小児科 救急受診のタイミング〜発熱編〜
こんにちは!
こども病院に勤務する小児科医れいと申します。
日々のママパパ業、ジジババ業、ご苦労さまです!
本日は表題の件、小児科 救急受診のタイミング、
特に発熱の際に、どのタイミングで救急受診すべきかをわかりやすくご説明できればと思っています。
まずは何にせよ結論から!
【受診すべきタイミングはこれだ!】
①ぐったり、顔色が悪い
②普段の半分以下(水分摂取、尿量)
③いつもと違う(呼吸の仕方、異常行動)
④けいれん
⑤繰り返す嘔吐
基本的にはこの5つを考えてもらえれば良いかと思います。
それでは各項目について、もう少し詳しく書いてみましょう。
①ぐったり、顔色が悪い
言わずもがな、かもしれませんが、やはりぐったりしてきたり、顔色が悪くなってきたときはなにか治療をしてあげないと良くならないことも多いです。
親御様のご心配も強いと思いますので救急受診をオススメします。
②普段の半分以下(水分摂取、尿量)
熱が出てくると、ご飯がなかなか食べられなくなってしまう子も多いです。
ただし!
ご飯が食べられずとも、糖入りの水分がしっかり取れていれば、緊急受診は不要です。
ご飯が食べられず脱水で入院になる子も中にはいますが、我々医療者にも、ご飯を食べさせる方法は基本的にありません。
「じゃあ入院中って何するの?」
点滴で水分と糖分を補充します。
つまり口からOS-1が飲めていれば、入院は不要です。
OS-1に限らず、糖分が入っている水分なら何でもOK!
薄めたりんごジュースや、薄めたスポーツ飲料、はたまたベビー用イオン水、みたいなものでも良いかもしれません。
病気のときは、水や麦茶は禁止!
せっかく水分を取るなら、糖分も一緒に補いましょう。
ただし飲めていると思っても、実は大した量が飲めていなかった!なんてケースもちらほら。
そんなとき、脱水の良い指標になるのが、おしっこの量。
普段の半分くらいになっていたら、これは恐らく脱水状態です。
点滴が必要な可能性が高いので、一応入院の準備もして、すぐに受診しましょう。
③いつもと違う(呼吸の仕方、異常行動)
ぜいぜい、ひゅーひゅー。
オットセイの鳴き声みたいな咳。
呼吸のたびに首の付根がペコペコ。
肩で息をしてる。
苦しそう。
こんな所見があれば、治療が必要なことが多いです。
救急受診するのが良いでしょう。
病状が進むと、改善に時間がかかります。
また呼吸状態は、夜が深まるにつれて悪くなることが多いです。
悩んだら、早めに受診、が良さそうです。
異常行動については、その後はっきりとした意識状態に戻れば、特に心配しなくて良いケースがほとんどですが
意識状態の評価というのは難しいものです。
一度受診して、医師に評価させるのが無難でしょう。
一昔前に、抗インフルエンザ薬の副作用で異常行動!
と話題になりましたが、この異常行動は、インフルエンザの症状であることがわかっていて、特定の薬の副作用ではありません。
インフルエンザ以外でも、高熱があるときには時に、異常行動が起きることがあります。
ですので高熱の子は、一人では寝かさないのが良いでしょう。
家族の誰かが同じ部屋で寝てあげると安心です。
④けいれん
熱性けいれん、という言葉は、みなさん、1回くらいは耳にしたことがあるかもしれません。
親戚や身近な人がなった、あるいはご自身がなったことがある、という方もまぁまぁいらっしゃると思います。
熱性けいれんの有病率、すなわち熱性けいれんを起こしたことのある人の割合は、日本では約10%と言われています。
10人にひとりがなるくらいの病気ですから、もし子どもが痙攣したとしても、あまり心配しすぎずに、冷静にさっさと救急車を呼びましょう。
医師によっては、「すぐ止まれば救急車は呼ばなくても良いよ?」と言うかもしれませんが、
どのくらいの時間、けいれんが続くかは、止まるまで誰にもわかりません。
最新2023年の診療ガイドラインでは
「5分以上持続する痙攣は治療対象」と明記されました。
また、一見止まっているように見えても実はけいれんが続いていた、という症例もしばしばあります。
痙攣は救急車!
これで行きましょう。
⑤繰り返す嘔吐
嘔吐を繰り返すことで脱水を起こすから、というのも受診をした方が良い理由の一つですが
それ以外に、嘔吐が重篤な病気の症状である可能性もあります。
数回の嘔吐で収まってくれば受診は要らないかもしれませんが
10回以上嘔吐している、
嘔吐の間隔がどんどん短くなる、
ぐったりしてきた、
などの症状を伴う場合は、さっさと点滴が良さそうです。
早めに受診しておきましょう。
ちなみに嘔吐中の水分摂取については別途記事を書く予定ですが糖分入り水分を、できるだけ飲ませるのが大事です。
なんとか少しずつでも水分を取らせましょう。
まとめ
ということで、長々と書いてきましたが、上に挙げた5つのシチュエーションに加えて、あと2つ、大事な受診のタイミングをお伝えします。
それは
「親御さんが感じる "なんか変だ" があったとき」
「親御さんの心配が大きいとき」
親御さんが一番、我が子の状態をよく分かっています。
その親御さんが上記のように思うなら
それは受診すべきタイミングなのです。
大人に比べて余力のない子どもたちにとって、早すぎる受診、というのはないと考えて良いと思います。
躊躇せずに、早めの受診を心がけましょう。