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小児科での保護者の離席について

小児科での保護者の離席について

「親が退室していれば、ルート確保※は何回刺したってバレない」※点滴などのために血管に針を刺すこと先日、Twitterでこのような発言が話題となり、多くの小児科医から疑問の声が上がりました。ツイキュアでは小児科におけるこうした処置の際の保護者の離席についてどっと先生に取材・インタビューを行いました。---まずはじめに先生の自己紹介からお願います。僕は現在、一般市中病院に勤務しており、基本的に新生児含めて小児科全般の診療にあたっています。専門はアレルギー・発達関連で10年目の小児科専門医です。直近は増えてきていますが、ここ2,3年は感染症が少なく、入院が必要になるケースは大きく減っており外来業務が主でした。離席するケースについて---ありがとうございます。まさに先生は今回のようなケースを日々臨床の場で診ているかと思いますが、小児科におけるルート確保などの処置時に保護者が離席するケースについてお聞かせください。現在の小児科の処置では、保護者の方に同席頂くことも増えており、別室で行うことは減りつつあります。海外でもそうした形がスタンダードになりつつ、それらに関連する研究もあります(注1,2)。個人的には思ったより退室をお願いしている先生が多いのだなとは思いましたが、この辺りは世代や地域差の違いもあるかもしれません。ただやはりご家族とお子さん本人の様子次第で例えば、不安がすごく強そうなご家族であったり、注射が苦手なパターンであったり、または甘えからお子さんがお母さんを叩いてしまったり、保護者側の安全を保てなそうな場合などは離席をお願いしているケースもあります。---Twitterでは保護者が近くで見ていると「親が助けてくれない」というトラウマとなるというお話がありました。僕も初期研修の一番最初の頃から数年はそのような形で教わりました。確かに例えばお父さんがぼーっと立っているだけの様子を見てしまったら悲しいのかなと思います。ただ実際小さいお子さんがどう感じてるか読み切れない部分があるのも事実です。そこで私の場合は同席する親御さんにはお子さんの好きなキャラクターを見せたり、動画であったり、声かけであったり、そういった形で一緒に参加してもらうことでトラウマになることは防げるのではないかなと考えております。---保護者の退室中はどのような流れで処置が進むのでしょうか。保護者の退室中でも、処置の流れは基本的に変わりません。スタッフがしっかりと患者を固定することで、事故のリスクはより低減されます。また親御さんがいない時でも動画を流してあげる等、そういった少しでも気を紛らわせられるようなディストラクション(遊びなどを通じて五感を刺激し、処置中に子どもの気を紛らわせる方法)を行うようにしています。例えば私の場合、別室でも1歳前後の子にアンパンマンを流したりしていますが、これは結構、うまくいくことが多いです。泣き時間が短くなったり、採血自体気づかずに終われることも稀にあります。いずれの場合にしても処置後はなるべくすぐに頑張ったねとしっかり声をかけ認めてあげる、褒めてあげる、そういったコミュニケーションを大切にしています。---医師側の視点では今回の件をどのように見ているのでしょうか。小児科においてルートの確保を何度か失敗してしまうことは、どうしても避けられないケースがあると思います。これはお子さんが小さければ尚更です。しかしやはり一般的な方が不快感や不安を感じるような話を、医師が公開アカウントでするのは望ましい態度ではありません。特に最近は研修医の先生のものが目立っておりますが、難しい問題であると感じております。過度に不安を感じないように---今回の件でTwitterには不安を覚えてしまった方が少なからず見受けられました。そうした方へメッセージをお願いします。赤ちゃんの点滴を取るのはそれだけでも少し難しい処置なので、失敗してしまうことや時間がかかってしまうことはどうしてもあり得ることですし、ご不安があるところだとは思います。ただ「何度も刺さなければならなかった」「子どもがどれほどのストレスを感じてしまったか」といったことは、私たち小児科医にとって大いに悔いることです。基本的にそういったことは親御さんにもお伝えしますし、誠実に対応していることがほとんどなので、過度に不安を感じる必要はないかなと思います。どうか安心して頂ければと思います。参考文献(1)Merve Azak, Gözde Aksucu, Seda Çağlar,The Effect of Parental Presence on Pain Levels of Children During Invasive Procedures: A Systematic Review,Pain Management Nursing,2022https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1524904222001011(2)Laura Palomares, Iván Hernández, Carmen Isabel Gómez, Manuel Sánchez-Solís,Parental presence during invasive pediatric procedures: what does itdepend on?,2023https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9991004/どっと小児科 先生地方の総合病院勤務、平成生まれの小児科専門医。専門はアレルギー・発達関連。アレルギー過疎地域で地道に活動を続ける。自身も子育て中。
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フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

