指名:相川晴(HAL) 先生

うまく食べられない子のアレルギーチェック

10歳未満女性

先生のご著書やツイートで、食物アレルギーの原因となりうる食物の摂取時期を遅らせるべきでないことを知りました。また最近、ピーナッツの早期開始がアレルギー発症予防に効果的であると知り、怖がらず適切な量・タイミングでチェックを進めようと決心しました。

娘は早くに首すわりや寝返り、支え座りをクリアしていたため、5ヶ月で離乳食を開始しましたが思いの外哺乳反射が強く、翌週再チャレンジ→押し出すを繰り返し、とうとう6ヶ月になってしまいましたが、依然として哺乳反射が弱まる気配がありません。
食べ物の形状や味、食器や環境のせいかと思い考えつく限り試しましたが、まず唇でスプーンを挟むという動作ができず、ただスプーンをペロペロするのみです。

このままどんどんアレルギーチェックが遅れてしまうことに強い焦りがあるのですが、上記の状況では新たな食材を試すべきではないでしょうか。

スプーンの練習にと毎日五分粥と、にんじんなどアレルギーの心配が少ない野菜を口に運んでいます。口は閉じませんが、舌を動かす中でわずかに飲み込んではいるようなので、どうにか卵とピーナッツだけでも進められないかと思案しています。

娘の発達を見ながら大らかにすすめてあげたいという気持ちと、早期摂取により防げたかもしれないアレルギーを発症させてしまうのではという不安とでつらい毎日です。アドバイスいただけますと幸いです。

回答済み

一般内科

ご質問ありがとうございます。本やツイートも見てくださってありがとうございます!


さて、生後6ヶ月の娘さんが、まだ離乳食が上手に食べられない状況で、アレルギーチェックやアレルゲンの早期導入(特に卵やピーナッツ)をどうしたらいいか、というご質問ですね。


おっしゃる通り、卵とピーナッツについては早期に開始することでアレルギーを防げる可能性が示されていますので、適切なタイミングで始めたい食材になります。

一方で、この「適切なタイミング」が実は難しいところになります。例えばEAT Studyという有名な研究があるのですが、こちらはピーナッツ、卵、牛乳、胡麻、白身魚、小麦を生後3ヶ月から始めた群と、生後6ヶ月以降から開始した群を比較して、1歳と3歳でアレルギーを起こした人の割合に差がでるかな、というものを調べたものになります。ただ、これ全体では有意差は出ませんでした(統計的な差がなかった)

が、これ、3ヶ月で食べることができた子が少なかったんですね。食べることができた子だけで比較すると、ピーナッツと卵ではアレルギーを発症した割合に差がでました(早期導入の方が少ない)

堀向先生(ほむほむ先生)のサイトがわかりやすいのでよかったらご覧下さい。

https://pediatric-allergy.com/2016/03/12/post-50/


で、何が言いたいかと言いますと、早期導入は意味があると私も考えていますが、結局赤ちゃんが食べることができないものはできないので、食べられるようになって食べるしかなかろうよ、というところなんですね。極端に言うと、生後1ヶ月からスタートしたら防げるとしても、食べられないものはどうしようもないだろう、と。

なので、私個人の意見になりますが、適切なタイミングは「食べられるようになったら早めに」というところで十分ではないかと思います。特にアレルギーのリスクが高い、例えば湿疹がある、以前あった等がないのでしたら、それで十分「早い」タイミングとなります。

実際、日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会の「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」でも、アトピー性皮膚炎の既往がない場合は"「授乳・離乳の支援ガイド」に準じた鶏卵の開始"、となっています。

https://www.jspaci.jp/uploads/2017/06/teigen20170616.pdf


質問者さまの今の状況を見ますと、うーん、そうですね。おそらくもうすぐもうちょっと上手に食べられるようになりそうに思えます。反射の減弱は個人差がありますので、少しは押し出しつつも口を閉じてなんとなく食べられるくらいになるといいかなあ。もしほとんど口から出ている状況だと、食べている量がわからないのもありますが、それ以上に口周りについて肌荒れしてしまったりもしますので、その点が導入するのにストレスになるかもしれません。

もういろいろ試されているようなので蛇足かもしれませんが、スプーンを入れる時に下唇にちょんちょんしてあげて、口を閉じて補食するのを促します。が、そもそも閉じることに気づいてくれないこともあるので、軽く優しく下顎を押して、口を閉じることを促してみてもいいかもしれません(力で閉じさせるんじゃなく、やり方を教えるイメージです)唇に触れない状況で入ってきたものは舌で押し出すと思いますので、口が大きく開いていても、一旦唇に合図を送ってあげるとスムーズにいきやすいです。


すみません脱線しました。

で、前述したように、無理せず待つでOKと思うのですが、もし発症してあの時導入できていたら……という後悔をしそうなのであれば、おっしゃるように今すでにちょこっと飲み込めているようなので、ワセリンで顔をテカテカにしてカバーしてあげて、実際に飲み込める量は気にせず、少量をキープするだけで十分と思って(例えばピーナッツバター耳かき1杯分とか、20分茹でた卵黄耳かき1杯分とか)をひとまずスタートして、増量は食べられるようになってからでOK! 飲み込めなくてもOK! で開始してもよいと思います。(卵黄耳かき1杯くらいしか食べられず、量が増やせないけどもう少しアレルゲンを増やしたい場合は、20分→15分→12分と固茹での時間を短くする方法もあります)



長くなりました。すみません。

焦る必要はないですし、湿疹がなければ「待つ」で十分と思いますが、もしスタートするようであれば無理せず導入だけする……というイメージでいかがでしょうか。あまりに反射が強過ぎて、赤ちゃん、食べさせる側の双方にストレスがかかりすぎる場合は無理なさらないでくださいね。

少しでも参考になれば幸いです。



参考

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26943128/

https://www.jspaci.jp/uploads/2017/06/teigen20170616.pdf

お忙しいところご回答ありがとうございます。ぐるぐる悩んでいましたので、とても丁寧かつ詳細なアドバイスに胸がいっぱいになりました。「食べられるようになったら早めに」をベースに娘の様子を見ながら進めていきます。今回勇気を出してお伺いして本当によかったです。これからも応援しております!

11

2023年04月14日 19時44分


参考になりましたか?
ハートを贈り相川晴(HAL)先生を
サポートしよう!

内科医なのですが、こちらでは補完食(離乳食)についてや、ネットなどの健康情報の疑問などに回答できたらと考えています。

私の実力不足により、お答えできない質問はキャンセルさせていただくことがあります。ご了承ください。
回答まで少しお時間をいただきます。ご了承ください。

ハート、ありがとうございます! お返事ができませんが、少しでもお役に立てたのであればこれ以上嬉しいことはありません。

相談一覧