指名:高橋怜奈/産婦人科医YouTuber 先生

子宮頸がん治療中のピルについて

20代女性

2年ほど前、子宮頸がんで円錐切除を行いました。
手術後は異常なしで経過を見ている状態です。
それとは別にチョコレート嚢胞があるためヤーズフレックスを長期服用しています。
生理痛が重いなどの自覚症状はありませんがチョコレート嚢胞があるので飲んだ方がいいと言われています。
ヤーズフレックスの添付文書には子宮頸がんに罹患している患者は服用してはいけないと表記がありますが、
ASC-USで様子を見ていたのにヤーズフレックスを始めたから進行して円錐切除をしたのでは?と心配になりました。
子宮頸がんで治療中の患者はヤーズフレックスを服用して良かったのか、教えていただければと思います。
よろしくお願いします

回答済み

産婦人科

ご質問ありがとうございます。ASC-USと診断され経過を見ている間に別途、卵巣チョコレート嚢胞が見つかりピルを内服、その後(おそらくCIN2もしくはCIN3となり)円錐切除術を施行、ピルの服用が原因だったのではないか、というご相談ですね。


まず整理しますと、具体的な病理診断がわかりませんが、円錐切除術を行ってそのあと追加治療をしていないエピソードから、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)2もしくは3であったと考えます。CIN3は高度異形成と上皮内癌を一括したものです。


ピルの服用に際して、OC・LEPガイドラインでは、CINまた子宮頸癌は慎重投与であり禁忌ではありません。(添付文書とガイドラインは若干違います。)

しかもご質問者様の場合はピルの服用を開始した時はASC-USだったのだと思いますが、CINではないため、慎重投与でもありません。


たしかにピルの服用期間が長いほど子宮頸癌発症のリスクが増大することがわかっていて、メカニズムとしては、既に感染したHPVの排除率が低下し、HPVの持続感染のリスクが高まっている事が示されています。

ちなみにピルの中止後は、子宮頸部浸潤癌や上皮内癌のリスクは減少する事が分かっています。


このようにお話すると、ピルを服用しない方がよかったのではないかと思ってしまうかもしれません。しかし、卵巣チョコレート嚢胞があること自体が卵巣機能を低下させ、内膜症の悪化によって不妊症の原因になってしまう可能性があり、また子宮内膜症は卵巣癌のリスクになります。そのような観点から、卵巣チョコレート嚢胞の大きさにもよりますが、いますぐ妊娠希望のない方であれば、卵巣チョコレート嚢胞をそのまま様子を見るという事はありません。

また、内膜症がなかったとしても、ピルを服用する事によって、卵巣癌、子宮体癌、大腸癌の発症リスクが明らかに下がる事がわかっています。


子宮頸癌は検診によって早期発見、早期治療ができる病気です(円錐切除術も早期治療といえます)。またHPVワクチンで予防する事もできます。一方で卵巣癌などはワクチンがなく、早期発見、早期治療が大変難しいのです。


子宮内膜症がある事、ピルにさまざまなメリットがあり、他の早期発見が難しい癌の発症リスク低下に寄与する事を考えると、ピルの服用は決して間違ってはいません。

ASC-USから円錐切除術が必要な病変になるまでにどのくらいの期間があったのかはわかりませんが、ピル服用中のHPV排除率は若干低下したかもしれませんが、ピルを服用していたことが直接的に進行に関わったわけではありません。あくまでもHPVが原因です。

このようなことからも、日本でHPVワクチンの接種率や検診率が上がれば、ピルによるHPV排除率の低下に関しては気にするものではないと言えます。

これからの世代の人の話になりますが、ピルを服用する人が、子宮頸癌の心配をしなくていい世の中になってほしいと思っています。


現在、ご質問者様は、円錐切除後に再発は見られていないとのことですね。定期検診を受けて頂き、早期治療ができたの事、とてもよかったと思います。

そして現在も妊娠希望がないのであれば、子宮内膜症があった事を考え、現在卵巣チョコレート嚢胞がなくなっていたとしても、引き続きピルの内服、もしくはジエノゲストの内服などをおすすめします。ちなみに現在再発がないとの事で、ガイドライン上でも問題なくピルの服用は可能です。


以上ご参考になれば幸いです。

また何かご不安なことがありましたらいつでもご相談下さいね。

7

2023年04月12日 00時14分


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