2023年に入り、日本の口腔衛生に関わる4学会からフッ化物(フッ素)配合の歯磨き剤(歯磨き粉)の推奨される使用方法が発表されました!(1)そこでお子さんのお家での歯磨きで使うときのポイントを、今回のアップデートした内容も混ぜながら解説したいと思います。①歯磨き剤は、歯が生えたら使い始めるフッ化物入りの歯磨き剤は歯が生えたら使いましょう!つまり、歯磨きも歯が生えたらスタートします。歯ブラシも今色んな種類が出てますが、シリコンなどではなく、普通の歯ブラシの毛がついている、仕上げ磨き用の歯ブラシを使ってもらって大丈夫です。②年齢ごとに推奨する濃度と量を使う2歳までは900から1000ppmのものを米粒程度の量を歯ブラシにつけて歯磨きします。3歳になったら同じ濃度のものをグリーンピースぐらいの量まで増やします。6歳以降は1400から1500ppmのものを、歯ブラシ全体(1.5から2cm)につけて歯磨きしますこちらにTwitterアカウント@ドラッケン先生(https://twitter.com/okamayeah?s=21&t=U1N9pdB4KaxzuDMq7exCFA)が作成した、900から1000ppm以上の歯磨き剤の味別の一覧表がありますのでよろしければ参考にしてみてくださいこれは個人的な意見ですが、特に低年齢だと味の好みが目まぐるしく変わったりしやすいのと、歯磨き剤の1回量が少ないので、歯磨き剤1本消費するのに時間がかかります。なので同じ味の歯磨き剤を大量購入してしまうと、いざこの味が嫌となった時にもったいないことになる可能性があります。できれば1本ずつ購入するのが安心かと思います。買う時に一緒に味を選ぶのも歯磨きが楽しくなるかもしれません♪Q1.低い濃度のものを多く使ってはいけないの?A.おすすめしません。500ppm未満のフッ化物は1000ppmのものと比較するとむし歯予防効果が低く、じゃあたくさん使えばいいのかと量を多く使ってしまうと体に取り込まれるフッ化物が多くなってしまいます。永久歯が骨の中で作られている時期に、体に取り込まれるフッ化物が多すぎると、歯のフッ素症といってその時作られている永久歯の一部が弱ってできてしまうリスクがあります。そのリスクを下げるためにも、より効果的な濃度のものを適切な量使用することで、メリット(むし歯予防効果)を最大限にしてデメリット(フッ化物の副作用)を極力抑えて使うことができます。薬や栄養素と同じで、摂りすぎては害がでるので適切な量を使おうということです。③ジェルタイプ、フォームタイプ、ペーストタイプ歯磨き剤には研磨剤が入っておらず、塗った歯にとどまりやすいジェルタイプ、同じく研磨剤が入っておらず、お口に広がりやすいフォームタイプ、研磨剤が入っており発泡剤により歯の隅々まで拡散、停滞しやすいペーストタイプのものがあります。ジェルタイプはフォームタイプより唾液に流れにくく、歯磨き中にお口の中が唾や歯磨き剤でいっぱいになりにくいこと、吐き出さなくても拭き取りで余分な歯磨き剤を除去しやすいことから唾の吐き出しやうがいのできない低年齢で使いやすいタイプとなります。フォームタイプはお口に広がりやすく、吐き出しができなくても使いやすいのが特徴ですが、同じフッ化物濃度でも他の二つのタイプと比較すると唾の中に流れやすく、お口の中でフッ化物の濃度が下がってしまいやすいという報告があります。ペーストタイプはジェルタイプと比較して発泡剤によってフッ化物が歯のすみずみまで行き届きやすいこと、粘度があり歯に停滞しやすいこと、研磨剤が入っているので歯の着色を落とせる効果があります。使い分けに関してはベースとなる根拠が菲薄のなのが現状です。一つの目安として、唾の吐き出しやうがいができるまではジェルタイプ、うがいができるようになったらペーストタイプを使ってもらえるのが良いかと思います。吐き出しができずジェルタイプの受け入れが難しい場合は、フォームタイプを使ってもらうのも良いでしょう。ただ唾の吐き出しやうがいができても、ペーストタイプが苦手で歯磨き剤を使わない、となってしまうよりはジェルタイプを使ってもらうのがよいのでそこはお子さんの好みで使い分けてもらっても良いでしょう。Q2ペーストタイプで歯を磨いてから最後にジェルタイプを塗るのはよいですか?A.推奨しません。それぞれを1回分の量ずつつけて併用してしまうとフッ化物の総量が増えてしまいますので、Q1でもお話ししたデメリットが出てきてしまう心配があります。半分ずつにするか、どちらかにするかにしてもらうと安心かと思います。④歯磨き後のうがいのやりかた理想はうがいをせずに唾だけペッと吐き出すだけの方がフッ化物がお口の中でとどまってくれるので効果的です。しかしそれが気持ち悪かったりする子もいると思います。なのでうがいしたい場合は少量の水、ペットボトルのキャップくらいの量のお水で1回うがいするようにしましょう。⑤歯磨きの回数や歯磨き後の注意むし歯予防に効果的なのは就寝前を含む1日2回、フッ化物入りの歯磨剤で歯磨きをして、その後は1、2時間飲食を控えることが推奨されています。飲食に関しては水分補給が必要な場合もありますのでむし歯リスクの少ないお水やお茶にしてもらうのが安心で効果的でしょう。長くなってしまったのでまとめると①歯が生え始めたらフッ化物入りの歯磨き剤で歯磨きしましょう!②年齢によってフッ化物の効果的な濃度と量があるのでしっかり守って使いましょう!③歯磨き後はうがいではなく唾を吐き出す程度にするのが理想。うがいはするとしても少量で1回だけにしましょう!④歯磨きは就寝前を含む1日2回、歯磨きの後は1.2時間極力飲食は控えましょう!最後にフッ化物配合の歯磨き剤を使った歯磨きもむし歯予防に重要ですが、間食時のおやつや飲み物に含まれる糖分(遊離糖)の摂取頻度を少なくすることもとても大切です!いくら適切に歯磨きをしていてもこちらがダメになってしまうとせっかく頑張って歯磨きしていてもむし歯となってしまいます…また、個々のお口の状態にあった適切な歯磨きはかかりつけの歯医者さんにアドバイスをもらうとより良いと考えます。お子さんのお口の健康に少しでも助力できれば幸いです。遠くから応援しております♪参考文献(1)4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法2023 年 4月 13日 一般社団法人 日本口腔衛生学会 公益社団法人 日本小児歯科学会 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 一般社団法人 日本老年歯科医学会https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20230301.pdf(2)American Academy of Pediatric Dentistry. Fluoride therapy. The Reference Manual of Pediatric Dentistry. Chicago, Ill.: American Academy of Pediatric Dentistry; 2021:302-5.https://www.aapd.org/globalassets/media/policies_guidelines/bp_fluoridetherapy.pdf(3)FDI.White Paper on Dental Caries Prevention and Managementhttps://www.fdiworlddental.org/sites/default/files/2020-11/2016-fdi_cpp-white_paper.pdf(4)WHO.Fluoride toothpastehttps://cdn.who.int/media/docs/default-source/essential-medicines/2021-eml-expert-committee/applications-for-addition-of-new-medicines/a.14_fluoride-toothpaste.pdf?sfvrsn=4eb40f4c_4(5)Ulla Moberg Sköld, Dowen Birkhed, Jian-Zhi Xu, Kai-Hua Lien, Malin Stensson, Jeng-Fen Liu,Risk factors for and prevention of caries and dental erosion in children and adolescents with asthma,Journal of Dental Sciences,2022https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S199179022200054X(6)Toumba KJ, Twetman S, Splieth C, Parnell C, van Loveren C, Lygidakis NΑ. Guidelines on the use of fluoride for caries prevention in children: an updated EAPD policy document. Eur Arch Paediatr Dent. 2019 Dec;20(6):507-516. https://www.eapd.eu/uploads/files/EAPD_Fluoride_Guidelines_2019.pdf(7)WHO.Fluorides and oral health.https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/39746/WHO_TRS_846.pdf?sequence=1&isAllowed=y(8)Christian H Splieth et al. How to Intervene in the Caries Process in Children: A Joint ORCA and EFCD Expert Delphi Consensus Statement.Caries Res.2020https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32610317/(9)Yoichi Ishizuka.Effect of Different Toothbrushing Routines on Interproximal Fluoride Concentration.Caries Res.2020https://t.co/0TLdFWriu0(10)フッ化物配合歯磨剤.e-ヘルスネット.厚生労働省https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-007.html
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小児科 救急受診のタイミング〜発熱編〜

こんにちは!こども病院に勤務する小児科医れいと申します。日々のママパパ業、ジジババ業、ご苦労さまです!本日は表題の件、小児科 救急受診のタイミング、特に発熱の際に、どのタイミングで救急受診すべきかをわかりやすくご説明できればと思っています。まずは何にせよ結論から!【受診すべきタイミングはこれだ!】 ①ぐったり、顔色が悪い ②普段の半分以下(水分摂取、尿量) ③いつもと違う(呼吸の仕方、異常行動) ④けいれん ⑤繰り返す嘔吐基本的にはこの5つを考えてもらえれば良いかと思います。それでは各項目について、もう少し詳しく書いてみましょう。①ぐったり、顔色が悪い言わずもがな、かもしれませんが、やはりぐったりしてきたり、顔色が悪くなってきたときはなにか治療をしてあげないと良くならないことも多いです。親御様のご心配も強いと思いますので救急受診をオススメします。②普段の半分以下(水分摂取、尿量)熱が出てくると、ご飯がなかなか食べられなくなってしまう子も多いです。ただし!ご飯が食べられずとも、糖入りの水分がしっかり取れていれば、緊急受診は不要です。ご飯が食べられず脱水で入院になる子も中にはいますが、我々医療者にも、ご飯を食べさせる方法は基本的にありません。「じゃあ入院中って何するの?」点滴で水分と糖分を補充します。つまり口からOS-1が飲めていれば、入院は不要です。OS-1に限らず、糖分が入っている水分なら何でもOK!薄めたりんごジュースや、薄めたスポーツ飲料、はたまたベビー用イオン水、みたいなものでも良いかもしれません。病気のときは、水や麦茶は禁止!せっかく水分を取るなら、糖分も一緒に補いましょう。ただし飲めていると思っても、実は大した量が飲めていなかった!なんてケースもちらほら。そんなとき、脱水の良い指標になるのが、おしっこの量。普段の半分くらいになっていたら、これは恐らく脱水状態です。点滴が必要な可能性が高いので、一応入院の準備もして、すぐに受診しましょう。③いつもと違う(呼吸の仕方、異常行動)ぜいぜい、ひゅーひゅー。オットセイの鳴き声みたいな咳。呼吸のたびに首の付根がペコペコ。肩で息をしてる。苦しそう。こんな所見があれば、治療が必要なことが多いです。救急受診するのが良いでしょう。病状が進むと、改善に時間がかかります。また呼吸状態は、夜が深まるにつれて悪くなることが多いです。悩んだら、早めに受診、が良さそうです。異常行動については、その後はっきりとした意識状態に戻れば、特に心配しなくて良いケースがほとんどですが意識状態の評価というのは難しいものです。一度受診して、医師に評価させるのが無難でしょう。一昔前に、抗インフルエンザ薬の副作用で異常行動!と話題になりましたが、この異常行動は、インフルエンザの症状であることがわかっていて、特定の薬の副作用ではありません。インフルエンザ以外でも、高熱があるときには時に、異常行動が起きることがあります。ですので高熱の子は、一人では寝かさないのが良いでしょう。家族の誰かが同じ部屋で寝てあげると安心です。④けいれん熱性けいれん、という言葉は、みなさん、1回くらいは耳にしたことがあるかもしれません。親戚や身近な人がなった、あるいはご自身がなったことがある、という方もまぁまぁいらっしゃると思います。熱性けいれんの有病率、すなわち熱性けいれんを起こしたことのある人の割合は、日本では約10%と言われています。10人にひとりがなるくらいの病気ですから、もし子どもが痙攣したとしても、あまり心配しすぎずに、冷静にさっさと救急車を呼びましょう。医師によっては、「すぐ止まれば救急車は呼ばなくても良いよ?」と言うかもしれませんが、どのくらいの時間、けいれんが続くかは、止まるまで誰にもわかりません。最新2023年の診療ガイドラインでは「5分以上持続する痙攣は治療対象」と明記されました。また、一見止まっているように見えても実はけいれんが続いていた、という症例もしばしばあります。痙攣は救急車!これで行きましょう。⑤繰り返す嘔吐嘔吐を繰り返すことで脱水を起こすから、というのも受診をした方が良い理由の一つですがそれ以外に、嘔吐が重篤な病気の症状である可能性もあります。数回の嘔吐で収まってくれば受診は要らないかもしれませんが10回以上嘔吐している、嘔吐の間隔がどんどん短くなる、ぐったりしてきた、などの症状を伴う場合は、さっさと点滴が良さそうです。早めに受診しておきましょう。ちなみに嘔吐中の水分摂取については別途記事を書く予定ですが糖分入り水分を、できるだけ飲ませるのが大事です。なんとか少しずつでも水分を取らせましょう。まとめということで、長々と書いてきましたが、上に挙げた5つのシチュエーションに加えて、あと2つ、大事な受診のタイミングをお伝えします。それは「親御さんが感じる "なんか変だ" があったとき」「親御さんの心配が大きいとき」親御さんが一番、我が子の状態をよく分かっています。その親御さんが上記のように思うならそれは受診すべきタイミングなのです。大人に比べて余力のない子どもたちにとって、早すぎる受診、というのはないと考えて良いと思います。躊躇せずに、早めの受診を心がけましょう。
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【出生前診断】NIPTを小児科医が解説〜病気や障害を持つ子どもと家族に接する僕が思うこと〜

