2023/02/15
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【リエゾンとは その1】それは病気の子どもを支える大事な仕事

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【はじめに】

2023年1月から《リエゾン》というタイトルのドラマが始まりました.

子どもの心に寄り添い, お父さんとお母さんを支える児童精神科医が主人公のお話です.


ドラマの中で,出てくる子どもは発達障害を抱えている場合が多いようです.



ただ実際に病院で働いている立場からすると,

この《リエゾン》というタイトルに少しだけ違和感があります.

病院で【リエゾン】というと,違う意味で使われています.


そこで今回は,

・リエゾンって何?

・病気の子どもの心の世界

・病気になった子どもと小児科医のやりとり

について解説していきたいと思います.


実際に僕は大学病院で, 子どもの心のサポートチームとして,

たくさんの重い病気を抱える子ども達の話を聞いてきました.


もし,

今現在,お子さんが病気を抱えている親御さん

・病気を抱えている友達がいる方

・病気を抱えているお子さんやご家族を支えたい

そんな方がいたら,この記事を読んでもらえたらと思います.



【リエゾンって何?】

実際の病院で【リエゾン】と言った時,それは


【病気になった患者さんの心のサポート】を意味します.


重い病気になるということは, その人の人生が変わる体験です.


そして家族の中で重い病気になった人がいれば,その家族全員の人生が変わるのです.


仮想のcaseで病気になった子どもとその家族の現実について解説していきたいと思います.


【病気になった子どものサポート】


あなたは小児科の当直医です.

こんな子がいたら,あなたはこの子とどのように向き合いますか?


患者さんは11歳のKくん

診断は【白血病, 再発】です.


看護師Nsさんから相談がありました.

Ns「先生, 白血病再発のKくんなんですが, 大事な白血病の薬を飲んでくれません.」

「先生からも説得してもらえないでしょうか?」


当直医のあなたはKくんのところに行きました.


あなた

 「Kくん,こんばんは,ちょっといいかな?」

「お薬を飲んでない,って聞いたんだけど,,,」

「大事なお薬だから,,,飲んだ方がいいと思うんだけど,,,」


Kくん

 「,,, 別に」


あなた

 「本当に大事な薬なんだよ??」

「ちゃんと分かってるかな?」


Kくん

 「分かってるよ. でも,もういいんだよ.」


あなた

 「もういいってどういうこと?」


Kくん

「僕は前に担当だった, 田中先生に

 『この治療を頑張ったら, Kくんが好きなサッカーがまたできるよ』

『治療は嫌なことがあると思うけど, 一緒に頑張ろう.』

そう言われたんだよ.」


 「でも,僕はまたここにいるよね.」

「もう知っているんだよ, 薬飲んだって治んないんでしょ?」

「気持ち悪くなったり, 髪が抜けるんなら,薬はも飲みたくない」


こう言われたら, 【あなたはKくんに何と答えますか?】

これはとても難しい,答えのない問いです.



そうです.

Kくんはワガママで薬を飲まないわけでも,

薬の重要性が分からないから薬を飲まないわけでもないのです.


自分の人生,自分の命を諦めかけているから,「薬を飲みたくない」と言っているのです.


これは子どものSOSです.


Kくんは自分が薬を飲まないせいで,看護師さんや小児科医,

そして自分のお母さんやお父さんを困らせていることを知っています.


自分が入院しているためにお母さんやお父さんの負担が増えていることを知っています.

11歳なら言われていなくても分かるのです.


自分が大好きなお母さん, お父さんの迷惑になっている.

そんな苦しさが, もう消えてしまいたいという思いになって,

「薬を飲みたくない」というセリフに表されているのかもしれません.


小児科医はそんな子どもの気持ちに向き合うのです.


改めて聞きます.

あなたはKくんに何と答えますか?


この答えのない問いに僕たちは悩み続けなければいけないのです.



答えではありませんが僕なら,こう答えると思います.

『ごめんね,Kくんは僕たちを信じて,

僕たちのいうことを聞いて治療をすれば治る,

そう思って頑張ってくれたのに, 君の頑張りに答えられなくて本当にごめんなさい.


本当にごめんなさい.


でも,でも僕は諦めてほしくない.

 こんなに頑張っているKくんにまだ頑張れっていうのはすごく酷いことだと思う.

でも諦めてほしくない.

もう一回, 一緒に頑張ってくれないかな?

 一緒に頑張ろうよ』


この言葉でK君をはじめとした子どもたちが

・もう一回頑張ろう, って思うか?

・ほっといてくれ?って思うか.


それはわかりません.でも僕たち小児科医は, ベストを尽くすしかないのです.


【最後に】

病気を抱える子どもは自分について, 自分を見ている家族について,よく考えています.

そして,誰にも相談できず, 一人で悩んでいます.


大切な家族だから, 大好きなお母さん, お父さんだから,

「困らせてはいけない」と思い, 話せなくなってしまうのです.


そんな病気を抱える子どもの心を支えるのが小児科医の仕事で,

その仕事のことを【リエゾン】と言います.


僕はこのリエゾンを専門として病院で働いていますし,

この仕事に やりがい を感じているのです.


今も病気を抱え治療を頑張っている子がいます.

そしてそこの子を支える親御さんと医療者がいます.


心の中でエールを送ってもらえたら,

街中で, 手を貸して頂けたら,と思います.


ここまで読んでくださって, 本当にありがとうございました🌟


【リエゾンとは その2】〜母親編〜我が子が病気になるということ

↑続きはこちらから↑


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※この記事に書いてある登場人物は架空の人物です.

でも, この記事の中にあるやりとりは,

僕が小児科医としてリアルに体験したやりとりをもとに作られていて,

そう意味ではとてもリアルなのです.

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