指名:おとらりんたろう, MD, PhD 先生

おたふく風邪感染済成人のワクチン接種について

40代女性

おとら先生、はじめまして。

X(旧twitter)で先生の投稿を拝見しています。
おたふく風邪ワクチンについて、先生が他の方へのコメントで「おたふく風邪になったことがあれば1回、なければ2回接種」と書かれていたのを見て、気になったのでお尋ねします。

おたふくかぜは一度かかれば終生免疫でワクチン接種は不要、と思っていましたが、感染済みの人でも1回のワクチン接種が必要なのでしょうか?

私は現在40代半ば、おたふく風邪は2歳頃に感染済(ワクチン未接種)です。親の話では当時保育所でおたふく風邪が流行していたそうで、うっすらとほっぺが腫れて痛かった記憶があります。
子どもの頃かかったのでワクチン接種は要らないと思っていましたが、1回接種するべきなのでしょうか?

妊娠の希望や予定はありませんが、子どもや妊婦さんと接する機会があり、気になったもので質問させていただきました。

回答済み

一般内科

指名質問いただきありがとうございます。X(Twitter)でも見ていただいているようでありがとうございます。おたふくかぜワクチンを大人が接種する場合どうしたらよいかと、終生免疫に関するご質問ですね。非常に良い質問だと思いますので、回答していきます。結論としては、抗体が残っているかどうかで判断する必要がある、ということになります。


おたふくかぜが基本的に終生免疫と考えられているのは、免疫(抗体)が記憶されるためです。この抗体をIgG抗体といい、様々な物質・ウイルスに対して体の中に長期間記憶されます。おたふくかぜに罹患した場合、ワクチンを接種した場合のいずれでもこのIgG抗体を体の中に記憶させることで、長期間の免疫機能を発揮しています。


このIgG抗体がどれくらい長期間記憶されるかについては、どのように抗体が作られたか、個々人の免疫機能などで差があります。例えばおたふくかぜについては一度罹患することによる反応の方が長期間記憶されると考えられており、ワクチンの方が抜けやすいと考えられています。そのため2回接種し、記憶をなるべく定着させるようにしているのです。


しかし、IgG抗体の記憶力にも個人差があります。そのため、現実的には過去に罹患したことがあっても、ワクチンを2回接種していても、IgG抗体が減少してしまうことがあり、結果としておたふくかぜに再感染してしまうことがあるのです。これを予見するために、IgG抗体を採血によって検査することができます。実際、医療従事者においては、殆どの施設で就業時に麻疹・風疹・帯状疱疹・おたふくかぜといった流行しやすい感染症についてはIgG抗体の検査が行われ、抗体価が少ない方については追加の予防接種が義務付けられているのです。


相談者様の場合、幼少時に罹患された可能性があるということで、抗体がまだ残っている可能性もあると考えます。おたふくかぜの予防接種は大人では義務はありませんから、受けなくてはいけないということはありません。ただ、もしおたふくかぜに罹患する可能性のある環境、例えばお子様と触れ合うことが多い、感染症の可能性のある方と接する機会が多い、ということでしたら、まずは一度IgG抗体を採血で測定し、ある一定の値に達しないようであれば1回接種を検討する、という形がよろしいかと思います。残念ながら保険適応はなく、そこまで高価ではないですが自費になってしまうことはご了承ください。


以上、回答させていただきます。いつもX(Twitter)で見ていただいているようで、ありがとうございます。この回答が参考になれば幸いです。また何かありましたらお気軽に質問ください。

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2023年09月01日 00時01分


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耳鼻咽喉科専門医•指導医の音良林太郎@耳鼻咽喉科です。みみ、はな、のどの病気や、首の腫瘍など、気になることはなんでもご相談下さい。専門は耳科、聴覚ですが、めまい、鼻、頭頸部腫瘍、甲状腺なども扱います。
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