ADHD確定診断後の服薬治療と妊娠への不安について

30代女性

はじめまして。いつも貴重な情報をありがとうございます。
まだ可能性段階の質問で申し訳ないのですが、この度さまざまな経緯から発達検査を受け(面談とwais-4)、ADHDの可能性が高いとのことでした。
そのことで心配があり質問させていただきます。
よろしくお願い致します。

幼少期からの忘れ物癖、片付けられなさ、毎日遅刻間際でダッシュ、物事を順序立てて考えられず、タスク管理も苦手だったりして仕事でもうまくいかず、衝動性から金銭管理も下手で鬱や適応障害から何年も抜け出せずにいます。

やっと今回発達検査を受けられて、現在心理士さんからの結果待ちではありますが、
衝動性が高いADHDの可能性があると検査前の面談で伝えられております。
生活や仕事で本当に困っていて、ADHDなら薬でよくなる!生きやすくなる!と希望を持てたのですが、ADHDのお薬は妊娠すると催奇性などもあって中止しなければならない、と見ました。

私は今1人子供がいますが、主人ともう一人子供ができたら幸せだね、と話しています。
少なくとも5年以内には、と考えていますが、仮に今薬物治療をしたとして妊娠と同時に薬をやめたら反動で症状はキツくなったりするのでしょうか。
また妊娠していても飲めるADHDのお薬はあるのでしょうか。
それとも薬を飲まずにSSTのようなものだけでも少しは生きやすくなるものでしょうか。

可能性段階の話で申し訳ありませんが、どうしても不安で投稿させていただきました。
よろしくお願い致します

こんばんは。ご相談いただき、ありがとうございます。

精神科・産婦人科医師ではありませんが、日常的にADHDに対する薬物療法を行っている小児科医師です。ご相談内容に付きまして思春期の女性に薬物療法の相談をした際に類似した相談を受けたことがありますので、お答えさせていただきます。


まず、今回ADHDと診断されるかもしれないということで、診断がつくかもしれないというお悩みと今までの大変さが少しでも緩和できるかもしれないということで複雑なご心境なのではないかと思います。

私自身も診断をすることはよくありますが、気になることやご心配なことについてはぜひ担当の医師・心理士さんとしっかりご相談いただくことをおすすめします。


ADHDの治療としては、すでにお調べされているのではないかと思いますが、主に心理社会的な治療とお薬を服用する薬物療法があります。

小児期と比べると成人は、環境や生活リズム、スマホの活用を含めて子供の頃よりコントロールしやすい面がありますので、心理社会的な治療が有効な場合がよくあります。環境調整や心理教育、認知行動療法などだけでも落ち着いて生活ができれば、薬物療法を行う必要がない方もたくさんおられます。

ただ、薬物療法自体は大切な選択肢の一つであることに違いはなく、心理社会的な治療だけでは不十分な場合にお薬を使用されている方もたくさんおられます。


本題のADHDだと診断された場合に妊娠についてどう考えていくべきかということですが、まずは予め担当の医師・心理士さんとどうしていくか相談していただくことが大切です。

お薬が不要であれば、それはそれで相談者様自身が妊娠に向き合う上で安心だと思いますし、かといってお薬を飲んでいた方が明らかに生活の負担が改善するようでしたらお薬を使いながらの妊娠ということも念頭にいれておくことが大切です。


確かにご指摘いただいているように妊娠した場合には催奇形性などの問題から服薬はやめた方が良いというデータもありますが、実際にはその根拠はさほど強いものではないというのも事実です。

むしろ妊娠中にお薬を中断することで生活の困難感が増強してしまい、精神的な負荷がかかってしまうリスクは小さくありません。

そのため、国内の妊産婦の診療ガイドではADHDを合併した妊娠の場合には、重症度などを意識した上で、個々の患者さんに対してリスクとベネフィットの評価を行って、治療方針を検討するとされています(一概に中止する必要があるとはされていません)。


治療薬としては第1〜第2選択薬として、メチルフェニデート(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン(インチュニブ®)がありますが、この内グアンファシンは添付文書の内容と世界的にも妊娠中の服用に関する報告が最も少ないことから、基本的には妊娠予定の方にはあまり勧められていません。

メチルフェニデートとアトモキセチンはどちらも安全性と有効性のバランスから妊娠予定の女性にも使用されることがあります(実際に私も母体が服用継続している赤ちゃんを多数みたことがありますが、幸いどの赤ちゃんも特に薬剤による悪影響はありませんでした)。

どちらを使用するかはADHDの状態を見た上で医師が判断します。


そのため、実際に薬物療法を開始するという段階で、医師と妊娠希望について相談していただき、どの薬剤を選択するかご相談いただくことをおすすめします。ただし、ADHDのお薬は1つ目のお薬が必ず効くと保証できるものではなく、もう一つのお薬に途中で変更することもよくあるということは頭の片隅においておいていただければと思います。


なお、妊娠と服薬については、悩ましい領域であることは事実で産婦人科医師や小児科医師と比べて他科の医師はゼロリスクを求めて、なるべく薬は使用しないほうが良いと考えられていることも少なくありません。ただ、お薬のおかげで安定した生活をおくれている方もたくさんいることは事実ですので、必要に応じて産婦人科の先生の意見を含めて他の医師にも聞いてみていただくということも一つかと思います。


上記となります。

ご参考になりましたら幸いです。

丁寧なご回答をありがとうございます。仰るように長年もがいて何とかそれでも生きなきゃという苦しさ、生きにくさには理由があったと安心するようで、また新たな心配も出たりと複雑でした。
服薬や治療法についても詳しく有難うございます。
主治医と相談して前向きに治療して参ります。

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2023年07月08日 23時30分


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