ボツリヌス菌と泥遊び
10歳未満女性
こんにちは。ご相談いただき、ありがとうございます。
1歳頃までの泥遊びや砂遊びなどは乳児ボツリヌス症のリスクになるのか、いつ頃から外遊びをしても良いか目安はあるのかというご相談ですね。
確かにハチミツや黒糖などの摂取などは注意されているかと思いますが、土壌に含まれるボツリヌス菌をどこまで注意するべきかというのは悩ましいことだと思います。
私自身はあまり意識したことはありませんでしたが、確かに調べた限りでは、土壌に芽胞で存在している可能性が高く、体が成熟していれば大丈夫だとしても、まだ未熟なお子さんでは乳児ボツリヌス症になってしまう可能性は原理上は否定できないものかと感じました。
少なくとも国内で今までに報告されている乳児ボツリヌス症は2020年までで42例(全例が1歳未満)おられますが、ハチミツが原因と考えられた方が13例で29例はハチミツの摂取歴はなく、環境から何らかの原因によって獲得してしまったと考えられています(国立感染症研究所:乳児ボツリヌス症 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/7275-botulinum-intro.html)。
この中に砂・泥遊びからボツリヌス菌と接触してしまった方がいる可能性は0とはいえませんが、自家製の野菜スープや井戸水などが接触源となっていたことは報告されています。
乳児ボツリヌス症の報告は年間に1〜2人程度と非常に珍しい疾患ではあるため、原因や傾向を掴むことは容易ではありません。以前報告が多かったハチミツは注意喚起がなされていますが、砂遊びや泥遊びを含めて、それ以外の生活でのリスクは現状では高いとは言えず、注意喚起が必要なほどの原因とは考えられていないのだと思います。
確かに乳児期や低年齢児には砂を口に入れてしまう可能性は高いと思います。その場合には何でも口にいれてしまうというのが減ってくるまで、砂遊び・泥遊びを避けるというのも一つの手です。
ただ、砂遊び・泥遊びをしている子どもは少なくないわりに、実際の患者さんは非常に少ない状況からはリスクが高いとは感じません。なるべく口に入れないように見守ったり、比較的安全性の高そうな砂場で遊ぶなども十分検討できると思います。
例えば動物の糞尿や有機肥料の多い土では遊ばずに、猫の糞尿も避けられるようにブルーシートなどがつけてあるところを選ぶなど、少しリスクを低減する方法は考えられます。
上記のため、私自身の印象としては、過度に砂・泥を食べてしまう状況では少し避けますが、砂や泥との触れ合いという面では砂場を選びつつ、ある程度見守っていれば1歳まで避けるなど明確な制限は不要だと考えています。
なお、砂遊びや泥遊びでは、傷口からの破傷風など他の感染症やガラスなどのゴミによるケガ、熱中症など注意することがあるのも事実です。ゼロリスクにすることは難しいのが正直なところですが、予防接種を含めて、できる対策はした上で遊んでいただくのが良いのではないかなと思います。
ご参考になりましたら幸いです。
2023年05月22日 17時17分