指名:相川晴(HAL) 先生

9ヶ月〜のタンパク質摂取目安について

10歳未満女性

いつもTwitterを拝見しております。
完母で育てている娘の離乳食を始めるにあたり、できるだけ栄養面を補ってあげたく資料を探しているうちに先生の補完食本に行きつきました。
先生の本をベースに補完食ですすめていますが、タンパク質の摂取量について疑問がわいたので質問させてください。

厚生労働省の資料では9-11ヶ月児は母乳以外に17.9g/日のタンパク質を摂取、と読み取れるのですが、巷ではこの頃の1食の肉・魚の目安は15gと言われています。
毎食お肉を15g食べたとしても、45gのお肉ではタンパク質が足りないんじゃないかなと思っています。
しかし、

・タンパク質の摂りすぎは胃腸に負担
・タンパク質を摂り過ぎると肝臓や腎臓に負担
・日本人は農耕民族だから海外の人と食生活を同じように当てはめないほうがいい(肉食は向いてない?)
・タンパク質を摂り過ぎると歯が大きくなる(歯並びに影響する)

などと言われ、多めに与えることに対して否定的な意見が多い気がします。
このあたりの根拠(なぜ1回につき15gまでなのか)(上記の意見は医学的根拠があるのか)を教えていただけると嬉しいです。

と、いうのも、実は我が子、補完食で離乳食を始めたのはいいものの少食で量を食べられず。また、嚥下の機能が発達してきたのも少し遅めで最近やっと上手に飲み込めるようになってきたばかり。炭水化物は苦手らしく、お米やパンなどは嫌がってほとんど食べません。甘みのある野菜(かぼちゃやさつまいも、じゃがいもなど)も食感が嫌なのか飲み込みません。逆にひき肉と豆腐を混ぜたハンバーグのタネみたいなものは上手に食べてくれます。1回で食べられる量が60-80gくらいなんですが、ハンバーグだけで40gくらい食べることもあり、本人の好みに任せてお肉ばかり与えていいのだろうか?
(補完食で離乳食を始めた頃から従来の方法と違うからあなたの娘は食べないんだ! 等々批判を受けていて、ちょっと疲弊しています)
もちろん、バランスよく食べてくれるのが一番なんですが、5ヶ月半からひたすら食べない娘と頑張ってきて、やっと好きで食べられるを見つけられた、というのもあり、1回15gに減らしてしまうと他に食べられるものが少なくなってしまうな、とも思っているところです。

どうぞよろしくお願いします。

ご質問ありがとうございます。本も読んでくださってありがとうございます!


さて、タンパク質の摂取量についてのご質問ですね。

ちょっと全部の疑問に答えるには私の時間が足りず、一部を取り出してお答えいたします。またわからない部分やあらためて知りたい部分があればご質問ください(特に巷の噂部分は調べるのがかなり大変なので、今回は回答できておりません。)



授乳離乳のガイドの目安量をどう決めたか、2019年のものもその前の議事録や資料をさらったのですが、はっきりどこで決まったのか書かれていませんでした。おそらく食事バランスガイドを元にしているんじゃないかと思うのですが……(こちらの議事録もちらりと見ましたが、それぞれの策定根拠を見つけることはできませんでした)


タンパク質の量については、このへん大変ややこしいんですが、日本人の食事摂取基準のタンパク質の量は、平均的な離乳食の内容から計算した量+母乳・ミルク中のタンパク質の量を加えた量になっています。なので目安量です。本当に必要な量かはわからないけれども、まあこのくらい食べてる赤ちゃんはこれまで元気に育ってるからこのくらいの量でいいよね、という量です。これが乳児です。6-8ヶ月で15g(12.5g)、9-11ヶ月で25g(22.0g)になります(カッコ内は丸め処理を行う前の値)

質問者さまの書かれているのは、その平均的な離乳食の量の値になります。

1歳以降は目安量ではなく、計算で出されたものになります(こちら長くなるので割愛します)