『妊娠したのは嬉しい. でも, もし赤ちゃんが病気や障害を持っていたらどうしよう』『妊娠中からできる検査があるのは知っているけど, 赤ちゃんの検査をしたほうがいいのか分からなくて不安.』これは妊娠した多くの女性がもつ不安だと思います.ネット上には出生前診断に関する記事が多いですが,その多くは産科のクリニックが自らのクリニックで検査を受けてもらい収益を得ることを目的としていて,中立的なものもありますが, 妊娠中のお母さんの不安を煽るような記事も散見されるのが現状です.そこで,この記事では出生前コンサルト小児科医であり,生まれつきの病気をもつ赤ちゃんやお子さんに接する=Dr.NK=が中立的な立場から出生前診断とは何か?検査の種類メリット・デメリット出生前診断の課題・小児科医として思うことについて, お伝えしたいと思います.出生前診断とは何か?一般に,出生前診断は妊娠中にお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんに病気がないかを調べる検査のことを言います.胎児診断, とも言います.本来の検査の目的は, 生まれてくる赤ちゃんの病気を調べることによって,生まれてきた赤ちゃんがなるべく早く,正しい治療を,万全な状態で行えるようにすることお母さんやお父さんが,赤ちゃんの病気を理解し, 治療について医療者から説明を受けるすることで ,少しでも不安を減らせるようにすること場合によっては, お腹の中にいるうち, つまり出産前から治療を受けられるようにすることです.実際には,出生前診断には赤ちゃん(胎児)の病気を調べるだけでなく,赤ちゃんが順調に成長しているか(エコーによる計測)赤ちゃんの健康状態が保たれているか(胎児心拍モニタリング)出産に臨む上で赤ちゃんの向きや胎盤の位置が大丈夫かの確認も含まれます.ただ, 多くの方が【出生前診断】と言ったときには,赤ちゃんの病気を調べる検査のことをイメージすると思いましたので, 上記のように説明させていただきました.出生前検査で行われる検査の種類出生前検査には様々な分類がありますが, ここでは非侵襲的な検査(非確定的検査)侵襲的な検査 (確定的検査)に分けて説明したいと思います.ここでいう【侵襲】とはお母さんにも, お腹の中にいる赤ちゃんにもリスクがあることを意味します.具体的には早産になってしまったり, 流産になってしまうこともあります.非侵襲の検査は直接赤ちゃんの細胞を調べる検査ではないため, 基本的には非侵襲検査では確定的な結論を出すことはできません.そのため非確定的検査とも呼ばれます.非侵襲検査で病気が疑われる場合は, 直接赤ちゃんの細胞を調べて確定的な結論を出せる, 侵襲的検査に進みます.非侵襲的な検査(非確定的検査)非侵襲的検査には,・超音波検査(胎児スクリーニング)・NIPT(新型出生前診断)・母体血清マーカー検査が含まれます.・超音波検査 (胎児スクリーニング)妊娠が分かった後, 最初の受診から最後の妊婦健診でも行われるのが超音波(エコー)検査です.超音波検査では心臓, 大きな血管, 肺, 脳, 顔, 消化管, 手足の構造などがわかります.妊娠11〜13週頃, 赤ちゃんの首の後ろにある浮腫をNT(unchallenged Translucency)といい, NTを認める場合, ダウン症などの病気を疑う場合があります.ただあくまでそれぞれの臓器の構造の異常を見つけることはできますが, それがどのような病気によるものかはわからないことも多いです.・NIPT(新型出生前診断)NIPTはnon-invasive prenatal genetic test(非侵襲性出生前遺伝学的検査)の略で, 日本では2013年から始まりました.お母さんの血液の中に混ざっている赤ちゃんの細胞, DNAを調べる検査です. NIPTでは・21トリソミー(ダウン症)・18トリソミー・13トリソミーがわかります.お母さんが妊娠10週以降に血液検査を受けることで調べられ,費用は施設によって変わりますが, 費用は20万円前後で受けられることが大きいようです.NIPTは非侵襲の血液検査で, 1週間程度で結果が出るにも関わらず, 精度が99%近くと非常に高いことが知られていて, 実施件数は年々増えていて,1998~2016年に行われた調査では,生まれてきた赤ちゃんの7.2%高齢妊娠のお母さんから生まれた赤ちゃんの25.1%が受けていたと報告されています.(佐々木愛子・左合治彦ら: 日本における出生前遺伝学的検査の動向 1998-2016, 日本周産期・新生児医学会雑誌 2018;54:101-107より)母体血清マーカー検査(クアトロ検査)クアトロは数字の「4」を意味する言葉で,お母さんの血液中に含まれるAFP, 非抱合型E3, hCG, インヒビンAという4つの成分を調べることによって,・21トリソミー(ダウン症)・18トリソミー・開放型神経管欠損症の3つの病気がわかります.ただ,・実施期間が15週0日〜16週頃までと短いこと・検査で陽性の場合, 羊水検査を行う必要があること・精度が80~90%程度・結果が出るのに2週間程度とNIPTよりも劣るため, 現在は母体血清マーカー検査が行われることは少なくなっています.侵襲的な検査 (確定的検査)侵襲的な検査はお母さんのお腹から子宮に向けて針を刺して,羊水や絨毛(将来の胎盤)の細胞を採取する検査です.羊水検査は妊娠15〜16週以降,絨毛検査は妊娠11〜14週頃, に行われます.検査を行うことで, 赤ちゃんの細胞, 染色体, 遺伝子を調べることができます.一方で子宮に針を刺す検査なので感染や出血,場合によっては早産や流産のリスクがあります.(羊水検査で300人に1人, 絨毛検査で100人に1人,流産や胎児死亡のリスクあり)直接赤ちゃんの細胞を調べる検査なので,精度は99.9%と言われています.メリット・デメリット, 出生前診断に小児科医として思うこと単純に考えれば, 出生前診断を行うこと, 検査を行うのメリットは・生まれてくる赤ちゃんに病気があるか確認できる・生まれてくる赤ちゃんに病気がないと分かることです.実際,多くの方は,『検査を受けて, 病気じゃないことを確認したい.』そんな思い出検査を受けられるのではないかと思います.しかし, 実際には検査を受けたとしても, 受けなかったとしても,いずれの場合にもメリットとデメリットがあるのです.多くのネット記事はネットを見ているユーザーに出生前診断を受けてもらうために書かれています.そのため検査を受けるメリット・検査を受けないデメリットばかりが強調されている場合があります.そして, 実際に・出生前検査を行った方のカウンセリング・病気や障害を持っているお子さんの診察・病気や障害を持っているお子さんを育てている親御さんのサポートこの全てを行う小児科医として思うことがあります.出生前診断のメリット・デメリットをできる限り中立の立場で, お伝えしたいと思います.非常にデリケートな内容ですので, ここからは有料記事とさせていただきたいと思います.
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【リエゾン その4】〜きょうだい編〜兄弟が病気になった子どもの生活はどう変わるのか?

