指名:akina 先生

むし歯予防について

10歳未満男性

日本口腔衛生学会の「乳幼児期における親との食器共有について」という発表のことで質問があります。

下記のことは、今後は「むし歯予防」の観点では気にしなくてオッケーということでしょうか?
(インフルエンザや他の感染症の予防という観点は抜きにした場合)

「乳幼児へ食べさせる熱い食べ物を冷ますために大人がフーフーする」
「親が噛みくだいたものを食べさせる」
「子どもにキスをする」
「子どもの正面で飛沫が飛ぶくらい大きな声で話したりくしゃみする」
「大人が使った、洗っていないスプーンを子どもが口に入れる」

「子どもが大人の口の中に手を入れてきて、大人の唾液が付着した手を自分の口に入れる」

ご回答おまちしております

回答済み

歯科

ご質問ありがとうございます。

お子さんの口腔の健康に気を使っておられて、素晴らしいと思います。


本題ですが、確かに、『乳幼児期における親との食器共有について』(参考文献1)には、

”食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。”

と書いてありますので、「気にしなくてもOK!」と受け取られるのも無理のないことかもしれません。

ですが、”気にしすぎる必要はありません”と”気にしなくても大丈夫”とは少しニュアンスが違うものになると思います。

この日本口腔衛生学会の発信を私なりに端的にまとめるなら、

「子どものむし歯予防の為には、食事と歯磨きとフッ化物を利用することの3点ですよ。食器の共有をしないことなんかよりもね」となると思います。


歯磨き自体のむし歯予防効果に関しては、私個人の意見とは多少ズレがあるにしても、発信内容は妥当だと思います。

”気にしすぎる必要はありません”の言葉のニュアンスを捉えるために、発信内容を少し詳しく見てみると、

”食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません。”とあります。

それを補強する材料として、日本での一つの研究が紹介されています。(参考文献2)

この研究から”3歳児において親との食器共有とう蝕(むし歯)との関連性は認められていません”となっていますが、ご存知かもしれませんが、研究においての「関連性は認められない」は「関連性がない」ではないのです。

つまり、

「関連性は認められない」≠「関連性がない」

「関連性は認められない」≒「関連性は不明」

なのです。実際にこの論文を詳しく読んでみると、「食器の共有を避けた」(原因)から「むし歯が出来た/出来なかった」(結果)のような、因果関係を示すことは出来ない研究方法ですし、

この論文一本で「食器の共有をしても、むし歯になるリスクは変わらないんや~!」と叫んで回るような事は出来ません。

ですので、日本口腔衛生学会の情報発信でも、その話をする前に

・「親からの口腔細菌の伝播が食器の共有の前から起こっている」

・「むし歯の原因菌はミュータンスレンサ球菌だけじゃない」

という話をして、食器の共有がむし歯との関連性が少ないであろうという蓋然性を高めているのです。

これをわかりやすく言い換えるなら、

「いやいや、そもそも常在細菌と同じで、食器の共有とかする前から勝手に親から子に伝わっとるもんやし、むし歯ってそもそも、何かの菌に感染したからなるってもんじゃないしな。」

みたいな感じでしょうか。

そのような背景から、

”気にしすぎる必要はありません”

という表現になっていると思います。今一度読んで頂くと、言葉のニュアンスに納得して頂けるのではないでしょうか?


繰り返しになりますが、優先順位の問題で、

むし歯予防には、食事(内容・摂り方)、フッ化物の利用が大事という点が、一般の方には特に伝わって欲しいなと思っております。

長くなりましたが、お子さんの健やかな成長を祈っております✨


参考文献1:https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20230901.pdf

参考文献2:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21576961/

5

2023年09月13日 11時21分


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普段の診療は、むし歯治療、歯周病治療、審美修復、入れ歯、インプラント、矯正治療、ホワイトニングなどを扱っています。
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