指名:akina 先生

重曹うがいについて

40代女性

飲食をすると口腔内が酸性にかたむいて歯が溶けるとのことですので、アルカリ性のものを口に入れて中和するといいのでは?と思っています

重曹うがいは虫歯予防に効果がありますか?
適切な濃度はどれくらいでしょうか

口腔内がアルカリ性にかたむくと歯石がつきやすいとの情報がありました。定期的に歯科にメンテナンスに行く人の場合、歯石がつくならつくほうがいい(口腔内がアルカリ性の時間が長いから虫歯になりにくい)とかんがえたらいいですか?

先日メンテナンスで歯石がついていないと聞いてよろこんでいましたが、もしかすると以前よりも口腔内が酸性にかたむいてるということなのかなとおもいました。

回答済み

歯科

ご質問ありがとうございます。

結論から述べると、

「重曹うがいのむし歯予防効果は分からないですが、薄いでしょう」

むし歯になると、歯が酸で溶けるというのは事実ですが、お酢とか酸性のものを食べ続けたりして歯が溶けるのとは違うってのは理解してもらえると思います。お酢とか酸性のもので歯が溶ける病気は、むし歯ではなく、”酸蝕症”って言ったりします。

「え~酸で溶けるのは一緒じゃん」と思うわけですが、

歯についた歯垢(プラーク)の中の細菌が→糖を食べて→酸を出して→歯を溶かす。

のと、

酸性のものが→歯を溶かす

とでは、ぜんぜん違うわけです。

話を戻して、酸蝕症の人が、酸性の飲み物を飲んだ直後に、アルカリ性で中和するのは、もしかすると効果があるかも知れませんが(※これも詳しく研究をみないと効果があるとは言えません)、むし歯予防として食後にアルカリ性の物でうがいしたところで、うがいの後でも、プラーク中の細菌は口の中に残っている糖を餌にせっせと酸を作るわけです。そうだとすると効果がなさそうです。

という架空のストーリーの話をしてみましたが、重曹うがいを勧めていない一番の理由は、「重曹うがいをすることでむし歯予防になるという強い科学的根拠(データ)を見たことがない」からです。

重曹は非常に低価格で入手も用意で、私達歯科医師からしても、「それで効果があれば」と思える材料です。ですので、常に注目はしてますが、結果が出ないというのが現状だと思います。

例えば、重曹うがいでプラークの量が減ってくれないかと期待して、リステリンと比べた研究もありますが、結果はリステリン共々効果が見られなかったりします。(※1)この研究だけで判断するわけではないですが、重曹うがいでむし歯予防になるという研究を探しても見つかりません。

一方で、「抗がん剤の副作用としての口腔内の炎症に対して、重曹うがいが効果がありそう」という研究(※2)はちらほらあったりするので、重曹うがい全てを否定するわけではありません。(抗がん剤の副作用の軽減に対する重曹うがいについては、詳しくないので、効果があるとか、ないとかをここでは議論しません)

ですが、むし歯予防に関して言うと、もっと明確に科学的根拠があるものから実践して頂くのが重要だと思いますし、どうしてもやってみたい場合は、担当の歯科医師と相談するのが良いと思います。一般的には勧めないというだけで、個々の先生が、それぞれの責任と判断のもと、個人に合わせた指導を否定するつもりもありませんので。


なにかの参考になれば幸いです。

※1:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23692975/

※2:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8994952/

1

2023年10月25日 14時33分


参考になりましたか?
ハートを贈りakina先生を
サポートしよう!

はじめまして。
普段の診療は、むし歯治療、歯周病治療、審美修復、入れ歯、インプラント、矯正治療、ホワイトニングなどを扱っています。
お気軽にご相談下さい。

相談一覧