めまいを感じたことはありますか?
めまいは比較的よくある症状で、労働世代の5人に1人は1ヶ月以内にめまいを感じたことがあるそうです[1]。
「めまいは耳に原因がある」という表現をよく耳にしたことがあるかもしれませんが、これはどういうことでしょうか。
この記事ではめまいがどうして起こるのか、病院に行ったほうがよいのか、といった疑問にお答えします。また、めまいのタイプによってどのような病気が考えられるかについても解説します。
特にどの科を受診したらよいか迷うことも多いですよね。この記事を通じて適切に病院を受診できるようになりましょう。
どのようなめまいかを伝えることが正確な診断の第一歩
めまいとは医学的にはどのような状態を指すのでしょうか?実は医学的にも明確には定義されておらず、ふわふわ、くらくらするような症状を広く指す、あいまいな言葉なのです。
人によって感じ方が違うことがめまいという症状の特徴になります。すぐ治る軽いものもありますが、なかには生命に関わる危険な病気と診断がつくこともあり、油断は禁物です。
特に以下の症状にひとつでも当てはまる場合は、病院を受診しましょう
- 安静にしていてもよくならない
- がんばっても立ち上がれない
- 体のどこかに力が入りにくかったり、感覚がおかしかったりする
- 意識がなくなるような感じがする
病院を受診した場合、めまい症状の原因となる病気を診断します。診断結果にあわせて方針を考えていくのです。どんな状況でどのようなめまいを感じたか、自分の言葉で医師に伝えることが診断にとって非常に重要ですね。
めまい症状を原因別に徹底解説!
めまい症状の原因は、耳、脳、血圧や脈拍、その他の原因に区別できます。それぞれの特徴的な症状と代表的な病気についてみていきましょう。グルグル回転するようなめまいは耳に原因があることが多い
耳の奥にある三半規管を原因とするようなバランスの障害によって、回転するようなめまいを生じることがあります。「めまいは耳から」と表現するのはこのためです。
三半規管は、内部にリンパ液が充満しています。三半規管とは、リンパの流れを感じとることで「頭の位置情報」を感じとる器官です。
よって、三半規管がダメージをうけると、正常な「頭の位置情報」を受け取れなくなってしまいます。そのため、頭がグルグルと回転しているようなめまいを感じるのです。感覚的には車酔いのひどい状態に近くなるため、吐き気を感じることがあります[2]。
耳からくるめまいの特徴は、めまいと吐き気以外の症状はほぼ起こらないという点です。また、努力すれば立ち上がった状態を保てるというのも重要な所見となります。
代表的な病気として、良性発作性頭位めまい症やメニエール病、前庭神経炎があります。いずれのめまいも発作が起こっているときでないと診断がつきませんので、早めに受診しましょう。
脳からくるめまいは、より重い症状となる
めまい症状の一部は、脳が原因です。めまいのタイプとしては、グラグラ揺れるような感じや、くるくる回転する感覚がでることもあります。
脳を原因としたバランスの障害が起こります。よって、耳からのめまいと同じように吐き気がでることも多いです。一方で、耳からくるめまいと違い、頭だけでなく「体の位置情報」も受け取ることができなくなります。そのため、どれだけ努力しても立った状態を保てなくなるのが特徴のひとつです。
また、脳梗塞でダメージをうけた部位により、めまい以外の症状が出現することがあります。具体的には、顔の感覚が半分おかしかったり、ものが飲み込めなくなったりするでしょう。また、声がかすれるといった症状もあります[2,3]。
脳の病気は、脳神経内科や脳神経外科の専門領域です。脳からくるめまいの代表的な病気として、脳梗塞や脳出血があります。特に脳梗塞のうち、延髄(えんずい)とよばれる部位で起こるワレンベルグ症候群は、30-40代の若くて持病のない方に起こることもあるため、注意が必要です[3]。
血圧や脈拍からのめまいでは意識を失うことがある
血圧が下がった場合や、心臓がうまく血液を運べないことにより、めまいを感じることがあります[4]。軽ければストレスや睡眠不足からくる立ちくらみのような感覚から、重くなるとスーッと意識が遠くなっていくような症状になることが多いです。急に意識を失ってしまう病気を放置すると、交通事故や大ケガのもとになりますので、非常に危険です。
意識が遠くなるタイプのめまいがある場合は、内科もしくは循環器科を受診しましょう。ストレスや睡眠不足状態では、自律神経失調を起こします。自律神経失調では、脈拍や血圧を適切にコントロールできなくなります。
そのため、動悸を感じたり脳への血流が不足したりすると、めまいを感じるのです。また、不整脈によって心臓が血液を脳に運べなくなると、失神を起こします。
低血糖、貧血や熱中症でめまいを感じることも
糖尿病の方が体調をくずした場合に起こる血糖値の異常や、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンが不足した状態である貧血によってもめまいが起こります。
めまいのタイプとしてはグラグラ、フラフラ、人によっては回るようなめまいと感じることもあるようです[5]。
このタイプのめまいの専門科は内科になります。貧血の原因として月経過多や胃潰瘍など、体のなかで出血が隠れていることもあるので、しっかりと診断することが重要です。暑い時期は熱中症でもめまいを感じることがありますので注意しましょう。
危険なめまいを見逃さないため、早めの受診を
めまい症状は他人と共有できないため、どの科を受診したらよいか迷うこともあるかもしれません。まずは内科でも耳鼻咽喉科でもよいので受診し、どこを受診したらよいか指示をあおぐのもよいでしょう。
めまいの確実な診断をつけるためには、その症状を自分の言葉で医師に伝えることが診断に重要です。生命に影響をあたえるような病気が原因となっていることもあるため、早めの受診を心がけてください。
参考文献
- Yardley L, Owen N, Nazareth I, Luxon L. Prevalence and presentation of dizziness in a general practice community sample of working age people. Br J Gen Pract. 1998;48: 1131–1135.
- Hotson JR, Baloh RW. Acute vestibular syndrome. N Engl J Med. 1998;339: 680–685.
- Lui F, Tadi P, Anilkumar AC. Wallenberg Syndrome. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022.
- Saccomano SJ. Dizziness, vertigo, and presyncope: what’s the difference? Nurse Pract. 2012;37: 46–52.
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Bhadra P, Deb A. A Review on Nutritional Anemia. 2020;10. Available: http://dx.doi.org/