【はじめに】【重い病気を持つ子どもの“きょうだい”は 希死念慮(『死にたい』という気持ち)を抱くリスクが高い】これは小児科の最も有名な教科書ネルソンに書かれている一節です.重い病気を持つ子どもも苦しいのですが,きょうだいも苦しい思いを抱えているのです.この記事は・重い病気を抱える子ども・家族が治療を行う場所であり,・医学生や研修医など,若い医療者に教育を提供する場所でもある大学病院で働く=Dr.NK=が・子どもが病気になるということ・病気が子どもや家族に与える影響・病気を抱える子ども・家族の心の世界について書いた記事です.今回は【きょうだい編】です.※重い病気や障害を持つ子どもの兄弟姉妹のことを“きょうだい”と言います.兄・姉・弟・妹, どの組み合わせも意味する言葉としてひらがなで “きょうだい” と表現されます.※この記事は【リエゾン その1】それは病気の子どもを支える大事な仕事【リエゾン その2】〜母親編〜我が子が病気になるということ【リエゾン その3】〜父親編〜病気になった我が子に会えない苦しさの続きの記事です.もし<その1〜3>を読んでいない方はリンクから記事を読んで戻ってきていただければと思います.【兄弟が病気になるということ】【お兄ちゃんが入院した】Kくん(11歳)とSくん(7歳)は仲の良い兄弟でした.喧嘩をすることもありましたが,一緒に遊んで二人で過ごすことが, 二人にとって当たり前の毎日でした.しかし1年前の夏, お兄ちゃんのKくんが病気になったことで,Kくんの生活だけでなく, 弟のSくんの生活も一変しました.外で遊ぶのが大好きだった, お兄ちゃんが外で遊ばなくなり,お兄ちゃんが小児科に受診することになりました.その日, Kくんはいつものように小学校に行ってお家に帰ってきました.ただ, いつもと違うことがありました.家にいるはずのお母さんはおらず,おばあちゃんが待っていたのです.おばあちゃんは「Kもお母さんも, すぐ帰ってくるわよ」と言っていましたが,実際にはお母さんもKくんも帰ってきませんでした.その日はお父さんが帰ってきたのもすごく遅い時間でした.Kくんは走って玄関に行って, 帰ってきてお父さんを迎えましたが,お父さんの青ざめた顔を見て, びっくりしてたじろいでしましました.おばあちゃんが家に帰って, お父さんと二人になりましたが,お父さんはずっと俯いていて,「明日からお父さんと二人で頑張ろう」というだけでした.お母さんやお兄ちゃんのことを聞こうかと思いましたが,お父さんの怖い顔を見て, やめてしまいました.その日から3日間, お父さんと二人で「もうお母さんにも,お兄ちゃんにも, もう会えないんじゃないか」そう思いながら過ごしました.学校に行ってからも「今頃,お母さんとお兄ちゃんは何をしているんだろう.」そんなことを思いながら,ずっと窓の外を見ていました.その後の2週間はおばあちゃんのうちで過ごすことになりました.夏休みなので, プールにいく約束がありましたがいけなくなり,おばあちゃんのうちからは友達の家にもいけず,ただただゲームをして 1日1日過ごしました.スマホのTV電話でお母さんと話しました.お母さんから・お兄ちゃんが大きい病気になって病院に入院していること・お母さんが一緒に病院に泊まること・2週間したらお母さんが家に帰ってくることを聞きました.そして,最後にお母さんから「お兄ちゃんも頑張ってるから, Sも頑張ってね」と言われました.家でゲームをしていると,おばあちゃんからも「お兄ちゃん,頑張っているんだからSも頑張らなきゃダメでしょ」「ゲームばかりしてないで,勉強しなさい」そう言って,怒られました.Sくんは「本当はプールにいく約束だったのに」そう思いましたが,しょうがなく,勉強しました.2週間経って,お母さんが病院から帰ってきて,お父さんとお母さんと3人でお家で過ごせることになりました.でも,前の生活とは全然違う生活が待っていました.学校から帰ってきても,お母さんは病院に行っていて家にはおらず,Sくんがお母さんの帰りを待つことになりました.病院から帰ってくるお母さんはいつも暗そうで,学校であったことを話そうと思っても,言い出すことはできませんでした.今までお母さんと一緒にやっていた学校の準備や宿題もSくんだけでやることが増え, 忘れ物をしたり,宿題を忘れることも増えていきました.お母さんもそのことには気づいていてSくんに「見てあげられなくてごめんね,もうすぐお兄ちゃん帰ってくるから」と伝えました.Sくんも「お兄ちゃんが頑張っているんだから,僕も頑張らなきゃ」そう思ってお兄ちゃんの退院まで過ごしました. 春になってお兄ちゃんが退院できて,やっと元の生活に戻れる,みんながそう思っていました.しかし,退院から3か月経ってKくんの再発がわかり, Kくんはまた,入院しました.【お兄ちゃんがまた入院した】Kくんの入院で,Sくんの生活も,また元に戻ってしまいました.学校が終わっても,誰もいない家に帰り,一人でお母さんの帰りを待つ生活です.そんなある日,Kくんが起きるとKくんはお腹の痛みを感じました.そこで初めてKくんはお母さんとお父さんに「お腹が痛いから今日は学校を休みたい」と言いました.するとお母さんは「大丈夫よ,頑張って学校にいきなさい」と言い,お父さんもそのまま仕事に行ってしまいました.そこでKくんは初めてお母さんに起こりました.「お母さんもお父さんも,いつもお兄ちゃんのことばっかり. もういいよ. 僕のことなんて大事じゃないんでしょ. 僕なんていなくなっちゃえばいいんだ. 僕だってお母さんとお父さんに心配して欲しい. 僕だってお兄ちゃんみたいに病気になりたいよ」その言葉を聞いて,お母さんもお父さんも,Kくんだけでなく,Sくんもツラい思いをしていることに気がついたのでした.KくんとSくんの家族の話はここまでです.もしリクエストをいただけるようなことがあれば,続きを書きたいと思います.【最後に】【病気になる】と言うことは【人生が変わる体験】です.そして,【家族が病気になる】, と言うことは 【家族の人生も変わる体験】なのです.子どもの病気になり,入院するようなことがあれば, 親御さんの関心は病気の子どもに集まります.結果として病気や障害のない子どもは, 関心が向けられにくくなり, “親がいなくても大丈夫な子”を演じるしかなくなるのです.最初は頑張れたとしても,その頑張りは続きません.体の症状が出たり, 学校に行けなくなったり, 病気になりたいという気持ちさえ出てくるのです.どれも自然なことだと思います.病気の子どもだけでなく, 病気の子どもの影で頑張ってくれている“きょうだい”にも光を当てたいと,社会の大人として,小児科医としてそして,子どものリエゾンを行う医師として常々思っています.ここまで読んでくださって, 本当にありがとうございました🌟〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜※この記事に書いてある登場人物は架空の人物です.でも, この記事の中にあるやりとりは,    僕が小児科医としてリアルに体験したやりとりをもとに作られていて,そう意味ではある意味とてもリアルです.〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜もし, この記事を読んで,『面白かった』, 『他の記事も読みたい!』と思ってくださったら👏 , RT, ❤️をお願いできれば嬉しいです.励みになります🤗

