指名:高橋怜奈/産婦人科医YouTuber 先生

黄体ホルモン療法

30代女性

1年前に子宮筋腫核出術を開腹で受けました。
今回、新たな筋腫数個とエコーでは筋腫か腺筋症かの判断がつかないものが1個みつかりました。
閉経までの期間が長いため、黄体ホルモン療法でこれらの増大抑制を期待することを勧められました。

今回は
・仕事中は急な不正出血に対応ができないのが不安(トイレが自由にならない事情有り)
・月経痛や過多月経、貧血等の症状がないのに薬を飲む抵抗感
・飲んでも筋腫は小さくはならないこと
・レルミナより軽度とは聞いたものの、頭痛(※頭痛もちです)や骨量低下、ほてりが心配

とさまざまな理由で決めかねて、保留してしまいました。

後日、添付文書を調べると子宮筋腫のある場合、出血症状増悪や大量出血の可能性があり注意とあり、さらに不安が増しました。
また、腺筋症でない場合、保険適応ではないのでは?と愚考もしました。

正直、まだ治療開始も決めかねているのですが、
もし治療する場合、MRI等で子宮筋腫か腺筋症かの判断をつけてから黄体ホルモン療法を始めた方が安全でしょうか?

よろしくお願いします。

回答済み

産婦人科

ご質問ありがとうございます。

子宮筋腫核出術後、子宮筋腫または子宮腺筋症を指摘され、閉経まで黄体ホルモンによる治療を勧められて悩んでいる、というご相談ですね。

おそらく、黄体ホルモンの薬というのはジエノゲストの事だと思うのですが、1mg、0.5mgどちらでしょうか。

また、ピルは服用できないのでしょうか。それらの情報がわかりかねますので、あくまでも想定している範囲内でのご回答になりますが、ご参考になれば幸いです。


ジエノゲスト1mgは子宮内膜症、子宮腺筋症に適応があり、0.5mgはそれらの疾患がなくても月経困難症に適応があります。

子宮腺筋症でなければ適応でないのではないか、という事ですが、エコーでは一見異常ないようにみえても、子宮内膜症の腹膜病変などがある場合には、慢性的に骨盤痛がある事があります。たとえばジエノゲスト0.5mgを月経困難症の方に使用しても改善しない場合、臨床的に子宮内膜症があると考えて、子宮内膜症の病名でジエノゲスト1mgを処方することは多々あります。1mgは子宮腺筋症以外にも子宮内膜症にも適応があるので、明らかな子宮腺筋症がなくても、臨床的に子宮内膜症を疑っているのであれば適応があります。


また子宮腺筋症や子宮筋腫の診断に関してですが、現在エコーでもどちらかわからないというようであれば、両方を合併している可能性もありますし、MRIをとってもよくわからない可能性もあります。

確定診断は手術で組織をとることですが、確定診断のために手術のような侵襲の高い行為を皆にするわけにはいかないため、組織での確定診断がされていなくても、必要があれば処方をする事もあるのです。


また、副作用に関してですが、ジエノゲスト1mgは人によってはほてりなどの更年期症状がある場合があります。

必要に応じて漢方薬などを併用したりそれでも改善しない場合には0.5mgに変更したりします。


子宮筋腫があった場合の出血に関してですが、例えば子宮粘膜下筋腫がある場合、ジエノゲストの服用で大量出血することがあるのですが(全くない場合もありますが)、主治医が服薬を勧めているということは、筋腫と思われる腫瘍の大きさや部位的に、出血が想定しにくいものであり、また副作用としての出血があったとしても、服用した方がいい状態とも考えられます。

ただし私が画像を見ているわけではないので、あくまでも予想です。


過多月経や月経困難症がないのにホルモン治療をするのに抵抗があるとの事ですが、特にそのような症状がなくても、妊娠希望がなく、かつ生理のあるご年齢のあいだはホルモン治療をして排卵抑制したり月経回数を減らしたり経血量を減らしたりする事で、子宮内膜症や卵巣がんのリスク低下につながります。

子宮腺筋症が疑われているのであれば、ホルモン治療をする事で悪化を予防できます。

ただし、このような婦人科疾患リスクの低減という意味合いであれば、ジエノゲスト1mgでなくても、ピルやジエノゲスト0.5mg、ミレーナ(ミレーナは排卵抑制しないので卵巣がんリスク低減にはつながりませんが)でも良いとは思います。


勧められている薬がジエノゲスト1mgなのか、ピルや0.5mg、ミレーナで代用はできないのか、もしできないのであればなぜか、などを納得いくまでしっかりお聞きになると安心かと思います。


おそらく主治医の先生は、今までのご質問者様の治療経過や現在の画像所見、臨床所見、総合して判断されていると思います。


不正出血に関して、普段仕事でトイレになかなかいけないようであれば、そのことについて相談の上、一番あった治療を聞くのが良いでしょう。

もしトイレが自由にならない事情がわかっていれば、では別の薬にしましょう、となるかもしれません。


また副作用があったら改善する薬もありますし、副作用があったら中止して別の方法を考える事もできます。一度飲み始めたらずっと続けなければいけないわけでもありません。

薬は、試してみて効果や副作用をみて、それが診断につながる事もあります。

添付文書を見るといろいろ書いてあって心配になると思いますが、なぜその薬を使う必要があるのか、その薬を使って副作用が出たときにどんな対処をすればいいのか知っているとだいぶ心持ちも変わると思います。


手術所見や画像をみておらず診察もしていないので、予想できる範囲でご回答しました。

もう一度、なぜその薬を飲む必要があって、なぜその薬なのかなど、しっかり医師と相談される事をお勧めします。


ご参考になれば幸いです。

また何かご不安なことがありましたらいつでもご相談くださいね。

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2023年05月21日 21時17分


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YouTuber、産婦人科専門医、指導医、がん治療認定医、性教育認定講師です。生理、更年期、癌、セックス、婦人科形成手術、なんでもご相談ください。
【質問時】婦人科検診歴(子宮頸癌検診、エコー、性感染症などの時期と結果)、現在の使用薬の種類、量をご記載下さい。

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