指名:akina 先生

還元水飴などの糖アルコールについて

10歳未満男性

いつもありがとうございます。

糖について検索していたところ、還元水飴が糖アルコールということを知りました。

キシリトール、マルチトール(還元麦芽糖水飴)、還元水飴、ソルビトールなどの糖アルコールは虫歯の原因菌の餌にはならないのでしょうか?

ベビーフードに還元水飴と書いてあるのを見たときに避けていましたが、砂糖・ブドウ糖・果糖・黒糖・麦芽糖の類とは別と考えて「糖アルコールは虫歯にはなりにくい甘味料」として考えていいですか?

キシリトール以外の糖アルコール、フラクトオリゴ糖は虫歯になりにくいとききますが、その他にも虫歯になりにくいと考えられる糖がありましたら併せてご回答いただけますと幸いです

よろしくお願いします

回答済み

歯科

ご質問ありがとうございます。


ベビーフードの原材料名のところまでしっかり見て判断されていて素晴らしいと思います。


結論からお伝えしますと、

「糖アルコールはむし歯になりにくい甘味料と考えて良いと思います。ただ、”むし歯にならない”と断言は出来ませんし、

むし歯以外の影響もあるでしょうから、その点は気をつけて頂ければと思います。」


結論はこのようになりますが、

「だったら、なんで歯医者は糖アルコールをもっと積極的にすすめないんだ!?」

という1つ大きな疑問が出てくると思います。

その疑問は、この後、結論に至るまでの、研究の話と考え方を解説してますので、それを読んで頂ければご理解頂けるように思います。

また、糖アルコール以外の甘味料についても解説で触れます。


さて、今回たくさん似たような名前の甘味料が出てきますので、最初に整理しておきます。

今回お話の中に出てくる甘味料は大きく3つに分かれて以下のようになります。

1.糖アルコール

キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、還元水飴、還元パラチノース(イソマルチトール)

2.非糖質系甘味料

ステビア、グリチルリチン、アスパルテーム、アセサルファムK、サッカリン、ズルチン、サイクラミン酸ナトリウム

3.オリゴ糖

フラクトオリゴ糖


この3つを順に説明してから、まとめていきます。



糖アルコールについて

まず、糖アルコールについてです。糖アルコールの解説は主にこちらの文献を元にしています。

https://www.nature.com/articles/sj.bdj.2011.823


糖アルコールの中で最も研究されているのは、何と言ってもキシリトールです。

キシリトールは「むし歯になりにくい」を越えて「むし歯予防になるか?」という点が研究されていて、ある条件下ではある程度の効果がありそうと言えそうです。

詳しくはこちらの記事を参照して下さい。→https://note.com/moody_dent_info/n/n9b329dfd74d2


次にソルビトールですが、ソルビトールはコストが低いので、アメリカで最も使用されている糖アルコールだそうです。

しかし、その「むし歯になりにくいかどうか」については、わずか数件の臨床研究(実際の人間での実験)しか行われていません。

ただ、行われた研究では砂糖のガムを噛むよりもソルビトールで甘みをつけたガムのほうがむし歯の原因になりにくかったようです。

また、「糖アルコールはむし歯の原因菌の餌にならない」というような解説が多くみられますが、ソルビトールやマンニトールは口の中の微生物の餌になって、発酵する可能性があるようです。


ラクチトールマルチトールは主に動物実験で試験されており、むし歯の減少傾向が見られたそうです。ただ、人間はねずみではないので、そのまま人間に適応できるかは疑問です。

エリスリトールは近年注目されており、キシリトールと比較しても良好な結果が出ていたりしますが、まだ検証中の印象です。(注1

総じて、研究が十分とは言えないながらも、口の中の細菌が砂糖よりも利用しにくいという点では合意が取れている一方で、

無糖のキャンディーや飲料に含まれる酸の影響はまだ広く研究されておらず、注意が必要です。

むし歯とは違い、酸蝕症と呼ばれる病気になる可能性が指摘されています。

また、胃への障害や、浸透圧性下痢など、糖アルコールの身体全体の影響もあるので、その点も注意が必要です。


非糖質系甘味料について

非糖質系甘味料についてです。非糖質系甘味料の解説は主にこちらの文献を元にしています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37272146/


