2022/04/04
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補完食の考え方

補完食の考え方

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「補完食」という言葉をご存知ですか?

赤ちゃんが産まれて、そろそろ離乳食のことを考えないと......でも離乳食ってどんな風に始めたらいいのかな?
そんな風に考えて調べるうちに、「補完食」という言葉に辿り着いた方もいらっしゃるかもしれません。


「補完食ってなに?離乳食と違うの?」


これが、「補完食」という言葉を知った方が一番最初に抱く疑問ではないでしょうか。

補完食(complementary feeding)とは、WHOが推奨している、日本で言うところの離乳食、英語ではweaningにあたる言葉です。
離乳食を文字通りに解釈すると、「乳」から「離」れるための「食」事ということになります。
これに対し、補完食は、「補完」するための「食」事です。
さて、一体何を補完するのでしょう?


赤ちゃんは産まれてから母乳やミルクを飲んで育ちます。それ以外のものは基本的に必要ありません(病気の時のお薬などは除きます)。
しかし、生後6ヶ月頃になると、母乳やミルクだけでは、赤ちゃんが成長したり元気に活動したりするために必要な栄養素の量を満たせなくなってきます。そのため、母乳やミルクに加えて、足りない栄養を補うための食事が必要になってくるのです。
母乳やミルクだけでは足りない栄養を「補完」する「食」事、これが「補完食」です。
あくまでも栄養の基本は母乳やミルクになりますので、無理にやめる必要はありません。WHOは2歳(もしくはそれ以上)までの授乳を推奨しています。



補完食は離乳食と何が違うの?

補完食の言葉の意味はわかっても、実際に進める上で、日本の従来の離乳食と何が違うのか心配だという方も少なくないと思います。
補完食も離乳食も基本的には同じです。
日本の離乳食については、厚生労働省が「授乳・離乳の支援ガイド」を作成しており、そこに離乳食の基本的な考え方がまとめられています。この「授乳・離乳の支援ガイド」は2019年に改定されており、そちらからいくつか引用しますと



“離乳とは、成長に伴い、母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために、乳汁から幼児食に移行する過程をいい、その時に与えられる食事を離乳食という。”

“離乳の完了は、母乳または育児用ミルクを飲んでいない状態を意味するものではない。”

”WHOでは「Complementary Feeding」といい、いわゆる「補完食」と訳されることがある。”



とあり、一般に「離乳食」と言われて想起するような、乳離れをするための食事ではなく、かなりWHOの補完食に近い内容を指していることがわかります。

ですので、日本の離乳食も補完食も同じです。

......と言ってしまいたいのですが、残念ながらそうもいかない点がいくつかあります。例えば、従来の離乳食の本などを紐解きますと、最初に与えられるのは「10倍粥(米1に対し水10で炊いたお粥)」であることが多いです。しかし10倍粥は、補完食の観点では「薄すぎる」と表現されます。
赤ちゃんの胃の大きさは体重×30ml程度しかありません。そのため、薄く水っぽいお粥だと、水分で胃がいっぱいになってしまい、必要な栄養素を補うことができなくなってしまいます。
そのため、母乳やミルクよりも「濃い」お粥を食べさせてあげる必要が出てきます。母乳やミルクよりも「濃い」のは、”スプーンを傾けても滴り落ちずにのっているくらいの濃さ”が目安で、エネルギー密度から計算すると、5倍粥(米1に対し水5で炊いたお粥、全粥)程度の濃さとなります。

他にも、「食材はこの順番でなくてはいけない」といった縛りがなく、それぞれのご家庭で手に入りやすい食材を工夫すればよい、という自由さも補完食の利点であり、離乳食と違う部分になるでしょう(もちろん、食中毒やアレルギーには注意が必要です)。

このように、補完食と離乳食は少々違う部分があります。


補完食と離乳食、どっちが正解なの?

補完食は従来の離乳食を否定するものではなく、そして、離乳食とかけ離れた全く別のもの、というわけでもありません。
十倍粥を例に取ったように、補完食は理論的で、一旦理解してしまえば従来の離乳食を少しアレンジするだけで実践することが可能です。
そもそも、赤ちゃんに不足しがちな栄養素は、(当然ですが)補完食でも離乳食でも共通しています。

離乳食も補完食も、その目標は「赤ちゃんが元気に成長して、家族と食卓を囲んで同じものを一緒に食べる」ではないかと私は思っています。

離乳食と補完食。少し道筋が違う部分はありますが、どちらが正解、どちらが誤りというものではありません。目標を思い出しながら、無理なくご家庭にあったやり方で進めてみてはいかがでしょうか。

今離乳食のやり方で進めているけど、ちょっと補完食の考え方も取り入れてみようかな。そんな風に気軽に取り組むことも可能です。
補完食に興味を持たれた方、WHOの資料や、教えてドクター!制作運営チームの補完食(離乳食)などを参考にどうぞ。拙書になりますが「赤ちゃんのための補完食入門(彩図社)」では、WHOの資料だけではわかりにくい部分を文献交えて解説していますので、必要な方はお手にとっていただけますと幸いです。

出典


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