指名:おとらりんたろう, MD, PhD 先生

医師による異なる中耳炎の診断について

10歳未満女性

1歳5ヶ月の娘が中耳炎で通院していたのですが、病院によって診断が違った場合、何を基準に判断したらよいか、ご意見を伺いたく投稿させてもらいました。

経緯
①お盆前に風邪からの軽い中耳炎とA病院で診断され、お盆明けにまたきてくださいということで、抗ヒスタミン剤とムコダインを処方。

②翌日、異常に機嫌が悪く、A病院がお休みだった為、B病院を受診し、急性中耳炎と診断。オゼックスを5日間処方→2日ほどで治る。

③暫くしてペンが喉に刺さったかも?ということで、B病院を受診。特に怪我をしている形跡はないが、念のためということでオゼックスを処方。

④1週間後に再び風邪からの急性中耳炎とB病院で診断され同じ薬が処方。(薬は受け取っていないです)

同じ月に抗生剤を3回飲むのが不安になったため、次の日にA病院を受診したところ中耳炎ではないとの診断でした。

⑤念のため1週間後にC病院を受診したところ問題ないとのことでした。経緯を話した際に、急性中耳炎で薬の処方なしで1週間後に治ることはあまりないので、A病院が正しい診断ではないかとのご意見でした。
ただ、B病院はカメラでのチェックだったため、何かしら膿のようなものがあったのを私も確認しています。

A病院は、カメラではなく耳にスコープのようなもので見る機器を使い診断(たまにカメラを使う時もあります)。B病院は必ずカメラで診断。C病院はカメラを使います。(遠方の為通いづらいです)

中耳炎の診断は医師によって変わってくるものなのでしょうか?

ご回答頂けましたら幸いです。

回答済み

耳鼻咽喉科

指名質問いただきありがとうございます。短期間に中耳炎の診断を何度か受け、抗菌薬の投与を繰り返されて混乱されているということですね。結論から申し上げますと、耳の所見は日々変わるものですので、診察した翌日には所見が変化することはあり得ると考えます


まず、中耳炎の診断は基本的に拡大耳鏡(手持ちで覗き込むように観察する装置)を用いて鼓膜を観察し、診断を行います。近年では様々なカメラで撮影することも増えましたが、施設によって導入していない場所も多いです。どちらで診断をすることもありえます。総じてカメラで撮影したほうが診断の質は高いですが、実際に所見を解析する医師の診断力にもよるところも大きいです。


次に中耳炎の診断ですが、お子様の中耳炎には急性中耳炎滲出性中耳炎の2種類があることは知っておくべきでしょう。急性中耳炎は鼻腔や上気道の細菌もしくはウイルス感染が、耳管という中耳と鼻をつなぐ管から波及し、中耳に感染を起こしているものを指します。このため、感染兆候として発熱・耳痛・耳漏・難聴、鼓膜所見としては発赤や水疱形成、膿汁貯留を認めます。細菌とウイルスはおよそ半々と言われており、細菌では抗菌薬が有効ですが、ウイルスの場合は抗菌薬がなくても自然軽快することがほとんどです。

これに対し滲出性中耳炎は、急性中耳炎に続発し、感染は落ち着いているものの、炎症のみ遷延し体液=滲出液が貯留しているタイプの中耳炎を指します。この場合痛みや発熱は起こさず、耳閉感・難聴程度の症状しか起こりません。滲出性中耳炎では通常抗菌薬は不要で、去痰薬などが処方されます。滲出液は透明で水のようなタイプが多く、膿とは異なります。

相談者様の場合、中耳炎と言っても急性中耳炎を主にされているのであろうと思います。


さて、相談者様の場合ですが、疑問は以下の点であろうと思います。

  1. ④でB医院で急性中耳炎と診断されて翌日A医院を受診されたら中耳炎ではないと言われた。こんな事があるのだろうか?
  2. 急性中耳炎と診断されたら抗菌薬を飲まなくては行けないのか?
  3. 通院方法は適正だったのか、これからどうしたら良いのか?


以上についてコメントしていきます

1.中耳炎が1日だけで所見が変化することは、可能性としてあり得ると思います。特に、今回は③で抗菌薬を投与されていたので、④で受診された時点でほぼ治りかけていたため翌日には治った可能性は十分あると考えます。


2.急性中耳炎で抗菌薬を飲まなくてはいけない、ということはありません。急性中耳炎は細菌感染とウイルス感染が半々であると考えられています。細菌には抗菌薬が有効ですが、ウイルスには抗菌薬は無効であり、不必要な投与はなるべく避けるべきと考えられています。近年では急性中耳炎の診療ガイドラインで、軽症と診断された場合は抗菌薬は投与せず4日間経過観察することを推奨しています。ただし、2歳未満では重症化のリスクが高いので、抗菌薬の投与がある程度積極的に行われています。

今回、タイミング的に近い時期に複数回抗菌薬を必要となっていますが、6歳くらいまではどうしても中耳炎を繰り返すことが多く、今後も必要となる可能性はあり得ると思います。


3.通院方法は適正であったと思います。もちろん信頼できる一つの施設に通院し続けるのが最適ではありますが、現実的にはクリニックはお休みの日があったり、受診できるタイミングが限られていたりしますよね。相談者様は調子が悪くなってすぐに再受診され、急性中耳炎の適切な治療を受けられています。A医院、B医院いずれの先生もしっかり診断されているようですので、今後は通院しやすく信頼できる医師と思われるクリニックを主として通院、おやすみ等でそこに受診できない場合は他のクリニック、と通院される方法でよろしいかと思います。


以上回答させていただきます。お子様の中耳炎、完全に防ぐ方法はありませんが、鼻をすする癖がある場合中耳炎のリスクが高まりますので、鼻を噛む・吸引で吸ってあげるようにしてください。この回答がお役に立てば幸いです。また何かありましたらお気軽に質問ください。

2

2023年10月28日 15時45分


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耳鼻咽喉科専門医•指導医の音良林太郎@耳鼻咽喉科です。みみ、はな、のどの病気や、首の腫瘍など、気になることはなんでもご相談下さい。専門は耳科、聴覚ですが、めまい、鼻、頭頸部腫瘍、甲状腺なども扱います。
なるべく丁寧に、かつ医学的な根拠とともに解説することをモットーとしています。どうぞお気軽にご相談ください!

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