サッカリン、アスパルテーム、スクラロースは動物実験でのむし歯抑制効果が見られています。

アセスルファムKは単独では効果が弱くサッカリンなどとの併用が望ましいそうです。

サイクラミン酸ナトリウムはむし歯になりにくい可能性が示唆されるにとどまっているようです。


以上のように非糖質系甘味料もむし歯のリスクは低減されそうだと予想されるものの、特に長期的な影響の調査などが十分ではないようです。


フルクトオリゴ糖について

フルクトオリゴ糖がむし歯になりにくいという情報はたしかにありますが、それらしい研究は見つけられませんでした。


トクホマーク

以上のように糖アルコールや非糖質系甘味料として一括りで研究されるというよりも、個別の成分で研究されるので、

やはり個別の成分で評価したほうが良さそうですが、それぞれの商品を吟味するのは大変なので、マークがついています。

科学的根拠を示して、有効性や安全性の審査を受けると、特定保健用食品としての認可を受けることが出来ます。

認可を受けた食品はマークを掲載して販売することになります。

むし歯に関連するものとしては、「虫歯の原因になりにくい」および「歯の健康維持に役立つ」という文言で認可を受けることが出来ます。

甘味料に絞ると

「虫歯の原因になりにくい」には

パラチノース(スクロース異性体で糖アルコールではなく、口腔内細菌の餌に多少はなる)

マルチトール(糖アルコール)

キシリトール(糖アルコール)

エリスリトール(糖アルコール)

「歯の健康維持に役立つ」には

キシリトール(糖アルコール)

還元パラチノース(糖アルコール)

が含まれています。

最新の許可された商品一覧を確認してみました(令和5年10月30日更新データ)。

上記の成分を含む商品は全部で23品、そのほとんどはキシリトール入りのガムなので、それを除くとたった6品

意外ですよね。もっとあると私も思っていました。

6品くらいだったら書き出そうかなと思います。(特別勧める意図はありません)

ワンツーペロティ(パラチノース)(チョコレート)

ナチュラブ(マルチトール、パラチノース)(チョコレート)

クロスタニンキャンディ(マルチトール)(キャンデー類)

キシリトール・タブレット<オレンジ>(キシリトール)(錠菓)

キシリトール・タブレット<グレープ>~略~

キシリトール・タブレット<ストロベリー>~略~

このあたりであれば、ある程度信頼して口にして頂けるように思います。

注意事項や摂取目安量も、トクホのマークがついている商品には書いてあるので安心です。


まとめ

甘味料の臨床研究は、むし歯を誘発させてしまう恐れもあって、なかなか倫理的に難しい面があるようです。

なので、臨床研究がほとんどない=エビデンスが弱い・ないということで、「むし歯になりにくい」と言い切るのも、実際は結構難しいのです。

それに加えて、全身への影響、特に長期的なものに関しては分からないことが多いです。

ですので、歯科医師としてはエビデンスが強い、

・一日2回フッ化物配合歯磨剤で歯を磨く事

・間食の回数を減らすこと

・遊離糖の総量を減らすこと

などを優先順位の上の方に持ってくることが多いと思います。


なにか参考になりましたら、幸いです。

akina先生、いつもいつもありがとうございます。この度は貴重なお時間を長時間割いてご回答くださり心より感謝申しあげます。

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2023年11月09日 17時45分


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はじめまして。
普段の診療は、むし歯治療、歯周病治療、審美修復、入れ歯、インプラント、矯正治療、ホワイトニングなどを扱っています。
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