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小児科での保護者の離席について

小児科での保護者の離席について

「親が退室していれば、ルート確保※は何回刺したってバレない」※点滴などのために血管に針を刺すこと先日、Twitterでこのような発言が話題となり、多くの小児科医から疑問の声が上がりました。ツイキュアでは小児科におけるこうした処置の際の保護者の離席についてどっと先生に取材・インタビューを行いました。---まずはじめに先生の自己紹介からお願います。僕は現在、一般市中病院に勤務しており、基本的に新生児含めて小児科全般の診療にあたっています。専門はアレルギー・発達関連で10年目の小児科専門医です。直近は増えてきていますが、ここ2,3年は感染症が少なく、入院が必要になるケースは大きく減っており外来業務が主でした。離席するケースについて---ありがとうございます。まさに先生は今回のようなケースを日々臨床の場で診ているかと思いますが、小児科におけるルート確保などの処置時に保護者が離席するケースについてお聞かせください。現在の小児科の処置では、保護者の方に同席頂くことも増えており、別室で行うことは減りつつあります。海外でもそうした形がスタンダードになりつつ、それらに関連する研究もあります(注1,2)。個人的には思ったより退室をお願いしている先生が多いのだなとは思いましたが、この辺りは世代や地域差の違いもあるかもしれません。ただやはりご家族とお子さん本人の様子次第で例えば、不安がすごく強そうなご家族であったり、注射が苦手なパターンであったり、または甘えからお子さんがお母さんを叩いてしまったり、保護者側の安全を保てなそうな場合などは離席をお願いしているケースもあります。---Twitterでは保護者が近くで見ていると「親が助けてくれない」というトラウマとなるというお話がありました。僕も初期研修の一番最初の頃から数年はそのような形で教わりました。確かに例えばお父さんがぼーっと立っているだけの様子を見てしまったら悲しいのかなと思います。ただ実際小さいお子さんがどう感じてるか読み切れない部分があるのも事実です。そこで私の場合は同席する親御さんにはお子さんの好きなキャラクターを見せたり、動画であったり、声かけであったり、そういった形で一緒に参加してもらうことでトラウマになることは防げるのではないかなと考えております。---保護者の退室中はどのような流れで処置が進むのでしょうか。保護者の退室中でも、処置の流れは基本的に変わりません。スタッフがしっかりと患者を固定することで、事故のリスクはより低減されます。また親御さんがいない時でも動画を流してあげる等、そういった少しでも気を紛らわせられるようなディストラクション(遊びなどを通じて五感を刺激し、処置中に子どもの気を紛らわせる方法)を行うようにしています。例えば私の場合、別室でも1歳前後の子にアンパンマンを流したりしていますが、これは結構、うまくいくことが多いです。泣き時間が短くなったり、採血自体気づかずに終われることも稀にあります。いずれの場合にしても処置後はなるべくすぐに頑張ったねとしっかり声をかけ認めてあげる、褒めてあげる、そういったコミュニケーションを大切にしています。---医師側の視点では今回の件をどのように見ているのでしょうか。小児科においてルートの確保を何度か失敗してしまうことは、どうしても避けられないケースがあると思います。これはお子さんが小さければ尚更です。しかしやはり一般的な方が不快感や不安を感じるような話を、医師が公開アカウントでするのは望ましい態度ではありません。特に最近は研修医の先生のものが目立っておりますが、難しい問題であると感じております。過度に不安を感じないように---今回の件でTwitterには不安を覚えてしまった方が少なからず見受けられました。そうした方へメッセージをお願いします。赤ちゃんの点滴を取るのはそれだけでも少し難しい処置なので、失敗してしまうことや時間がかかってしまうことはどうしてもあり得ることですし、ご不安があるところだとは思います。ただ「何度も刺さなければならなかった」「子どもがどれほどのストレスを感じてしまったか」といったことは、私たち小児科医にとって大いに悔いることです。基本的にそういったことは親御さんにもお伝えしますし、誠実に対応していることがほとんどなので、過度に不安を感じる必要はないかなと思います。どうか安心して頂ければと思います。参考文献(1)Merve Azak, Gözde Aksucu, Seda Çağlar,The Effect of Parental Presence on Pain Levels of Children During Invasive Procedures: A Systematic Review,Pain Management Nursing,2022https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1524904222001011(2)Laura Palomares, Iván Hernández, Carmen Isabel Gómez, Manuel Sánchez-Solís,Parental presence during invasive pediatric procedures: what does itdepend on?,2023https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9991004/どっと小児科 先生地方の総合病院勤務、平成生まれの小児科専門医。専門はアレルギー・発達関連。アレルギー過疎地域で地道に活動を続ける。自身も子育て中。
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子供と食器を共有すると子供にむし歯がうつるってホント?

子供と食器を共有すると子供にむし歯がうつるってホント?

