指名:Tatsu Ogawa*生殖医 先生

反復流産と出生前診断について

30代女性

初めまして。
32才、不妊治療中の者です。

この半年間で反復流産を経験しました。
1度目(心拍確認後)も2度目(胎嚢確認後)も絨毛染色体の検査はしてません。

不育症の検査を行いましたが、大きな原因は見つかりませんでした。

なので恐らく流産の原因は受精卵の染色体異常の可能性が高いとのこと。

そこで質問なのですが、
受精卵の染色体異常とは21トリソミーなどの何か障害があったということでしょうか?
もし次の妊娠を継続することが出来ても障害を持って産まれる可能性は高いのでしょうか?

母親になりたいのに、もし子が障害を持って産まれてきてしまったらどうしようと。
最近身内に学習障害の方が居ることを知り、なおさら不安です。
出生前診断を検討中ですが、万が一にもそれが原因でまた流産したらと思うと踏み切れません。

命の選抜をする様な質問をしてしまい申し訳ございません。
かかりつけの不妊治療クリニックでは少し聞きづらいので、Tatsu先生にご返答して頂けると助かります。
恐れ入りますがよろしくお願いします。

回答済み

産婦人科

ご質問、ご指名、ありがとうございます。

辛い経験をされていますね。流産の2/3程度は胚(受精卵)の染色体の異常で、そのほとんどがトリソミーなどの数の異常です。

トリソミーとは、2本ずつある1番から22番までの常染色体が3本になっている状態です。原因は「たまたまそうなってしまった」と考えていただいて構いませんが、女性の年齢が上がるほど確率が上がります。

トリソミーの中でも有名なのはいわゆるダウン症と呼ばれる21トリソミーで、その場合は約8割が流死産となり、この世に生を受けるのは約2割と言われています。他にも13トリソミーや18トリソミーも生まれることがありますが、こちらは5%未満です。

実は妊娠初期の流産の場合には16トリソミーや22トリソミーの方が多いです。したがって、流産の原因になるような染色体の異常の場合にはほとんど生まれてくることができません。

もし前回が21トリソミーだったとして、30代の女性であれば次も21トリソミーである確率は1%です。

「障害」を心配されるのは親としてもっともな考えだと思います。一般的に、生まれてくる赤ちゃんの3〜5%はなんらかの先天性(生まれつきの)疾患を持って生まれてくるとされています単一の原因ではないものが多いです。トリソミーはそのうち1/4です。ご心配の「学習障害」についても、はっきりとした原因は指摘できません。男性の年齢が上がるほど突然変異の疾患が増える可能性はありますが、予防はできませんし、そもそも生まれて育ってみないとわかりません。

出生前診断はトリソミーは鑑別できますが、質問者さんのおっしゃる「障害」を診断することはできません。くりかえしますが、生まれて育ってみないとわかりません。

着床前診断はトリソミーの回避に役立ちますが、もちろんそれ以外は生まれて育ってみないとわかりません。

かなり稀なパターンとして、カップルのどちらかが染色体の構造の異常を持っているために流産を繰り返したり、いわゆる「障害」を持って生まれてくることがあり得ますが、一般的な確率として0.1%未満と思っていただいて構いません。

結論になりますが、流産を繰り返すからといって生まれてくる子が先天性疾患を持っている可能性は、3〜5%を大きく逸脱することはありません。また、流産を繰り返す方の87%は最終的にお子さんを授かっています。悲観的にならずに過ごしていただけたらと思います。

少しでもお役に立てれば幸いです。

元気なお子さんを授かれることをお祈りいたします。

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2023年12月03日 16時14分


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産婦人科、専門は生殖医療です。日常の診療では主に、一般不妊治療、生殖補助医療、不育症、がん生殖医療、PGTを含めた遺伝カウンセリングを取り扱っています。1人でも多くの方のサポートができれば幸いです。

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