【NICUってどんな所?】〜小児科医が解説〜
【はじめに】
この記事は
・現在妊娠中で赤ちゃんがNICUに入院するかも,と心配している妊婦さん
・お子さんがNICUに入院しているお母さん,お父さん,ご家族
・子どもの医療に興味を持っている将来の医療者を含む皆さん
に向けて書いています.
この記事を読むことで,
・どんな時,NICUに赤ちゃんが入院するのか?
・NICUってどんな所なのか,赤ちゃんにどんな治療をするのか?
・NICUにはどんなスタッフが働いているのか?スタッフの想い
がわかります.
もし今,赤ちゃんのことで不安な方がいたら,
この記事を読むことで,少しでも安心してもらえたら,
そんな想いでこの記事を書いています.
漫画「コウノドリ」が好きな方も, この記事を読んでみてくださいね.
(コウノドリ 鈴ノ木 ユウ)
【赤ちゃんが入院することは珍しくない?】
【赤ちゃんが産まれる】
これは赤ちゃんを出産するお母さんにとって, とっても大変な事です.
しかし同じ体験をまだまだ小さい赤ちゃんがするのです.
赤ちゃんの体にも大きな負荷がかかります.
実際, 生まれてきた赤ちゃんの10人に1人は
出産の時に何かしらの医療サポートを必要としていて,
赤ちゃんの100人に1人は
しっかりした医療者のサポート,
つまり人工呼吸や心臓マッサージなどの蘇生が必要です.
言い換えると産まれる日は
【人生で1番,医療のお世話になる確率が高い日】とも言えます.
逆に言えば,
お母さんやお父さんからすると,
大切な赤ちゃんが入院したり, 医療の力を借りることは
とてもショックなことかもしれませんが,
医療者からすると【とてもよくあること】でもあるのです.
【どんな時,NICUに赤ちゃんは入院するの?】
妊娠中, つまりお母さんのお腹の中にいる時,
赤ちゃんは臍の緒を通じて, 栄養や酸素を分けてもらっているので
自分で栄養を取ったり, 呼吸をする必要はありません.
しかし,
赤ちゃんは生まれた瞬間から
自分の命を維持するために必要な栄養補給と呼吸を
【100%】自分でやらないといけなくなります.
90%できているんでもダメなんです.
100%できていないとダメなんです.
なので,
母乳・ミルクが飲めない時や呼吸が苦しい時に
赤ちゃんは入院することになります.
他にも手術や検査が必要なときに赤ちゃんはNICUに入院しますが,
やはり1番多い入院の理由が栄養と呼吸になります.
では【どんな時に栄養と呼吸のサポートを必要とするか?】というと
・赤ちゃんが予定日より早く生まれた時
・お産が大変で赤ちゃんに強いストレスがかかった時
・何か病気があって母乳を飲んだり,呼吸が苦しくなった時
となります.
【NICUってどんな所?どんな治療をしているの?】
では実際に栄養と呼吸のサポートはどのように行うのでしょうか?
それぞれ見ていきましょう.
【栄養のサポート】
栄養のサポートは【点滴】と【管を通した栄養】の2種類です.
【点滴】
赤ちゃんの調子が悪い時,点滴で水分と糖分の補充を行います.
点滴は赤ちゃんの手や足,場合によっては臍の緒から入れます.
点滴が入っていると「痛くてかわいそう」と思うかもしれません.
確かに点滴を入れる時には,針を刺すので,痛いのですが,
一度点滴が入ってしまえば痛くありません.
安心してくださいね.
【管を通した栄養(胃管・経管栄養)】
母乳やミルクを消化する力はあるけど, 吸う力がまだない,
そんな赤ちゃんには鼻や口から胃まで細い管を入れて,
その管を通して母乳やミルクを赤ちゃんに届けます.
この管も挿れる時には少し痛いですが,
入ってしまえば,痛くはありません.ご安心ください.
【呼吸のサポート】
呼吸のサポートには3段階の治療があります.
【最も強い治療:人工呼吸】
自分の力で呼吸をすることができない, 自分の呼吸だけでは苦しくなってしまう場合に
機械(人工呼吸器)の力を借りて赤ちゃんの呼吸をサポートします.
赤ちゃんの口から喉に細いチューブ(大人の指よりも細いです)を入れて, そこから
機械に繋ぐのです.
自分で呼吸ができるようになると,
中くらいの治療(赤ちゃん用の酸素マスク)に切り替えます
【中くらいの治療:“赤ちゃん用の酸素マスク”(Nasal High Flow, Nasal CPAP)】
赤ちゃんの呼吸が回復してきたり, ある程度自分の力で呼吸ができる, と判断できると
【中くらいの治療】に切り替えます.
中くらいの治療は“赤ちゃん用の酸素マスク”です.
赤ちゃんは鼻呼吸なので, 鼻に赤ちゃん用のマスクを当てます.
NasalsHighFlowとNasalsCPAPという2種類のマスクがあり,
マスクから空気や酸素をお赤ちゃんに送り込んでいます.
【弱めの治療:酸素投与】
赤ちゃんの呼吸はしっかりあるけど, ちょっと苦しくなってしまう時,
赤ちゃんに酸素を吸わせてあげます.
ここまで来れば, もうちょっとです.
【NICUで働くスタッフ・その想いとは】
NICUには様々なたくさんのスタッフが働いています.
・診察や処置を行い治療を進める医師
・赤ちゃんのお世話をしたり, お母さんに赤ちゃんの様子を伝える看護師
・点滴やお薬の調整を行う薬剤師
・ミルクを準備する栄養科のスタッフ
・必要な点滴や薬をNICUまで運ぶ看護助手
・退院後に赤ちゃんやお母さん,お父さんが困らないようにサポートを行うソーシャルワーカー
そんなスタッフの気持ちは一つ.
赤ちゃんにもお母さんにも,お父さんにも
『安心してほしい』 です.
無理して笑わなくて大丈夫です.
泣きたい時もあると思います.
赤ちゃんのことでわからないことがあったり,悲しくなったり,
赤ちゃんのこと関係なく悩んでしまうことがあると思います.
そんな時, ぜひ僕たちスタッフに声をかけてください.
ちょっとした事でも力になりたいと思っています.
【最後に】
【赤ちゃんが産まれる】これは嬉しいことのはずです
しかし,実際には赤ちゃんにとっても, お母さんにとっても,お父さんにとっても
大きなストレスがかかる体験です.
そしてそのことをNICUの医療スタッフは知っています.
ぜひどんな事でも,どんな小さな事でも相談してください.
待っています.
もし相談口がなかったら,僕,Dr.NKに相談してくださればと思います.
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です.
【公認心理師】の資格も保有してます.
3次救急を行っている当直医としても働いています.
お産の立ち会いにおける新生児の蘇生, けいれん, 呼吸器感染症, 喘息, 胃腸炎の対応なども行っています.
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