『子供と食器を共有したり、スキンシップでキスすると、むし歯菌が子供に移ってむし歯の原因になってしまう』こんなお話聞いたことあるのではないでしょうか?私も実際患者さんの保護者から『この子はむし歯にさせたくないから、むし歯菌がうつらないように食器の共有はもちろん、下の子がまだ小さくておもちゃを舐めてしまうのでおもちゃも毎回消毒しています』という声を耳にしたことがあります。ただでさえ忙しい育児に加えてこれらをすべて完璧にやろうとするとかなり神経を使いますし、毎回のおもちゃの消毒も相当な労力を使いますよね…子供の口の中に他人の唾液が入らないように食器の共有を避けるなどの行動は、はたしてその労力に見合ったむし歯予防の効果はあるのでしょうか?むし歯の菌がうつるとむし歯になってしまう、これはむし歯が感染症という概念からきているものと思われます。昔は『特異的プラーク仮説』といって、プラーク(歯垢)の中にいるミュータンス菌などの特定の『むし歯菌』が原因で起こると言われてきました。生まれたての赤ちゃんの口にはむし歯菌がいないので、家族などから唾液(つば)を介して感染し、定着してしまう。さらに『感染の窓』といって1歳7か月~2歳7か月は家族のむし歯菌がうつりやすく、この時期に感染するとむし歯になりやすくなってしまうといわれていました1)。ある報告では出産時に歯科検診を行った母親とその子供が2歳になった際の歯科検診結果及び母親へのアンケートを調査、分析した研究を行ったところ、未治療のむし歯がある母親の子供は未治療のむし歯がない母親の子供に比べてむし歯が多く、母親のむし歯の有無とその子供のむし歯の有無には関連性があり、母から子へのむし歯菌の感染があることがむし歯を誘発していることを示唆しています2)。これらのことから、むし歯菌の感染を防ぐために子供と食器の共有や他人の唾液が子供の口に入ってしまう行動は極力控えるべきであるという考えが歯科医療関係者を発端に情報発信されてきました。しかし最近では『生態学的プラーク仮説』という、プラークの中にいるむし歯に関わる菌やそれ以外の様々な菌が、環境変化に伴いパワーバランスが崩れることで生じるという説が有力になっています3)。その環境というのは食習慣や唾液(つば)の分泌などが関係しています。むし歯の成り立ちについてもう少し詳しくお話しします。食事などで糖分を摂取すると、それを養分として歯の表面についたプラーク中のある菌が酸を出すことで、歯の表面のミネラルが溶けていく『脱灰』という現象が起こります。しかし一時的に失われた歯の表面のミネラルを、唾液などに含まれるフッ素などのミネラルを使って補充してくれる『再石灰化』という現象も起こります。通常はこの脱灰と再石灰化のバランスが保たれているのです。しかし糖分を含む物をダラダラ飲んだり食べたりするなどの頻回摂取や、お口の中で長時間糖分が入っている状態が続くと、菌が糖を使って酸を出す量や時間が増えてきます。これが日常化するとプラーク中の環境が酸性に傾き、酸に強い菌や酸を作り出す菌が生活しやすい環境になります。するとプラーク中の菌のパワーバランスが崩れていき、さらにそれらの菌の栄養となる糖分がどんどん与えられるのも相まって、そのプラークが付着している歯の表面は脱灰がずっと続いてしまいます。歯磨きをしないことも加われば同じ場所にプラークは停滞し続けます。そして再石灰化が追いつかないくらい脱灰が進んでしまうと歯に穴が開き、むし歯という状態になってしまいます*(イラスト)twitter @usappa,うさコレ:Usappa Complete Collecction スタジオうさっぱ2022 よって単純にミュータンスなどの特定の菌が感染し起こる病気ではなく、①食習慣などでプラーク中の環境が変化する②プラーク中の菌の生態系が変化する③脱灰と再石灰化のバランスが脱灰に傾く、といったプロセスを経てむし歯が発生するとされています。WHOという世界的な健康情報を定義したり提供している機関もむし歯は非感染性の疾患であると定義づけています4)。つまり食器を一時的に共有したり、スキンシップでキスをしたりする行為によって、他人の唾液中の菌がお口の中に入ったとしても、それだけが原因となってむし歯になるとは必ずしも言えないのです。逆を言えば食器の共有をしないことなどを徹底していても、甘いものをダラダラ食べるといった食習慣や歯磨きを全然しないような習慣がある場合はむし歯になってしまいます。食器の共有といった他人のお口の菌が子供に感染する行為とむし歯の関連性を調べた研究を見ていきましょう。1歳3か月から3歳未満の子供を対象として2年調査した結果、食器を共有していた場合はしなかった場合と比較してむし歯が多くできてしまったと言う報告5)や、出生時から2歳まで追跡し調査した研究6)では、キスや他人と食器の共有をした子供たちはミュータンス菌の定着と関連性があった、という結果となりました。これらを見ると食器の共有などによって養育者との唾液を介した菌の感染は、子供のむし歯と関連があるといえそうです。一方、3歳児とその養育者を対象としたアンケート調査と3歳児の歯科検診の結果をもとに分析した研究では、食器の共有だけで分析するとむし歯との関連性は認めましたが、養育者の学歴や収入など社会的な背景を考慮して分析すると、食器の共有や口移しといった行為とむし歯に関連性は認めなかったといった結果となりました7)。これは一見すると食器の共有とむし歯予防は関係があるように見えるけれど、そもそも食器の共有など気を付けている養育者は他にもむし歯を予防するような行動をしている傾向にあるので、実際には食器の共有とむし歯の関係は認められなかった、ということです。むし歯の予防に対して食器の共有まで気を使っている人は、子供の食習慣や歯磨き習慣にも気を使って行動しているからむし歯になりにくいよね、一方で食器を共有していた人の中でむし歯があった人は、むし歯のリスクとなる他の行動もとっていたのかもしれないね、ということです。先程出てきた母親のむし歯とその子供のむし歯との関連も、むし歯菌の感染だけでなく、親子だと生活習慣も似てくるため、その辺りのリスク因子も考えられます。むし歯のプロセスの一つに菌の存在が条件となっているのは間違いありません。なので今までしてきた行為が無駄だったのかと思う必要はないです。しかしむし歯はたくさんの要因で成り立っている病気であるとされています。年齢が上がるにつれて行動をコントロールすることが難しい子供の食器の共有やキスなどのスキンシップを制限するよりも、食習慣に気をつけたり、おうちでのフッ化物(フッ素)を使用した歯磨きの習慣づけをすることにその労力を使う方が効率よくむし歯予防ができるのではないでしょうか。当たり前に言われている食習慣や歯磨き習慣も子供相手だとなかなか大変なことが多いですよね。なので正しい知識を使っていい意味で手を抜いてむし歯予防をして頂けたらと、遠くから応援しています。参考文献1) Caufield PW, Dasanayake AP, Li Y, Pan Y, Hsu J, Hardin JM. Natural history of Streptococcus sanguinis in the oral cavity of infants: evidence for a discrete window of infectivity. Infect Immun 2000;68(7):4018-23. 2)山本 誠二, 新谷 智佐子, 竹本 弘枝, 滝川 雅之, 中村 隆子, 仲井 雪絵, 壷内 智郎, 下野 勉. 産婦及び母親の口腔内状態が子供に及ぼす影響について. 小児歯誌 2001;39(1) :20-26. 3) Kidd E, Fejerskov O, Nyvad B. Infected Dentine Revisited. Dental Update 2015; 42: 802-809.4)Suger and dental caries. Fact sheets WHO 20175)Cogulu D, Ersin NK, Uzel A, Eronat N, Aksit S. A long-term effect of caries-related factors in initially caries-free children. Int J Paediatr Dent. 2008 ;18(5):361-367. 6) Wan AK, Seow WK, Purdie DM, Bird PS, Walsh LJ, Tudehope DI. A longitudinal study of Streptococcus mutans colonization in infants after tooth eruption. J Dent Res. 2003 ;82(7):504-8.7)Wakaguri S, Aida J, Osaka K, Morita M, Ando Y. Association between caregiver behaviours to prevent vertical transmission and dental caries in their 3-year-old children Caries Res. 2011;45(3):281-6. 8) 高柳篤史(監著), 相田潤,遠藤眞美,佐藤涼一,鈴木誠太郎,山岸敦.セルフケア指導 脱!誤解と思い込み 今はこうする!最新の解釈&臨床. 東京:クインテッセンス出版株式会社, 2021.
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フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

