2023/02/17
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【リエゾンとは その2】〜母親編〜我が子が病気になるということ

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【はじめに】

大学病院は

重い病気を抱える子ども・家族が治療を行う場所であり,

医学生や研修医をはじめとした若い医療者に教育を提供する場所でもあります.


そんな場所でリエゾンを行う小児科医として働く=Dr.NK=

・子どもが病気になるということ

・病気が子どもや家族に与える影響

・病気を抱える子ども・家族の心の世界

について書いた記事です.


今回は

【母親編】です.


我が子が病気になる, それはお母さんにとって

・どんな体験

・どんな影響を及ぼすのでしょうか?


子どもと一緒に一喜一憂しながら頑張っているんじゃないか?

そんなことを思う想像するかもしれません.


でも, 実際の親子の世界はそこまで単純でも,美しくもなく

とても生々しいものなのです.


【母親として, 我が子が重い病気になる】ということはどのような体験なのでしょうか?


この記事を読んで,病気を抱える親子の現実, 心の世界を少しでも理解し,

そんな状況に陥っている親子に手を差し伸べていただけたらな, と思います.


この記事は

<【リエゾンとは】それは病気の子どもを支える大事な仕事>

の続きの記事です.

もし<その1>を読んでいない方は下記リンクから記事を読んで戻ってきていただければと思います.

https://twicure.com/articles/24


【我が子が重い病気にかかるということ】

あなたはKくん(11歳)のお母さんです


1年前の夏, 息子のKくんの白血病がわかりました.

Kくんの食欲がなくなり, 顔色が悪くなっていったのです.

最初は気のせいかな, と思いましが,

症状が悪くなっているような気がしたため,近所の小児科に行きました.


そこの先生には

「暑さでちょっと脱水なのかもしれないね, 少し水分を多めにとりましょう」

と言われました.


しかし,2週間経っても,症状は良くならず,

改めて近所の小児科に受診しました.


症状が続いていること, 何よりKくんの顔色がさらに悪化していることを

小児科の先生も懸念し,大学病院に受診することになりました.


診断は【白血病】でした.


抗がん剤の内服を含めた,治療を行うことになり,

母親のあなたも最初の3週間は一緒に病院に泊まって付き添いました.


初期治療はうまく行き, 8か月たった春には退院できました.


しかし, 退院から3か月程経ったタイミングで行った診察で

再発していることがわかりました.


Kくんはその日から入院.

あなたも面会のために病院にくる生活が再び始まりました.


そんな面会にきたある日,Kくんの担当医の先生に呼び止められました.


先生

「お母さん, ちょっとすみません. お話があります」

「昨日のことなんですが, Kくんが抗がん剤の薬を飲みたくないと言いました.」

「最終的には薬を飲んでくれましたが

『今日だけ, 明日からは絶対に飲まない』

そう言っています.」

「大事なことなので, 共有させていただきました.」


そんな説明を受けました.


◆お母さんである, あなたはどんな気持ちですか?

◆Kくんに会って, どのように接しますか?

◆どんな話をしますか?


これはすごく難しい問いです.


「なんで薬を飲まないんだろう.」

「薬を飲まないことでKが死んだらどうしよう.」

「薬の重要性をわかっていないのかしら?」

「先生から聞いたことをKと話すべきか, 話題をそらすべきなのか?」


あなたはそんなことを考えながら,

それでも面会を待つKくんのところに行かなければいけません.


お母さんを待っていたKくんも, お母さんの表情がいつもと違うことはすぐにわかります.

そして, そのお母さんの変化が昨晩, 自分が薬を飲みたくないと言ったことに関係していること,

そのことも分かっているのです.


そんなお母さんと過ごすことに耐えられないKくんはお母さんに対してこう言います.


K

「お母さん, 今日, 帰っていいよ.」

「別に困ってないし.」

「小児科の○○先生と一緒にゲームする約束しているから.」


改めて聞きます.

◆お母さんである, あなたはどんな気持ちですか?

◆Kくんにどのように接しますか?

◆どんな話をしますか?


お母さんによっては,

「あなた分かっているの?この薬飲まないと死んじゃうのよ?」と怒るかもしれません.

「もう好きにしなさい」そう言って帰ってしまうかもしれません.

もうどうしたらいいか分からなくて, 涙が溢れてしまうかもしれません.



そうです,

我が子が大きな病いにかかるということは,

母親にとって余裕を失うことですし, どうしていいかわからないことなのです.


お母さんが怒ったとしても,

お母さんがKくんと向き合えず帰ってしまっても

涙が止まらなくなってしまったとしても,


【お母さんが悪いわけではない】んです.

もちろん【病気になった子どものKくんが悪いわけでもない】んです.


でもこれだけ病気になるということは思いことで,

親子の関係を変えてしまうのです.



Kくんとお母さん, どっちも支えてあげたいですよね.

その【親子を支える仕事がリエゾンという仕事】なのです.


お母さんにはKくんと離れる時間と場所が必要です.

そこで

・我が子が白血病になったこと, 再発したこと

・運命を呪いたい気持ち

・Kくんに帰って欲しいと言われた苦しさ

お母さんの気持ちをありのままに話してもらいます.

聞いているこちらが苦しくなる, そんなやりとりです.


その上で

・Kくんが薬を飲みたくないと言うのは自然な気持ちであること

・「薬を飲んだ」と言って薬を捨てたりせず, 「薬を飲みたくない」と言うのはKくんの心のSOSであること

・Kくんは自分にとって大切なお母さんに迷惑をかけていると感じているから帰って欲しいと言っていること


話せば全て解決するわけではありません.

それでも, お母さんが苦しさを吐き出すことで息子の苦しさに気がつき, Kくんの苦しさをもう一度引き受けることができる時があって,

Kくんもそれを待っているのです.


そうやって命の危機に直面する毎日を1日, 1日, 生き延びていくのです.


【最後に】

母親編, 読んでいただいてありがとうございました.


我が子が重い病気になる, ということはとても重く苦しい体験です.

これは誰にでも起きうることなのです.


我が子が病気になったお母さんは誰にも相談できなくなってしまう場合があります.

ママ友にも簡単には話せないことなんです.


話が重すぎるし, 相手にどう思われるかもわからないからです.


お母さんの負担が増えればそれは親子関係に影響し,

子どもの心にも大きな影響を与えます.


もし今, まさにお子さんが入院していて,

「どうしたらいいかわからない」

「誰にも相談できない」


そう思っているお母さんがいたら,


勇気を出して

主治医, 病棟のスタッフに相談してください.


そして, もし周りにそういうお母さんがいたら,

ぜひ力を貸してあげてください.

それがそのお母さんとお子さんを少しだけ救います.


その少しの救いが必要なんです.


もし誰にも相談できない, 力を貸してあげたいけどどうしたらいいか分からない,

そう思っている方がいたら,

僕にご相談いただければと思います.


ここまで読んでくださって, 本当にありがとうございました🌟

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※この記事に書いてある登場人物は架空の人物です.

でも, この記事の中にあるやりとりは, 

   僕が小児科医としてリアルに体験したやりとりをもとに作られていて,

そう意味ではある意味とてもリアルです.

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•小児の心身症
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【公認心理師】の資格も保有してます.

3次救急を行っている当直医としても働いています.
お産の立ち会いにおける新生児の蘇生, けいれん, 呼吸器感染症, 喘息, 胃腸炎の対応なども行っています.

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