分ずつにするか、どちらかにするかにしてもらうと安心かと思います。


④歯磨き後のうがいのやりかた

理想はうがいをせずに唾だけペッと吐き出すだけの方がフッ化物がお口の中でとどまってくれるので効果的です。しかしそれが気持ち悪かったりする子もいると思います。なのでうがいしたい場合は少量の水、ペットボトルのキャップくらいの量のお水で1回うがいするようにしましょう。


⑤歯磨きの回数や歯磨き後の注意

むし歯予防に効果的なのは就寝前を含む1日2回、フッ化物入りの歯磨剤で歯磨きをして、その後は1、2時間飲食を控えることが推奨されています。飲食に関しては水分補給が必要な場合もありますのでむし歯リスクの少ないお水やお茶にしてもらうのが安心で効果的でしょう。


長くなってしまったのでまとめると


①歯が生え始めたらフッ化物入りの歯磨き剤で歯磨きしましょう!

②年齢によってフッ化物の効果的な濃度と量があるのでしっかり守って使いましょう!

③歯磨き後はうがいではなく唾を吐き出す程度にするのが理想。うがいはするとしても少量で1回だけにしましょう!

④歯磨きは就寝前を含む1日2回、歯磨きの後は1.2時間極力飲食は控えましょう!


最後にフッ化物配合の歯磨き剤を使った歯磨きもむし歯予防に重要ですが、間食時のおやつや飲み物に含まれる糖分(遊離糖)の摂取頻度を少なくすることもとても大切です!

いくら適切に歯磨きをしていてもこちらがダメになってしまうとせっかく頑張って歯磨きしていてもむし歯となってしまいます…


また、個々のお口の状態にあった適切な歯磨きはかかりつけの歯医者さんにアドバイスをもらうとより良いと考えます。


お子さんのお口の健康に少しでも助力できれば幸いです。遠くから応援しております♪


参考文献

(1)4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法

2023 年 4月 13日 一般社団法人 日本口腔衛生学会 公益社団法人 日本小児歯科学会 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 一般社団法人 日本老年歯科医学会

https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20230301.pdf


(2)American Academy of Pediatric Dentistry. Fluoride therapy. The Reference Manual of Pediatric Dentistry. Chicago, Ill.: American Academy of Pediatric Dentistry; 2021:302-5.

https://www.aapd.org/globalassets/media/policies_guidelines/bp_fluoridetherapy.pdf


(3)FDI.White Paper on Dental Caries Prevention and Management

https://www.fdiworlddental.org/sites/default/files/2020-11/2016-fdi_cpp-white_paper.pdf


(4)WHO.Fluoride toothpaste

https://cdn.who.int/media/docs/default-source/essential-medicines/2021-eml-expert-committee/applications-for-addition-of-new-medicines/a.14_fluoride-toothpaste.pdf?sfvrsn=4eb40f4c_4


(5)Ulla Moberg Sköld, Dowen Birkhed, Jian-Zhi Xu, Kai-Hua Lien, Malin Stensson, Jeng-Fen Liu,

Risk factors for and prevention of caries and dental erosion in children and adolescents with asthma,

Journal of Dental Sciences,

2022

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S199179022200054X


(6)Toumba KJ, Twetman S, Splieth C, Parnell C, van Loveren C, Lygidakis NΑ. Guidelines on the use of fluoride for caries prevention in children: an updated EAPD policy document. Eur Arch Paediatr Dent. 2019 Dec;20(6):507-516. 

https://www.eapd.eu/uploads/files/EAPD_Fluoride_Guidelines_2019.pdf


(7)WHO.Fluorides and oral health.

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/39746/WHO_TRS_846.pdf?sequence=1&isAllowed=y


(8)Christian H Splieth et al. How to Intervene in the Caries Process in Children: A Joint ORCA and EFCD Expert Delphi Consensus Statement.Caries Res.2020

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32610317/


(9)Yoichi Ishizuka.Effect of Different Toothbrushing Routines on Interproximal Fluoride Concentration.Caries Res.2020

https://t.co/0TLdFWriu0


(10)フッ化物配合歯磨剤.e-ヘルスネット.厚生労働省

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-007.html



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