相談回答詳細
指名:相川晴(HAL) 先生
南部鉄瓶利用による鉄分補強について(0歳6ヶ)
10歳未満男性
回答済み
ご質問ありがとうございます。本も読んでくださってありがとうございます! さて、南部鉄瓶で沸かしたお湯を利用してお米を炊くことで、鉄の摂取を増やせないか? 健康被害の心配はないか? というご質問ですね。 まずもし鉄瓶を使ってお湯をわかしてどのくらい鉄が摂取できるかという部分になります。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/36/1/36_39/_pdf 鉄瓶に1Lの水を入れてわかす、というのを4回繰り返して、どのくらい溶け出すかみたデータがあります。 1回目2回目はよく鉄が溶け出しているのですが、3、4回目、またそれ以降は鉄があまり溶け出さなくなります。使い続けると、おそらく0.2ppm弱だろうと推定されています。要するに、水1Lに0.2mgですね。 また、水の場合、長時間煮ても鉄は一定以上は溶け出ないようです(沸騰後0分でも30分でもあまり変化がない) 一方で、鉄製品から溶け出る鉄は当然非ヘム鉄なのですが、非ヘム鉄としては比較的吸収の良い2価鉄の割合が多いというデータも示されています。 ただ、いくら吸収が良かったとしても1L中に0.2mg、普通にご飯を炊いても1合に使う水は200ml程度です。赤ちゃんが食べる量を考えると、ちょっと労力のわりに微量すぎるかな、と私は思います。 また、水をわかすだけでは鉄はなかなか出ず、酸性のもので溶け出る性質があります。ですので、使うなら鉄瓶よりは鉄鍋で、酢やケチャップを使う料理をする時ならありかなあと思うのですが、味的に離乳食期だとちょっと出番が少ないように思います。 様々に研究もされていて、低・中所得国で鉄鍋や鉄のインゴット(鉄玉子のようなもの)を使って貧血を減らせるか、という論文を集めたものもあり、こちらでは小児の場合、鉄鍋を使うと一定の効果があるものもあります(8つの研究中4つ) 鉄製品を毎日使用した場合、一番心配なのは鉄の過負荷(鉄の過剰摂取)の可能性になるのですが、このシステマティックレビュー中では報告はありませんでした。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6719866/ ただ、こういった国はヘム鉄を多く含む食品や、非ヘム鉄の吸収をよくするビタミンCを含む果物などを食事に取り入れることが難しい(食費が高くなるため)から、その状況でどうやって鉄欠乏を予防するか、というところで、お金の比較的かからない鉄鍋や鉄のインゴットを使用したりしますので、ちょっと日本と状況が違うかなあと思うところです。 以上をまとめますと ・鉄瓶や鉄鍋を使うと、一定量の鉄は摂取できるが、量としては微量 ・お米を炊くのに使うお湯くらいだと超微量 ・酸性のものを使うと溶け出やすくなるが、離乳食期には少し使いにくそう ・鉄鍋を使って効果があるという研究はある ・安全性についてははっきりと毒性を示した報告はなさそう 私個人の意見としては、手間がかかる割には効果が微妙なので、補助的に使ってもよいとは思うけれど特別おすすめはしない、といったところになります。 もしお米に入れるならサプリ米の方が手っ取り早いかなと思います(1合に加えた場合、米の鉄+サプリ米の鉄の合計が5mg) 以上になります。 なにかの参考になれば幸いです。 参考: https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/36/1/36_39/_pdf https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8464655/ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6719866/ https://www.house-direct.jp/product/spmai-vit/
2023年02月06日 20時03分
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