フッ化物の入った歯磨き剤を正しく上手に使ってお子さんのむし歯予防を効率的に

2023年に入り、日本の口腔衛生に関わる4学会からフッ化物(フッ素)配合の歯磨き剤(歯磨き粉)の推奨される使用方法が発表されました!(1)そこでお子さんのお家での歯磨きで使うときのポイントを、今回のアップデートした内容も混ぜながら解説したいと思います。①歯磨き剤は、歯が生えたら使い始めるフッ化物入りの歯磨き剤は歯が生えたら使いましょう!つまり、歯磨きも歯が生えたらスタートします。歯ブラシも今色んな種類が出てますが、シリコンなどではなく、普通の歯ブラシの毛がついている、仕上げ磨き用の歯ブラシを使ってもらって大丈夫です。②年齢ごとに推奨する濃度と量を使う2歳までは900から1000ppmのものを米粒程度の量を歯ブラシにつけて歯磨きします。3歳になったら同じ濃度のものをグリーンピースぐらいの量まで増やします。6歳以降は1400から1500ppmのものを、歯ブラシ全体(1.5から2cm)につけて歯磨きしますこちらにTwitterアカウント@ドラッケン先生(https://twitter.com/okamayeah?s=21&t=U1N9pdB4KaxzuDMq7exCFA)が作成した、900から1000ppm以上の歯磨き剤の味別の一覧表がありますのでよろしければ参考にしてみてくださいこれは個人的な意見ですが、特に低年齢だと味の好みが目まぐるしく変わったりしやすいのと、歯磨き剤の1回量が少ないので、歯磨き剤1本消費するのに時間がかかります。なので同じ味の歯磨き剤を大量購入してしまうと、いざこの味が嫌となった時にもったいないことになる可能性があります。できれば1本ずつ購入するのが安心かと思います。買う時に一緒に味を選ぶのも歯磨きが楽しくなるかもしれません♪Q1.低い濃度のものを多く使ってはいけないの?A.おすすめしません。500ppm未満のフッ化物は1000ppmのものと比較するとむし歯予防効果が低く、じゃあたくさん使えばいいのかと量を多く使ってしまうと体に取り込まれるフッ化物が多くなってしまいます。永久歯が骨の中で作られている時期に、体に取り込まれるフッ化物が多すぎると、歯のフッ素症といってその時作られている永久歯の一部が弱ってできてしまうリスクがあります。そのリスクを下げるためにも、より効果的な濃度のものを適切な量使用することで、メリット(むし歯予防効果)を最大限にしてデメリット(フッ化物の副作用)を極力抑えて使うことができます。薬や栄養素と同じで、摂りすぎては害がでるので適切な量を使おうということです。③ジェルタイプ、フォームタイプ、ペーストタイプ歯磨き剤には研磨剤が入っておらず、塗った歯にとどまりやすいジェルタイプ、同じく研磨剤が入っておらず、お口に広がりやすいフォームタイプ、研磨剤が入っており発泡剤により歯の隅々まで拡散、停滞しやすいペーストタイプのものがあります。ジェルタイプはフォームタイプより唾液に流れにくく、歯磨き中にお口の中が唾や歯磨き剤でいっぱいになりにくいこと、吐き出さなくても拭き取りで余分な歯磨き剤を除去しやすいことから唾の吐き出しやうがいのできない低年齢で使いやすいタイプとなります。フォームタイプはお口に広がりやすく、吐き出しができなくても使いやすいのが特徴ですが、同じフッ化物濃度でも他の二つのタイプと比較すると唾の中に流れやすく、お口の中でフッ化物の濃度が下がってしまいやすいという報告があります。ペーストタイプはジェルタイプと比較して発泡剤によってフッ化物が歯のすみずみまで行き届きやすいこと、粘度があり歯に停滞しやすいこと、研磨剤が入っているので歯の着色を落とせる効果があります。使い分けに関してはベースとなる根拠が菲薄のなのが現状です。一つの目安として、唾の吐き出しやうがいができるまではジェルタイプ、うがいができるようになったらペーストタイプを使ってもらえるのが良いかと思います。吐き出しができずジェルタイプの受け入れが難しい場合は、フォームタイプを使ってもらうのも良いでしょう。ただ唾の吐き出しやうがいができても、ペーストタイプが苦手で歯磨き剤を使わない、となってしまうよりはジェルタイプを使ってもらうのがよいのでそこはお子さんの好みで使い分けてもらっても良いでしょう。Q2ペーストタイプで歯を磨いてから最後にジェルタイプを塗るのはよいですか?A.推奨しません。それぞれを1回分の量ずつつけて併用してしまうとフッ化物の総量が増えてしまいますので、Q1でもお話ししたデメリットが出てきてしまう心配があります。半分ずつにするか、どちらかにするかにしてもらうと安心かと思います。④歯磨き後のうがいのやりかた理想はうがいをせずに唾だけペッと吐き出すだけの方がフッ化物がお口の中でとどまってくれるので効果的です。しかしそれが気持ち悪かったりする子もいると思います。なのでうがいしたい場合は少量の水、ペットボトルのキャップくらいの量のお水で1回うがいするようにしましょう。⑤歯磨きの回数や歯磨き後の注意むし歯予防に効果的なのは就寝前を含む1日2回、フッ化物入りの歯磨剤で歯磨きをして、その後は1、2時間飲食を控えることが推奨されています。飲食に関しては水分補給が必要な場合もありますのでむし歯リスクの少ないお水やお茶にしてもらうのが安心で効果的でしょう。長くなってしまったのでまとめると①歯が生え始めたらフッ化物入りの歯磨き剤で歯磨きしましょう!②年齢によってフッ化物の効果的な濃度と量があるのでしっかり守って使いましょう!③歯磨き後はうがいではなく唾を吐き出す程度にするのが理想。うがいはするとしても少量で1回だけにしましょう!④歯磨きは就寝前を含む1日2回、歯磨きの後は1.2時間極力飲食は控えましょう!最後にフッ化物配合の歯磨き剤を使った歯磨きもむし歯予防に重要ですが、間食時のおやつや飲み物に含まれる糖分(遊離糖)の摂取頻度を少なくすることもとても大切です!いくら適切に歯磨きをしていてもこちらがダメになってしまうとせっかく頑張って歯磨きしていてもむし歯となってしまいます…また、個々のお口の状態にあった適切な歯磨きはかかりつけの歯医者さんにアドバイスをもらうとより良いと考えます。お子さんのお口の健康に少しでも助力できれば幸いです。遠くから応援しております♪参考文献(1)4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法2023 年 4月 13日 一般社団法人 日本口腔衛生学会 公益社団法人 日本小児歯科学会 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 一般社団法人 日本老年歯科医学会https://www.gerodontology.jp/publishing/file/guideline/guideline_20230301.pdf(2)American Academy of Pediatric Dentistry. Fluoride therapy. The Reference Manual of Pediatric Dentistry. Chicago, Ill.: American Academy of Pediatric Dentistry; 2021:302-5.https://www.aapd.org/globalassets/media/policies_guidelines/bp_fluoridetherapy.pdf(3)FDI.White Paper on Dental Caries Prevention and Managementhttps://www.fdiworlddental.org/sites/default/files/2020-11/2016-fdi_cpp-white_paper.pdf(4)WHO.Fluoride toothpastehttps://cdn.who.int/media/docs/default-source/essential-medicines/2021-eml-expert-committee/applications-for-addition-of-new-medicines/a.14_fluoride-toothpaste.pdf?sfvrsn=4eb40f4c_4(5)Ulla Moberg Sköld, Dowen Birkhed, Jian-Zhi Xu, Kai-Hua Lien, Malin Stensson, Jeng-Fen Liu,Risk factors for and prevention of caries and dental erosion in children and adolescents with asthma,Journal of Dental Sciences,2022https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S199179022200054X(6)Toumba KJ, Twetman S, Splieth C, Parnell C, van Loveren C, Lygidakis NΑ. Guidelines on the use of fluoride for caries prevention in children: an updated EAPD policy document. Eur Arch Paediatr Dent. 2019 Dec;20(6):507-516. https://www.eapd.eu/uploads/files/EAPD_Fluoride_Guidelines_2019.pdf(7)WHO.Fluorides and oral health.https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/39746/WHO_TRS_846.pdf?sequence=1&isAllowed=y(8)Christian H Splieth et al. How to Intervene in the Caries Process in Children: A Joint ORCA and EFCD Expert Delphi Consensus Statement.Caries Res.2020https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32610317/(9)Yoichi Ishizuka.Effect of Different Toothbrushing Routines on Interproximal Fluoride Concentration.Caries Res.2020https://t.co/0TLdFWriu0(10)フッ化物配合歯磨剤.e-ヘルスネット.厚生労働省https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-007.html
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糖尿病に対する偏見を解く【アドボカシー活動】とは?

糖尿病に対する偏見を解く【アドボカシー活動】とは?

