予防接種をしているのに罹患する事が続いています
10代 男性
2015年生まれで現在10歳の男児についてご相談させてください。
定期予防接種はすべて接種済みで、これまで接種漏れはありません。
しかし、2025年2月に水ぼうそう、同年8月におたふくかぜに罹患しました。症状はいずれも発熱はなく、水ぼうそうは発疹のみで、おたふくかぜの腫れは片側のみでした。診断は視診と触診で、血液検査などは行っていません。
予防接種を受けていたにもかかわらず、同一年内に続けて発症したことを心配しております。息子は抗体がつきにくい体質なのではないか、あるいは何らかの理由で一度獲得した抗体が失われてしまったのではないかと不安に感じています(2022年に新型コロナウイルス感染症に罹患しています)。
また、インフルエンザワクチンも毎年接種しておりますが、ここ3年連続でインフルエンザに罹患しています。ワクチンが感染そのものを完全に防ぐものではないことは理解しておりますが、同じ環境で生活している3歳下の弟は、ここ6年ほどインフルエンザに罹患しておらず、水ぼうそうやおたふくかぜも弟にはうつりませんでした。長男だけ感染が続いていることも、不安を感じる理由の一つです。
居住地は観光地で外国人旅行者が多く、また外国籍の住民も多い地域です。最近、麻疹の発生が続いており、そこも心配です。
私の心配は過剰でしょうか。
抗体検査などを検討したほうがよいのか、それとも現時点では特別な対応は不要なのでしょうか。
ご助言をいただけますと幸いです。
回答済み
返答が非常に遅くなってしまい誠に申し訳ありませんでした。ご指名でのご相談をいただき、ありがとうございます。
現在10歳のお子さんで定期予防接種は全て完了しているにも関わらず、昨年水ぼうそうとおたふくに罹り、インフルエンザも予防接種をしていても3年連続感染してしまっている。弟は感染していないことからも抗体がつきにくい体質なのか、何らかの要因で抗体が失われてしまったのではないかと心配だというご相談ですね。
確かに1年の間で水ぼうそう、おたふく、インフルエンザに感染したというのは10歳のお子さんにとってとても大変だったかと思います。また、ご不安になられるお気持ちもよくわかります。
はじめに総じての印象としては、ある程度は仕方ない範疇かなぁとは思われました。現時点で免疫関係の評価をする必要性は低いように感じますが、以下それぞれの解釈について説明させていただきます。
(申し訳ありませんが少し長いです)
まず、水ぼうそうですが、こちらは近年散発的な流行が見られています。特徴として1〜3歳など低年齢のお子さんでは珍しく、発症者はだいたい9〜12歳くらいに多いです。ワクチン接種済で発症しているお子さんを私自身も多数みました。
理由はいくつか想定されていますが、主に
① 水ぼうそうワクチンの接種間隔による問題:水ぼうそうワクチンは2回接種しますが、MRやおたふくと異なり、3〜6か月くらいの短い間隔で接種します。
これは流行している場合に一気に感染を減らすために有用といわれていますが、長期的には効果が減弱する可能性が否定できません。だからこそ効果が減弱した小学生以降での発症が多いのかなと考えられています(MR・おたふくは1歳と年長の2回接種なので4〜5年あきます)。
② コロナ以降感染機会が極端に減って、免疫のブーストがかからなくなった:コロナ期の感染対策の効果で良くも悪くも小児科医でも数年水ぼうそうを見ませんでした。平時なら水ぼうそうにかかった子と触れることで、免疫が軽く復習をしていたものが、関わる機会がないことで復習できない状態が続いたと考えられています。
この2つが考慮されます。ただ、現実的に感染しても重症化はおおむね予防できていると思います。
もともと水ぼうそうは白血病や免疫疾患などで免疫が弱くなっているときの感染がかなりリスクが高いものですので、感染して困るものではありますが、健康な状態であれば、これで免疫にブーストがかかったという見方もできると思います。
次におたふくかぜについてですが、こちらは水ぼうそうと比べると平時より明らかに増えているという感じはありませんが、そもそも任意接種でワクチン供給の問題もあり、接種率30〜40%と高くはないため十分に感染を抑えきれるレベルではありません。
おたふくかぜのワクチンは2回接種できていれば90%近い予防効果があり、接種の間隔もある程度あるため効果が落ちて軽く感染するようなこともあまりありません。
どちらかというとおたふくの場合は診断があっているかどうかが難しいところです。
おたふくかぜと同じような症状を起こすものに反復性耳下腺炎という病気があります。エコーや血液検査で判断は可能ですが、検査なしでは判断は困難です。そのため1回目は暫定的におたふく扱いで、繰り返す場合に反復性耳下腺炎と扱う傾向があります。
地域で明らかな流行がある場合にはある程度正しい診断ができていると思いますが、単発で耳下腺が腫れたという場合に、実は反復性耳下腺炎でおたふくではなかったということは少なからずあります。
そのため、おたふくに関しては抗体の問題なのかは判断が難しいところです。
最後にインフルエンザについてですが、こちらは医療者もそうですが、しっかり予防接種をしていても発症予防の効果は決して高くはないため、残念ながら発症してしまうことはちょこちょこあります。
こちらは入院に至るような重症化の予防が期待される効果の主体ですので、入院には至らずに済んだと考えるしかないのかなぁと思います。(私自身も2~3年に1度くらいかかってしまうので、もっと高い効果の予防がしたいところではあります……)
上記のため、同じような感染を起こしてしまったというお子さんは少なからずおります。もちろんどれも感染しないで済めばよりよいのですが、仕方がない範疇ではあるのかなぁと思いました。
弟さんとの比較も確かに気になるところではありますが、感染症はマスクや手洗いなどの対策レベル、顔を触ったりしないか、人との距離が近いか、アレルギーはあるかなど様々な要因で変化しますので、弟さんのライフスタイルが少し予防的に強いのかもしれません。
なお、麻疹は予防接種の効果はとても高く、抗体価が下がっていても通常は2回接種できていれば問題はないとされています。確かにある程度濃厚に接触した場合には予防接種後でもかかってしまうことはありえます。ただ、通常は予防接種後の麻疹感染は修飾麻疹といって非典型的な軽い症状で済むことがほとんどで、合併症のリスクも非常に低いです。
上記のため、ご相談者さまが不安になるお気持ちはよくわかりますし、過度な不安ということではないかなと思います。ただ、現時点で特別な対応は不要ではないかなあと考えます。
ただ、もしいずれの感染でも例えば入院が必要だったなどある程度重症化してしまっていたなどある場合には改めて相談は必要かもしれません。
2026年03月23日 17時52分