指名:Tatsu Ogawa*生殖医 先生

エストラーナの貼り付け枚数について

30代女性

転院して初めてのホルモン補充周期での移植です。今通っているクリニックはエストラーナの貼り方が一律でD3、D5:1枚。D7、D9:2枚。D11:3枚。D13:4枚。D15〜3枚です。
以前通っていたクリニックでは、D3から3枚で最大6枚と今回のクリニックと比べてエストラーナの貼り付け枚数が多かったですが、それでもD16で内膜が8mmでした。エストラーナをたくさん貼った方が内膜が厚くなって良さそうに思うのですが、金銭的なデメリット以外あるのでしょうか。

回答済み

産婦人科

ご相談、ご指名ありがとうございます。

実はこのエストロゲン貼付剤の使い方は施設ごとに様々で、決まった使い方はありません。そして、この使い方について大規模な研究は今までに報告されていません。

まず、自然排卵周期でのエストラジオール値は、月経中に低く20-50前後、卵胞発育と共に上昇して排卵直前で300程度、排卵直後は100前後まで低下し、黄体期は150前後で落ち着きます。エストロゲン貼付剤の平均的な効き目だと、1枚でエストラジオールが50程度上昇します。したがって、自然排卵周期を模倣したホルモン補充周期を行うと、月経中に1-2枚から開始して、6枚まで増やしていったところで内膜の厚さを確認し、黄体ホルモン剤を使用し始めたところからは3枚でキープとなります。

では、枚数を増やせば増やしただけ内膜は厚くなるのかと言うと、意外と厚くなりません。内膜の厚さだけで言えば実は3-4枚で十分です。薄いなら、1種類の薬剤の量を増やすよりも、内服のエストラジオール製剤を併用したり、低用量アスピリン、ビタミンE、アルギニン、シルデナフィルなどを併用した方が効果的な可能性が報告されています。ビタミンEやアルギニンはご自身でも購入できますので、主治医にも相談しつつ併用を検討すると良いかもしれません。(もちろんビタミンDとかも、まんべんなく)

枚数を増やすことのデメリットでよく聞くのは、テープかぶれですね。問題ない方はいいですが、貼った箇所に楕円形の痕がしばらく残ってしまう痛々しい方もいます。異常に多い枚数にしているわけではないので血栓症他のリスクはすごく上がってしまうことはないと思います。

では当院ではどうしているか。かつては2枚から徐々に増やして6枚にし、その後3枚にと、やはり自然排卵周期を模倣する方法(漸増法)をとっていました。しかしこの方法では時々貼る枚数を間違えてしまう方や、6枚も貼ると痒いなどの問題もありました。そこで当院では月経中から3枚固定にしました。そうすると間違える方は1人もいなくなりました。当院データでは、内膜の厚さ、妊娠率、生児獲得率、分娩時リスクなど全て差がありませんでした。そんな単純な使い方でも、十分着床するのです。

結論ですが、どのような使い方が本当に良いのかは誰にもわかりません。その施設ではその使い方がベストと考えているのだと思います。どちらの施設の方法もアリだと思います。成績もちゃんと保証されていると思いますので、信じて指示された通りに使って良いでしょう。併用薬については主治医とご相談ください。

少しでもお役に立てれば幸いです。

丁寧な回答ありがとうございました。病院のやり方にケチをつけるみたいに聞こえるかなと思って聞けなかったので、大変参考になりました。
(自費治療中のため、金銭的に小さいハートになってしまい申し訳ありません)

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2023年03月27日 22時18分


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産婦人科、専門は生殖医療です。日常の診療では主に、一般不妊治療、生殖補助医療、不育症、がん生殖医療、PGTを含めた遺伝カウンセリングを取り扱っています。1人でも多くの方のサポートができれば幸いです。

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