糖尿病と聞くと「本人がだらしないからでは?」、「寿命が10年短くなるよ」、「必ずがんになるよ」などという声もたまに耳にします。社会における糖尿病の知識不足やSNSなどによる間違った情報の拡散もあり、糖尿病をもつ人は、社会的偏見による差別にさらされていることが問題視されています。自身が糖尿病であることを告白すると偏見をもたれるケースもあるため、隠してしまう方もいるのです。偏見による差別は、周りの人々の反応だけではありません。就職や住宅ローン審査への影響、低いエビデンスの治療・指導にもつながり、個人だけでなく社会的な問題に発展してしまいます。日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病の正しい理解を促進し、糖尿病をもつ人が安心して社会生活を送れるための広報活動に取り組んでいます。これらは「アドボカシー活動」と呼ばれています。糖尿病協会の広告を目にした方もいるかもしれません。https://www.nittokyo.or.jp/uploads/files/advocacy_leaf.pdfアドボカシーとは直訳では「擁護、支援」という意味です。日本では、あまりなじみがない用語ですね。しかしアメリカでは、糖尿病診療・研究と並んで重要視される取り組みとなっています。本記事を通して、糖尿病に対する偏見の悪影響や誤った情報の具体例などを学びましょう。糖尿病に対する姿勢を見直すきっかけになればと思います。1.糖尿病に対する偏見の悪影響わが国では、予備群を含む糖尿病患者数は2000万人以上もいます。糖尿病は、成人の4人に1人が関係する身近な疾患です。糖尿病治療は、インスリン治療を含むさまざまな薬の登場で飛躍的に向上してきました。血糖コントロールを良好に保てば、健常者と変わらない生活を送れるようになってきています。糖尿病に対する偏見で、どのようなデメリットがあるかイメージできない方もいるかもしれません。一部では、古い情報にもとづく判断で必要なサービスが受けられない、就職や昇進に影響する、などの不利益を受けるケースが報告されています。偏見を放置すると、①糖尿病であることを周囲に隠し、適切な治療のタイミングを逃す②糖尿病の重症化が進み、医療費が増え社会保障を脅かす③ますます糖尿病に対する偏見が強くなるという悪循環に陥ってしまいます。まず、糖尿病であることに対する誤った偏見で被害を受ける人々がいることを知っておきましょう。2.糖尿病患者への誤ったイメージの具体例①糖尿病患者は非糖尿病患者より必ず早死にする「糖尿病をもつ人の寿命が非糖尿病者より10年短い」など、誤ったメッセージを時折目にします。日本の統計上では、糖尿病患者の約70%は高齢者です。糖尿病が原因で亡くなる人の割合は、治療法の向上と共に改善されていると考えられます[1]。しかし統計上の糖尿病患者には、糖尿病の指標であるHbA1cが6.5%以上で、糖尿病の疑いが非常に高い患者から低い患者まで、すべて含まれています。ですから、コントロールのよい方まで寿命が短いと、一括りにするのは間違いです。②糖尿病患者はがんや認知症も発症するリスクが高い高齢者における偏見は、糖尿病があるからというより、糖尿病治療の進歩により長生きできる患者が増加したことが原因と考えられています。糖尿病が原因でおきる合併症には「網膜症」や「神経症」があります。しかし年を取ると、がんや認知症などの、いわゆる併発症に注意が必要です。日本糖尿病学会では「正しい治療を適切に続ければ、一病息災で長寿を全うできる。血糖コントロールを適切におこなうことで合併症発症を減らし、医療費削減にも貢献できる」をスローガンに社会に発信しています。患者が安心して治療を継続できるような、環境づくりを目指す必要があります。3.医療者が気を付けること耳が痛い話ですが、糖尿病になり長年放置すると「失明しますよ」、「足の切断になりますよ」、「透析になってしまいますよ」など合併症の恐ろしさを強調する医師もいます。人によりますが、患者自身の自覚を促す治療の方針が多かったと思います。患者さんの置かれた社会的状況などを理解し、それにもとづく個々にあった適切な指導をおこなうという視点が足りなかったかもしれません。糖尿病に対するマイナスイメージを強調した情報が独り歩きすることで、社会における糖尿病に対する偏見が助長されてきた面はあるでしょう。医療者も、いつも以上に糖尿病について目の前の患者がどのように感じているかを常に頭の片隅に置きながら、診断治療していく必要があると思います。まとめこの記事では、糖尿病に関する偏見とそれに対するアドボカシー活動を解説しました。「健康」は人生にとって一番重要な事項のひとつです。毎日の食事や運動などで気を付けていても糖尿病になる方は身近にいます。病気をもっている方に偏見をもつこと、また患者自身が偏見を気にして治療機会を失うことは、その人個人だけでなく社会的にも大きな問題です。糖尿病であることが恥ずかしい、悪いという考えが間違っていることを知ってください。一人ひとりが偏見をなくすことが、社会の健康につながります。[1] 日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2016, 2016年
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子どもの目が悪くならないようにする2つの対策方法とは

子どもの目が悪くならないようにする2つの対策方法とは

「息子の目が悪くなり、学校の検診でD判定だった」「娘が目を細めてテレビを見ている」などといった相談を受けることがあります。遠くが見えづらくなっている状態を、専門用語では「近視」といいます。近視は親から遺伝することもありますが、パソコンやスマホを見ているなど、近くを見ている時間が長いほど近視が強くなるともいわれています[1]。また、コロナウイルス感染症の流行に伴い、子どもが家にいる時間が増えました。子どもが家にいる時間が増えると、スマホやパソコンを見る時間が増える子どももいるでしょう。こうして近くの物を見ている時間が長くなったことから、近視がますます増えると我々眼科医は懸念しています。近視は、遠くが見えづらい状態です。あなたも自分のお子さんの目が悪くなるのを防ぎたいと思いませんか?そこで、今回は眼科医が近視とその対策方法について解説します。この記事を読めば、今日から子どもの目が悪くならなくする方法を知ることができるようになります。近視がもたらす目の病気近視のため子どもの視力が下がるだけであれば、眼鏡やコンタクトレンズを変えればよいと思う方もいるでしょう。しかし、近視が進行すると「強度近視」という状態になる方がいます。強度近視は、白内障や網膜はく離などの病気になる確率が特に高くなるとされています[2]。白内障や網膜はく離などの病気になると視力が下がったり、視野が欠けたりします。最悪の場合は失明することもあります。こういった病気になると考えると、近視にならないための努力が大切だと思います。しかし、子どもたちは病気のことを重く受け止められないことも少なくありません。親など周囲の人間によって、近視が進行しないよう指導が必要です。とはいえ、具体的に何をすると近視を防げるのかがわからないと思います。そこで、ここからは今日からおこなえる近視進行対策を2つ紹介します。近視対策①「スマホやパソコンを見たら、20-20-20ルールを守ろう!」皆さんは20-20-20ルールをご存じでしょうか?この20-20-20ルールは、アメリカ眼科学会がパソコンやスマホなどの画面を見た際の眼精疲労に対して推奨した方法です。最近になって、近視対策としても用いられるようになりました。20-20-20ルールを具体的に説明します。20-20-20ルールとは「20分ごとに20秒の休憩をとり、少なくとも20フィート(6m)離れた物を見る」という方法です。例えば、20分間ゲームをしたら、20秒間は窓の外にある木を見る。これが20-20-20ルールです。この20分間はあっという間に過ぎてしまうので、タイマー機能のある時計などで設定しましょう。近視対策②「できるだけ外で遊ぼう!」20-20-20ルールは、近くの物を見る時の休憩方法でした。それ以外に簡単にできる近視対策は、外で遊ぶことです。実は、外で遊ぶと近視が予防できるとされています。2020年の報告によると、屋外で遊ぶ時間を1日120分確保することで近視の割合が減ったとされています[3]。これは太陽光を浴びる時間が増えることが影響しています。また、外で遊んでいる時間が長いほど、スマホやパソコンなど近くを見る時間が少なくなることも影響していると思われます。とはいえ、1日に120分間も外で遊ぶのは難しいかもしれません。1日30分でもいいので、外で遊ぶ時間を増やすようにしてみましょう。まとめ近視は目が悪くなり、眼鏡やコンタクトレンズが必要になるだけではありません。さまざまな病気の原因になり、視力が下がったり、視野が欠けたりします。最悪の場合は失明することもあります。しかし、子どもの頃にそのような病気を発症することはほとんどなく、大人になってから発症します。そのため、子どもたちは自分事のように思いにくいでしょう。近視を予防するためには、親御さんの協力が必要です。この記事で紹介した「スマホやパソコンを見たら、20-20-20ルールを守ろう!」と「できるだけ外で遊ぼう!」という2つの対策は今日からできる対策です。お子さんの目を守るために少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。参考文献[1]子供が近視といわれたら.https://www.gankaikai.or.jp/health/39/index.html#:~:text=%E7%B6%B2%E8%86%9C%E3%81%AE%E5%89%8D%E3%81%AB%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%88,%E5%B7%AE%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82,(参照2022-04-22)[2]Refractive Error and Eye Health: An Umbrella Review of Meta-Analyses.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8599990/,(参照2022-04-22)[3]Increased Time Outdoors Is Followed by Reversal of the Long-Term Trend to Reduced Visual Acuity in Taiwan Primary School Students.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32197911/,(参照2022-04-22)
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