指名:高橋怜奈/産婦人科医YouTuber 先生

チョコレート嚢胞は消失する事があるのか

30代女性

たまにチョコレート嚢胞が自然に消えた、減った、という話を耳にします。
薬や手術なしでチョコレート嚢胞が消失する事はありえるのでしょうか?
卵巣から血液の逃げ場がないので消えないのでは?と思うのですが、妊娠中に消えて手術しなくて良くなれば最高だなぁとも思ってしまいます。

回答済み

産婦人科

ご質問ありがとうございます。

チョコレート嚢胞が自然に消えることはあるのか、というご相談ですね。


チョコレート嚢胞は卵巣に子宮内膜症ができた状態です。子宮内膜もしくはそれに類似した組織が卵巣にでき、そこで生理のたびに出血を繰り返すので、血液成分が卵巣にたまり、古くなってチョコレート色になります。

卵巣チョコレート嚢胞も、卵巣以外にできた子宮内膜症も、月経を繰り返すごとに悪化していきます。


そのため、ピルや黄体ホルモン製剤などで、経血量、経血回数を減らす、もしくは完全に月経を止める事が治療になります。

同じように、妊娠している間は月経が止まっていますので、一時的にチョコレート嚢胞は小さくなる事が多いです。しかし、産後に月経が再開するとまた大きくなります。


それ以外に薬や手術を使わずに小さくなるのは閉経した後です。ただし、閉経後も内膜症が残っている場合には癌化する事もあるため注意が必要です。(閉経前でも癌化することはあります)


他にはチョコレート嚢胞はたまに破裂する事があります。その時は痛みや発熱を伴う事が多いですが、普段月経困難症がある人だと、破裂した痛みがあっても受診しないでそのままになっている事があります。破裂するとチョコレート嚢胞の内容液が腹腔内に漏れるので、破裂後のエコーでは、チョコレート嚢胞が小さくなっているように見えます。ただし腹腔内は内容液が漏れた事で癒着や内膜症の腹膜病変は悪化してしまっています。



妊娠でも閉経でも破裂でもなく、月経もある状態なのに内膜症がよくなったり小さくなることは通常ありません。

もしあったとしたら、そもそも内膜症の診断が間違っていた事が考えられます。

卵巣チョコレート嚢胞は血液成分が溜まっている状態なので、同じく血液成分が溜まるような病態と間違われる事が時にあります。

例えば出血性黄体嚢胞などの生理的な状態で自然によくなるものでも、チョコレート嚢胞と間違われる事があります。卵巣は一度見ただけだと生理的な変化なのか、内膜症なのか分からない時があります。そのため診断は慎重に行うべきです。


もし内膜症と診断されたら、月経がある間は悪化すると考え、妊娠もしくは閉経などで月経がとまっている時以外は、ホルモン治療をしていた方がよいでしょう。


以上ご参考になれば幸いです。

また何かご不安な事がありましたらいつでもご相談くださいね。

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2023年05月17日 09時24分


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