2022/04/20
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赤ちゃんから始められるアレルギーの予防法

赤ちゃんから始められるアレルギーの予防法

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お子さんがまだ小さいご家庭では、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどアレルギー疾患を心配する方が少なくないと思います。多くの情報にあふれ、何をしたらよいかわからないと途方に暮れることも少なくありません。

今回は小児科医が誰にでもおすすめできるアレルギーの予防法について、以下の3つの段階にわけて解説します。

  1. 妊娠中
  2. 生後早期
  3. 離乳食の開始時期

実際の予防効果は、お子さんによっても変わります。赤ちゃんがいる生活は、とても忙しくて大変ですが、これならできそうと思っていただければ幸いです。


1. 妊娠中:準備

実は、妊娠中にできる子どものアレルギーを予防する方法は基本的にはありません。掃除を頑張っても、卵や牛乳などを控えても、お子さんのアレルギー予防にはあまり効果はないと考えられます。

乳酸菌などのプロバイオティクスや魚油などの不飽和脂肪酸、ビタミンDなどはアレルギーの予防効果が期待されています。しかし、今のところ推奨できるような結果は得られていません[1]。

妊娠中は家族の準備期間

お子さんが生まれた後は、時間をつくることが大変です。また、アレルギー以外にも心配なことが増えてきます。そのため、妊娠中の最も有効なアレルギー予防法は、生まれた後にできることを調べておくことです。


もちろん、ツイキュアで相談していただいても構いません。検索するのであれば「アレルギーポータル」という厚生労働省と日本アレルギー学会が運営するWebサイトがおすすめです。


また、禁煙も重要です。喫煙は、お子さんの喘息を増やすことが知られています。アレルギー以外にも、さまざまな悪影響があるため、この機会に禁煙を検討してみませんか。


2.生後早期:新生児期からやっておきたいスキンケア

新生児期からのスキンケアで、家族にアレルギー素因があるお子さんのアトピー性皮膚炎の発症を30-50%予防することが報告されています[2][3]。

誰にでも効果があるかは、まだはっきりとはされていません。しかし、入念な掃除や食事制限などの他に考えられる方法と比べ、安全性や期待される効果も大きいと思います。

ここでは、実際のスキンケア方法について解説しましょう。スキンケアとは洗浄と保湿を指します。アレルギーの予防では保湿がより大切です。

赤ちゃんのスキンケア

① 洗浄

赤ちゃんの体の洗い方は、出産したときに教えてもらいます。生後1か月くらいまでは沐浴、その後は問題がなければ、一緒に入浴も可能です。


ガーゼで洗うことを指導する所も少なくありませんが、なるべく手で泡を使ってやさしく洗いましょう。ガーゼは刺激が強く、肌を傷つけてしまう可能性も。首やわきなど、しわの部分に汚れがたまりやすいため、しわの内側まで泡が届くようにもみ洗いをします。顔や陰部をどう洗うか悩まれる方もいますが、大人と同じように汚れは泡でやさしく落とすことが大切です。


洗った後は、しっかりとシャワーで泡をすすぎましょう。すすぎ残しは肌荒れのもとです。すすいだ後は、タオルでやさしく押し拭きます。ゴシゴシ拭くと、肌のバリア機能を弱めてしまう可能性があるので注意してください。


② 保湿

最近は、保湿されている方がとても増えていますね。検診においても、保湿ができているお子さんは湿疹が少ない印象です。ただ、不十分な方も少なくありません。保湿のコツを紹介します。


保湿のコツは3つあります。


  1. テカテカし肌にティッシュがくっつく程度にたっぷりと厚くぬる
  2. 入浴後と余裕のあるタイミングに1日2回ぬる
  3. 保湿成分の含まれた保湿剤(モイスチャライザー)を使用する


保湿剤は、ボディーオイルや食べ物の成分が含まれるものは避けた方がよいです。基本的にぬりやすいもので構いません。個人的には、乳液タイプでポンプ式のものが使いやすくておすすめです。


3.離乳食の開始時期:食物アレルギーを意識した離乳食の進め方

食物アレルギーが心配な方は多いですよね。離乳食は自治体や病院の指導にそって、少量からゆっくり始めることが基本です。ただ、少しポイントを知っておくだけで予防と安心につながります。

① 食物アレルギーの原因食物はそれほど多くない

乳児の食物アレルギーは、卵・牛乳・小麦がほとんどです。他の食物が原因にならないわけではありませんが、リスクはあまり高くありません。

② 食べ始めを遅くすることはすすめられない

食物アレルギーは、食べ始めが早いから起こるわけではありません。以前は、アレルギーを起こしやすい食べ物は遅く始めることがすすめられましたが、その後の研究で方針が変わりました。最近では卵を離乳食初期に開始するなど、遅くしすぎないことがすすめられています。[4]

③ 家族が食べて、お子さんが食べられないものに注意

食物アレルギーは、口にしなくても環境中にある食べ物がリスクになることも。例えば、ピーナッツやナッツ類のアレルギーです。お子さんが食べていないとしても、周りで食べることで成分が肌に付着し、アレルギーがつくられることがあります。これを経皮(けいひ)感作と呼び、特に肌が荒れているとリスクが上がります。しかし、家族内での環境を見直すことで予防につながります。お子さんが食べられないものは控えめにするか、食べ始め方を医師に相談しましょう。


まとめ

この記事では、赤ちゃんから始められるアレルギーの予防法を解説しました。


ポイントは以下の3つです。

① 妊娠中は情報収集

② 新生児期からのスキンケア

③ 離乳食の開始は遅くしすぎないこと


さまざまな情報に悩まされることもあるかと思いますが、ご心配な方は小児科にご相談ください。


参考文献

[1] 小児のアレルギー疾患保健指導の手引き

[2] Horimukai K, et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 2014,134: 824-830

[3]Simpson EL, et al. Emollient enhancement of the skin barrier from birth offers effective atopic dermatitis prevention.J Allergy Clin Immunol. 2014, 134: 818-823

[4] 成田雅美. 食物アレルギーの観点からの授乳・離乳の支援. 臨床栄養. 2019, 135(3): 302-307


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小児科専門医です。専門はアレルギーですが、小児に関することは幅広く診療しています。何かしらお力になれれば幸いです。