さて、他の基準も見てみましょう。WHOの2007年の資料では、6ヶ月の赤ちゃんのたんぱく質摂取の必要量は1.12g/kg/日、1歳で0.95g/kg/日です。6ヶ月で8kgなら8.96g、1歳で9kgなら8.55gですね。

推奨量は6ヶ月で1.31g/kg/日、1歳で1.14g/kg/日、6ヶ月で8kgなら10.48g、1歳で9kgなら10.26gとなります。


アメリカはどうでしょう、アメリカの推奨栄養所要量は6-11ヶ月は11g、1-2歳は13gです。WHOの値に近いですね。


どれが正しいとは一概に言えないです。元になる根拠が異なっていたり、国民の体格その他も考慮されていますので。

ただ、上の基準を比較すると、もしかすると日本の9-11ヶ月の値はちょっと大きすぎるのかも? という気はします。調査されたのが1998年や2003年の離乳食の摂取状況で、この頃は1歳には母乳をやめなさいというような指導もされていた時期だったのではと思いますので、今と離乳食の量が違うのかもなと思ったりします。


ちなみに、補完食の本では、日本の基準が一番なじみやすいだろうと考えて日本の基準を使って計算しており、日本の授乳・離乳のガイドの目安量前後で満たせるかなとチャレンジしたメニュー例を出しています。が、後期のタンパク質はとても数値上補完できてないのがわかります。(初期中期、そして基準が変わる完了期はクリアできている)まあ鉄は言わずもがななんですが……


ということで、おそらくなんですが、母乳やミルクを無理に減らさず一定量飲んでいる状況であれば、1食肉や魚15gならWHOやアメリカの基準は満たせるのでは……と思いますし、WHOの書いている必要量(体が必要としていて、この量は摂取してほしい量)はクリアできると思います。


で、質問者さまが本当に心配なのは、少食であることとタンパク質を摂取しすぎてるんじゃないか、と言う部分なのかなと思います。個人差があり、目安量は目安量に過ぎないので、少々の食べ過ぎや食べないはあまり心配なさらなくて大丈夫ですよ。ハンバーグにしても、豆腐も使われているので、40gといっても大幅にオーバーしていることはないんじゃないでしょうか(豆腐は水分も多いので、結構たくさん食べてOK)。毎日3食同じメニューというのでなければ問題ないと思います。

少食さんなのに、食べられるものがあるのも素晴らしいし、とても工夫されていると思います。ハンバーグをのぞいた残り半分はなにかしら他のものを口にできているのも素晴らしいことです。

ハンバーグのようなものが食べられるようであれば、みじん切りかペーストにした野菜を少量ずつ加えて食べるか試してみたり、つなぎにオートミールやパン粉を混ぜ込んだら、少しバランスがよくなるかもしれません。いきなり大量に混ぜると警戒されるので、ほんのちょびっとからですね。ひき肉の種類も一部魚と置き換えたりしてもいいかもしれません。

少食さんなのは、補完食でも離乳食でも、多分関係なかろうかと思われてます。離乳食で育った長女も、補完食で育った次女も、驚くほどの少食でした(そして今も基本的に少食)。その子の性格だったり体質だったりする部分は大変大きいと思います。逆に少食さんや小さめさんであれば、補完食の方が少量で栄養をしっかり摂れるのでおすすめですよ。


というわけで、終着点の見えない回答になってしまって申し訳ありません。(調べたのですがわからない部分もあり、もしこれを見た方で回答をご存知の方がいたら教えてください。多分策定理由や歴史的な部分は管理栄養士さんとかの方が詳しいのではと思います)

回答しきれなかった部分は、また必要であれば改めてご質問ください。一部はこちらの回答も参考になるかもしれませんのでご参照ください。

https://twicure.com/questions/1220


少しでも参考になれば幸いです。


参考

https://www.dietaryguidelines.gov/sites/default/files/2021-03/Dietary_Guidelines_for_Americans-2020-2025.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf

https://apps.who.int/iris/handle/10665/43411

https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/

各種議事録

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2023年05月11日 14時00分


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